慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 2002年 解説

・ 問題文

問題
われわれの日常生活は、「もの」を作ったり,サービスを提供したりする。さまざまな産業や企業活動の上に成り立っている。精巧な製品や便利なサービスがあるからこそ,快適な生活が送れるのである。しかし,産業やその担い手である企業は,われわれの社会を明るく便利にするだけではなく,いろいろな問題をも起こしている。そういう二面性を前提にした上で,次の7つの資料のうち、少なくとも3つを用いて,将来の産業社会における企業の役割を議論しなさい。(使用した資料番号を明記し。全体で1000字以内)

・ 問題の読み方

 企業の役割について議論しなさいという問題で、これらは5STEPsを用いて議論すべき問題である。企業の役割についての諸学説を整理し、その上で問題を提起し、その原因を分析し、解決策or結論を提起し、解決策or結論を吟味するという流れになる。

・ 模範解答

議論の整理→

企業というものは、各資料の企業の例を見ても分かるように自己と株主の利潤の追求を存続条件・手段として活動している。そして、我々の日常生活はその企業の、モノを作ったり、サービスを提供したりする、様々な活動の上に成り立っている。精巧な商品や便利なサービスがあるからこそ、我々は快適な生活が送れているのは事実だ。

問題発見→

しかし、企業活動が我々の生活にもたらしたのは、利点だけではない。1960年代には、企業が利潤の追求、さらには工業の発展などを重視しすぎて、公害を引き起こしてしまった。たとえば、資料2の携帯電話は電波などによる人体の危険性が指摘されているし、資料3のカップヌードルや資料4のファーストフードも食べ過ぎると健康被害をもたらす可能性がある。また資料5・資料6の自動車産業も環境破壊の謗りから逃れることは出来まい。

……資料に述べられているような発展がどのような影響をもたらしたかについて書いた。

論証・解決策or結論→

現在でも、企業活動から生じる環境問題は多くある。企業活動を行うこととは、同時に環境破壊活動を行うことでもあるからだ。例として、地球温暖化や干拓事業、水質汚染などによる野生動物の絶滅・多物多様性の喪失などが挙げられる。これらの企業活動から生じる環境問題は、現在の我々の生活に対して直接的に悪影響を及ぼすだけではない。我々の息子や孫に対しても、より深刻な問題を残してしまう可能性がある。このような世代間倫理の観点からも、より環境への悪影響が少ない企業活動を求めていく必要がある。

解決策or結論の吟味→

これからの産業社会における企業の役割を論じる上で、まずは企業の社会的責任を考えることが重要だ。企業は、企業を取り巻く顧客・株主・従業員、または地域社会からの信頼と期待に応えるという形で、責任を果たすことが求められているからだ。資料1からもわかるように、企業が社会に、安全で安心して利用できるモノやサービスを提供することで、企業と各利害関係者との信頼関係を築くことができる。社会からの多様なニーズに対して、的確に応えることが企業の責任であるといえる。企業の社会的責任とは何かを考えた上で、環境に配慮した企業活動を行うためには、企業と社会の間で共通価値を作り出すことが必要である。環境問題のように、企業活動から生じる社会問題の解決策or結論を、企業全体の事業戦略として扱っていく。そして、各企業の持つスキルや専門知識をお互いに提供し合って、事業活動として利益を得ながら社会問題を解決していく。企業が社会と共にチームのようにまとまり、同じ価値観を持って同じ理想へ向かうことが、これからの企業としての役割である。

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