慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 2005年 解説

・ 問題文

問題
学校の卒業式・入学式などにおける。「日の丸」の掲揚・「君が代」の斉唱にかんする問題が。論議をよんでいます。
文部省(現在の文部科学省)は,1989年に告示された学習指導要領で入学式・卒業式には「国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」としました。さらに1999年には「国旗及び国歌に関する法律」(略称「国旗国歌法」)が制定され,「日の丸」を国旗,「君が代」を国歌とするものと定められました。
戦争など歴史的経緯のある「日の丸」「君が代」を国旗・国歌とすることには,当時は反対の意見もありました。それに対し小渕恵三首相は「政府といたしましては,国旗・国歌の法制化に当たり,国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません」(1999年6月29日,衆議院本会議)と答弁しました。国歌のあつかいについても。ほぼ同様の答弁がなされています。

以下の資料は,2001年以降のこの問題に関する新聞の報道と社説です。これらを読んで。以下の問いに答えてください。なお,あなたの考えを論理的に書いていただければ,どのような立場をとられてもけっこうです。
問1
学校での国旗・国歌は,どのようにあればよいと思いますか。できるだけ,あなたの体験も交えて,考えを述べてください(800字以内)。
問2
学校から一歩広げて,日本社会において国旗・国歌はどのようにあればよいと思いますか。あなたの考えを述べてください(800字以内)。

・ 問題の読み方

 問一・問二ともに典型的な5STEPsを用いる問題。

 問一については、議論を整理して、学校における国旗国歌の扱い方の問題点を提起し、その原因を分析し、解決策or結論を書き、それを吟味する。問二については、日本社会について同じことを行うのみである。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 政治的視点だけではなく、教育学の視点や、経済学の視点など多くの学問分野からの視点が求められる。

・ 模範解答

議論の整理→

東京都教育委員会が、東京都の小中学校などに対して、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を強制するということがあった。これに対して、各学校の教職員の一部は、このような強制は憲法で保障されている思想・良心の自由を侵害するものだと主張した。そして、入学式や卒業式などの国歌斉唱の際に、着席していたという教職員が多かった。

……これについては、課題文中でも読売・産経新聞と、朝日・毎日新聞の間で再三述べられているので引用はしない。

問題発見→

しかしこれは、子どもに教育を行う立場であるはずの教職員が、教育の場において、思想信条を盾にして平気でルールを破っていると捉えることもできる。

論証→

スポーツ大会など公の場での国歌斉唱や国旗掲揚の際の起立・脱帽などは、法律で定められているものではない。公の場での起立・脱帽などは、マナーや礼儀のひとつである。これに対し、学校の式典の際の起立は、マナーや礼儀であると共に、ルールとして決められているものである。思想信条を持つのは個人の自由だが、それを理由にして、教職員が子どもの前で平気でルール違反をしていることは問題である。生徒に対して知識やマナー、礼儀を教える立場でもある教職員が、その仕事を怠っていることになる。

解決策or結論→

これからの、学校における国歌、国旗のあり方としては、まずは教育委員会の「国旗掲揚と国歌斉唱の強制」を廃止するべきだ。思想信条は個人の自由であるので、歌うこと・国旗を掲げることは、各学校に任せるべきである。そうすれば、教職員のルール違反などは無くなる。式典で風紀を乱していると指摘されにくくなる。

解決策or結論の吟味→

そして、学校での国歌・国旗に対しては、「敬意を表する存在」という位置づけをすることが望ましい。スポーツ大会など公の場での国歌斉唱や国旗掲揚の際は、強制力は無いが、そこにいる多くの人々が自発的に起立・脱帽を行っている。このような状況を、学校の中でも作っていくべきである。どんな思想信条を持っている人でも、目上の人には敬意を払うものである。それと同様に、国歌斉唱や国旗掲揚の際には、起立・脱帽はマナー・礼儀として行われるべき行動であるとしていうべきだ。

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