平成三〇年度 北里大学
・議論の整理
著者は文明と文化の違いとして、新幹線を海外に輸出する例を挙げている。新幹線という高速で走る電車を建設すること自体は「文明」であるのに対し、十分間隔で運行する新幹線の時刻表や、市民から苦情を受けないように一分の遅れも出ないように慎重に管理されていることは、厳密に時間を守ることを美徳とする日本特有の「文化」を反映していると著者は述べている。
・問題発見
私は文明と文化の違いとして、医療の輸出を挙げたいと思う。日本の医療は世界でも有数の技術力を誇り、日本を代表する産業として医療を輸出したり、国外から患者を招いて治療したりする医療ツーリズムの必要性も盛んに唱えられている。このような日本の医療の輸出を考える際、筆者の述べる文明と文化の違いを考慮することは非常に重要であると考えられる。
・論証
どんな病気がその国で問題となっているかというのは国の経済状況や風土、宗教によって様々である。貧困層の多い国では感染症や周産期医療が早急な問題となっていて、治療そのものは簡単であっても、医師数の不足、医療資源の不足といった治療体制の貧しさが問題となる。ある程度経済に余裕のある国ではがん治療といった難しい疾患の治療が求められる。宗教、経済状況によっては個々人の病気のとらえ方、死生観も日本とは大きく異なることも多い。
・結論、結論の吟味
日本の医療技術を輸出し、病気を日本の水準で治療すること自体は「文明」である。しかし、提供する国や民族の「文化」を鑑みたときに、日本式の治療がそもそも行えるのか、日本式の治療が本当に求められているのかを考える必要がある。感染症で多くの人が亡くなる国には、がんを検出するためのCTなどの機械は必要とされない。日本であれば手術をすれば助かる病気も、親からもらった自分の体にメスを入れることを是としない考え方もある。今後医療を日本の産業として輸出を推し進めていくときは「文化」を考慮することが必須である。
(788字)
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