昭和女子大学 食健康科学部食安全マネジメント学科 公募制推薦入学試験 2025年度 小論文過去問解説(有機農業の推進策)
問1【解説】
設問文
以下の文章を読んで質問に答えなさい。 問い 日本で有機農業を積極的に推進する必要性を述べた上で、以下の2つの項目(①「有機農産物の消費の動向」と②「有機農産物の価格の状況」)についての図表を参考にして、有機農業の推進策としてどのような点に重点を置いて取り組むことが重要と考えるかのあなたの意見について、合わせて(2つの下線部)800字以内で記述しなさい。
課題文・資料の要点
課題文は、有機農業を「生物多様性、生物的循環、土壌の生物活性など農業生態系の健全性を促進する生産管理システム」と説明し、日本では化学合成肥料・農薬を使わず、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本に、農業生産による環境負荷を低減する方法と定義している。さらに、みどりの食料システム戦略として、調達・生産・加工流通・消費の各段階で脱炭素化、スマート技術、AI活用、食品ロス削減、栄養バランスの改善などを進める方針を示している。
資料では、有機・オーガニックという言葉を正確に知っている人は少なく、「言葉は知っていたが表示に関する規制があるとは知らなかった」が多数である。一方、有機食品には「健康にいい」「安全である」というイメージがあるが、「価格が高い」という印象も強い。価格面では、有機栽培品は国産標準品よりおおむね高く、消費者・流通加工業者の多くは「同じ程度」または「1割高まで」なら購入・取扱いを考える傾向がある。
設問条件の判定
- 制限字数: 800字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 「必要性を述べた上で」「図表を参考にして」「重点を置いて取り組むこと」について意見を求めているため、資料読解と政策提案を結びつける5STEPs法で構成する。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 「日本で有機農業を積極的に推進する必要性」を述べ、環境負荷の低減、生物多様性、持続可能な食料システムを前提にする。
- STEP2 問題設定: 有機農業の価値を社会に広げるだけでなく、消費者が継続的に買える価格と理解をどう整えるかを中心問題にする。
- STEP3 論証: 価格が高いことと表示理解が浅いこと、生産・流通の効率化不足、有機農産物の価値が伝わっていないことを資料から示す。
- STEP4 解決策: 生産効率化、流通合理化、表示理解、学校・地域での消費機会を連動させる。
- STEP5 吟味: 安さだけでも理念だけでもなく、消費者が納得して選び、生産者も継続できる制度設計が妥当だと確認する。
問1【解答】
日本で有機農業を積極的に推進する必要性は、食料生産を環境負荷の小さい形へ転換する点にある。課題文が示すように、有機農業は化学的に合成された肥料・農薬に頼らず、農業生態系の健全性を高める生産方法である。気候変動、土壌劣化、生物多様性の損失が進む中で、食料を安定的に得るには、生産量だけでなく、生産基盤そのものを守る農業が必要である。
しかし、資料からは普及上の問題も読み取れる。有機・オーガニックという言葉を正確に知っている人は少なく、多くは言葉を知っていても表示に規制があることを理解していない。また、有機食品には健康や安全のイメージがある一方、価格が高いという印象が強い。つまり、消費者は関心を持ちながらも、価値を十分に理解できず、価格差を負担する理由を見いだしにくい。
この問題の背景には、生産・流通・消費が別々に扱われていることがある。有機農業は手間がかかり、国産標準品より高価格になりやすい。さらに、消費者や流通加工業者の多くは、同じ程度または一割高までなら購入・取扱いを考える傾向にあるため、価格差が大きいままでは需要が広がらない。
したがって、有機農業の推進策として重要なのは、第一にスマート技術や共同出荷を用いて生産・流通コストを下げることである。第二に、表示制度や環境負荷低減の意味を学校、店舗、自治体の広報で具体的に伝えることである。第三に、学校給食や公共施設での利用を増やし、日常的に有機農産物に触れる機会をつくることである。
もちろん、価格を下げることだけを優先すれば、生産者の負担が増え、有機農業は続かない。逆に理念の説明だけでは、購入は一部に限られる。だからこそ、消費者が納得して少し高くても選び、生産者も適正な収入を得られる仕組みを整えることが、有機農業を社会全体に広げる重点である。
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