名古屋大学 法学部 前期日程 2017年度 小論文過去問解説(法の強制説とマージナル・マン)
問1【設問文】
問1 下線部①の「君子」と「小人」は、それぞれ、どのような理由から、強制説と反強制説のいずれを支持すると考えられるか。文章全体の趣旨を踏まえて、400字以内で説明しなさい。
問1【解説】
課題文は、法の本質を物理的強制に見る「強制説」と、法を正義・道徳的秩序と結びつける「反強制説」を対比する。「君子」は法秩序を内面化する中心的な人であり、「小人」は利害や罰を通じて法を意識する周辺的な人である。
問1【解答プロセス】
- STEP1 要件確認: 君子と小人がそれぞれどちらの説を支持するか、理由を400字以内で説明する。
- STEP2 方針: 君子は反強制説、小人は強制説に対応させる。
- STEP3 構成: 両概念の性格、支持する説、理由の順で比較する。
- STEP4 吟味: 単なる善人・悪人の説明にしない。
問1【解答】
「君子」は、法秩序の中心にいて、法を単なる命令や罰ではなく、社会の正義や良心を実現する規範として受け止める人である。法律家、官僚、遵法意識の強い市民のように、法を内面化しているため、法の本質を強制ではなく正義や道徳的秩序に見る反強制説を支持しやすい。これに対し「小人」は、法秩序の周辺にいて、罰金や刑罰などの不利益を現実のコストとして意識しながら行動する人である。合意できない対立を最終的に処理し、不満を持つ者にも従わせるには強制が必要だと実感するため、法の特色を物理的強制の裏づけに見る強制説を支持すると考えられる。
字数カウント: 265字
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問2【設問文】
問2 下線部②について、あわせて600字以上800字以内で、まず、筆者によれば「マージナル・マン」が社会認識においてなぜ重要なのかを説明し、次に、あなたが「マージナル・マン」と評価できると思う過去または現在の人物・出来事を文章中に登場するもの以外から挙げてその理由を述べ、その上で、あなたは筆者の見解に対して賛同できるか否かを論じなさい。
問2【解説】
設問は三要件を含む。第一に、筆者のいうマージナル・マンの重要性を説明すること。第二に、文章外から人物・出来事を挙げて理由を述べること。第三に、筆者の見解への賛否を示すことである。ここでは水俣病の被害者と支援運動を例にする。
問2【解答プロセス】
- STEP1 問題提起: 筆者によれば「マージナル・マン」がなぜ重要かを説明する。
- STEP2 具体例: 文章外の人物・出来事として水俣病の被害者と支援運動を挙げる。
- STEP3 理由づけ: その例が社会の周辺から制度の盲点を可視化した理由を述べる。
- STEP4 自分の立場: 筆者の見解への賛否を明確にする。
- STEP5 吟味: 中心と周辺の両方を踏まえた社会認識の必要性をまとめる。
問2【解答】
筆者によれば、「マージナル・マン」が重要なのは、社会の中心にいる者が見落としがちな制度の強制性や犠牲を、周辺にいる者が鋭く認識できるからである。法秩序の内部で成功している人は、法を正義や秩序として理解しやすい。しかし、その秩序によって不利益を受ける人は、法や制度が誰に負担を押しつけているかを具体的に見ることができる。
私がマージナル・マンと評価できる出来事は、水俣病の被害者と支援者による告発運動である。高度経済成長の中心では、工業生産や企業利益が社会の発展として評価された。一方、水銀汚染によって健康と生活を奪われた漁民や地域住民は、その発展の陰で制度が十分に守らなかった存在であった。
この人々は、単に被害を訴えただけではない。企業活動、行政の規制、裁判制度、医学的認定のあり方を問い直し、成長を正義とみなす社会の前提を揺さぶった。その意味で、中心からは見えにくい社会認識を生み出したと言える。
私は筆者の見解に賛同する。なぜなら、中心にいる人だけで社会を理解すると、秩序が保たれている事実ばかりが強調され、その秩序が周辺の人に与える痛みが不可視化されるからである。ただし、周辺の視点だけでも制度全体の運用は難しい。必要なのは、マージナル・マンの経験を出発点にしつつ、社会全体のルールとして修正することである。
したがって、社会認識においては、制度の内部で語られる正義だけでなく、制度の外縁で現れる苦痛や違和感を重視すべきである。そこに、法と社会をより正確に理解する手がかりがある。
字数カウント: 711字



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