2014年度 順天堂大学
・議論の整理
写真の上半分では湖のほとりに緑が広がり、青空の下牛がのんびりと草を食んでいる。一方の下半分は、湖の水面下であろう暗闇が広がり、一番底に灯りが一つ浮かんでいる。湖は人間の心を表し、その表面は晴れ晴れとしていても、心の底には外からはうかがい知れない暗闇が広がり、隠された心情である「心の秘境」が静かに光っているのかもしれないと考えされられる。
・問題発見
患者さんと人間関係を築いていく必要のある医療職は、患者さんの持つ心や「心の秘境」について理解をし、気を配る必要がある。
・論証
患者さんにはじめて問診をするとき、多くの患者さんは、例え体調が優れなくても初対面である医師に対して愛想よく丁寧に接してくれる。その患者さんの様子は患者さんの心の上層部に過ぎず、心の中では様々な感情が渦巻いているのかもしれないが、初対面の医師ではそこまで知ることができない。
・結論、結論の吟味
しかし、治療が長期間に及ぶ場合や、死につながる重篤な疾患の場合は状況が異なる。長期間にわたって治療が続くときは、自ずと患者さんと話す時間も増え、良好な人間関係が築けた場合は、治療への不満、病状への不安といった心の中を徐々に吐露してもらえるようになれる。医師はそれを傾聴し、患者さんと一緒に治療を考えていくことができるようになる。致死的な疾患を持つ患者さんにおいては、患者さん自身も気が付いていないような心境、つまり「心の秘境」に気が付くことも時に重要となってくる。終末期を迎えた患者さんが表層では愛想よくふるまっていても、心のうちでは死への不安と闘っているのかもしれないし、「心の秘境」では遺していく家族への懺悔や、やり残したことへのやりきれなさなどを抱えているのかもしれない。そのような「心の秘境」に抱えた患者さんの思いを、患者さんと話をしていく中で患者さん自身が発見できるように促していくことが、患者さんが少しでも安心して死を迎えるために必要だと思う。(792字)
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