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帯広畜産大学 畜産科学課程 第3年次編入学試験 令和6年度 小論文過去問解説(農林水産業の温室効果ガス排出ゼロ化)

帯広畜産大学 畜産科学課程 第3年次編入学試験 令和6年度 小論文過去問解説(農林水産業の温室効果ガス排出ゼロ化)

問1【解説】

設問文

農林水産省は,2021年5月に食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を技術革新で実現させることを目標とし,「みどりの食料システム戦略」を策定した。本戦略では,14の達成目標が立てられている。その中で,2050年までに農林水産業の温室効果ガス排出ゼロ化の実現が目標として掲げられている。2019年時点で,日本の水田や家畜の消化管内発酵,家畜排泄物など農林水産分野から排出される温室効果ガスは約4,747万トンである。一方,温室効果ガス吸収量は,森林で4,290万トン,農地・牧草地で180万トンとなっている。このような状況で,この目標を達成するためにはどのような取り組みや新しい生産技術が求められるか1,000字程度で述べなさい。

課題文・資料の要点

課題文は、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」を前提に、2050年までに農林水産業の温室効果ガス排出ゼロ化を実現するという目標を示している。2019年時点で、農林水産分野からの温室効果ガス排出量は約4,747万トンであり、水田、家畜の消化管内発酵、家畜排泄物などが主な発生源として挙げられている。一方、吸収量は森林4,290万トン、農地・牧草地180万トンであり、排出削減と吸収強化の両面が必要である。

設問条件の判定

  • 制限字数: 1,000字程度
  • 意見論述の要求: あり
  • 選択テンプレート: 5STEPs法
  • 判定根拠: 「どのような取り組みや新しい生産技術が求められるか」を問う政策提案型の論述であり、課題文の数値を踏まえて、原因分析と複数の解決策を組み合わせる必要がある。

解答プロセス

  • STEP1 要件確認: 2050年の排出ゼロ化目標、排出源としての水田・家畜・排泄物、吸収源としての森林・農地・牧草地を踏まえる。
  • STEP2 問題設定: 農林水産業が食料生産を維持しながら、温室効果ガスの発生構造を変えられるかを中心問題にする。
  • STEP3 論証: 排出が残る直接原因は、水田のメタン、反すう家畜の消化管内発酵、家畜排泄物処理などが生産過程に組み込まれていることである。
  • STEP4 解決策: 水田の水管理、飼料改善、排泄物の資源化、再生可能エネルギー、スマート農業、炭素貯留を組み合わせた地域単位の転換を提案する。
  • STEP5 吟味: 新技術は費用や運用負担を伴うため、データ共有、人材育成、消費者の理解を含めて制度化する。

問1【解答】

農林水産業の温室効果ガス排出ゼロ化を実現するには、生産量を減らすのではなく、食料生産の仕組みそのものを低排出型に変える必要がある。課題文は、2019年時点で農林水産分野から約4,747万トンの温室効果ガスが排出される一方、森林で4,290万トン、農地・牧草地で180万トンが吸収されていると示す。したがって、排出削減と吸収強化を同時に進めることが出発点である。

問題は、水田、家畜、排泄物からの排出が農業生産の過程に組み込まれている点にある。水田では湛水状態でメタンが発生しやすく、牛などの反すう家畜では消化管内発酵によりメタンが出る。また、家畜排泄物の処理が不十分であれば、メタンや一酸化二窒素の発生につながる。つまり、排出は一部の例外ではなく、日常的な生産活動の結果として起きている。

この背景には、従来の農業が収量、作業効率、経営維持を優先し、温室効果ガスを測定して減らす仕組みを十分に持ってこなかったことがある。個々の農家にとって、低メタン稲作、飼料変更、排泄物処理施設、再生可能エネルギー設備は費用が大きく、効果もすぐには見えにくい。そのため、技術があっても導入が進みにくい。加えて、排出量を減らした農畜産物が市場で正当に評価されなければ、農家は追加の努力を続けにくい。

求められる取り組みは、第一に、水田の中干し延長や間断かんがいなど、水管理によってメタンを減らす技術の普及である。第二に、家畜にはメタン発生を抑える飼料や飼養管理を導入し、家畜排泄物は堆肥化、バイオガス化、液肥利用によって資源として循環させる。第三に、センサーや衛星情報を使うスマート農業で、肥料、飼料、水、エネルギーの使用量を最適化する。農地・牧草地では堆肥投入や不耕起栽培により土壌炭素を増やすことも重要である。

ただし、新技術を個別農家の努力だけに委ねれば、資金力の差が導入格差になる。地域で機械や施設を共同利用し、大学、自治体、農協、企業が排出量の見える化と研修を支えるべきである。さらに、低排出で生産された農畜産物を消費者が選べる表示や価格形成を整える必要がある。生産、技術、流通、消費を一体で変えることが、2050年の排出ゼロ化に向けた現実的な道であり、畜産・耕種・林業を分けずに地域循環として設計することが重要である。

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