慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 2009年 解説

問1

 自民党も民主党も数多くの政策を掲げています。それらの政策に関する情報を集約して,横軸と縦軸からなる座標空間にまとめてみましょう。例えば以下の図では,A党の位置はA党が集団主義の傾向を著しく有し,どちらかといえばタカ派であることを示しています。この例を参考にして,次の問いに答えてください。1)あなたが横軸と縦軸のそれぞれの極にふさわしいと考える名称を,解答用紙の○一○に記入してください。2)自民党と民主党が掲げている政策をもとに,1)であなたが作った解答用紙の座標空間に,それぞれの政党の位置を,政党名とともに★印で示してください。3)そのような2つの軸を選んで座標空間を作った理由を,200字以内でまとめてください。

問2

 次の1)-4)の項目を考慮して,自民党と民主党のマニフェストを1200字以内で評価してください。

1)目指すべき社会の姿

2)目指すべき社会を実現するための具体的政策

3)政策の実現可能性を支える根拠やデータ

4)言及されていない重要政策

・ 問題の読み方

 問一については、軸を決める際にそれぞれの軸が「もれなく・ダブリがない(MECE)」な関係でなければいけない。

 もれがなくダブリがない二軸を決めることは大変だが、たとえば「外交と内政」「経済と政治思想」などの二軸が考えられる。

 問二については、5STEPsの中にそれぞれ必要とされる要素を埋め込む必要がある。

議論の整理……今の日本社会がどのような問題を抱えているのか、問一の座標軸を参考に整理
1)目指すべき社会の姿 2)目指すべき社会を実現するための具体的政策
3)政策の実現可能性を支える根拠やデータ
問題発見……問題提起 4)言及されていない重要政策
論証……論証
解決策or結論……解決策or結論
解決策or結論の吟味……解決策or結論の吟味

・ SFC小論文で求められている解答への指針

 問二については、2)目指すべき社会を実現するための具体的政策の部分でSFC的な多分野からの検討が必要になる。

・ 模範解答

議論の整理……

民主党と自民党の目指すべき社会の姿について、共通している前提は、「政治は日本のために役に立つものであり、力をもっている」ということだ。だが実際には、政府が介入しないことによって、人々が幸せに暮らせるようになる場合もある。例えばアメリカの禁酒法の廃止などが挙げられる。お酒を合法にして政府がお金をコントロールし、収益に税金をかけるなどはしていたが、政府がほとんど口を出さなかったことで産業が発展した場合もある。
自民党は、自由競争をサポートしつつ日本の成長と、それによって持続的な繁栄が見込めるような社会を目指している。それに対して民主党は、社会保障政策の見直しと拡大・充実により、現在の生活水準の最低のラインを上げようとしている。それにより、国民が安心して働けるような社会を目指している。現在は就職難などによって、生活設計の難しい人々が多くなっている。したがって民主党の目指す社会の姿は、将来的に希望を抱かせるものだと言える。
両党が目指す社会を実現するために、様々な具体的な政策が挙げられている。そのなかでも、年金問題と社会保険庁の廃止についての政策に関してだが、両党とも、社会保険庁の廃止に賛成している。自民党は、社会保険庁を廃止後、6つに分け、公的年金の責任は国が担いつつ、運営は非公務員型の新法人によって行わせると言っている。この新法人では、「民間への委託を積極的に行う」と書かれている。一方で、民主党は、社会保険庁を廃止後、国税庁と統合して歳入庁を新しく設けるという。自民党は民間への委託によって財政をスリム化させることを狙っているが、民主党は政府が年金を扱っていくという姿勢をとっている。
年金問題については、自民党は「基礎年金の国庫負担の割合を引き上げる」といっている。しかし民主党は、「基礎の財源は税金」にするといっている。両党とも同じような方向を示してはいるが、自民党はそれを実現させるための具体的な策を提示していない。しかし民主党は、「税金は消費税から調達する」と具体的に述べている。このように自民党は、年金問題の解決策or結論が実現する可能性を示す根拠が明らかにされていない。それに対して民主党は、財源の問題について明記しており、その根拠についても明確にされている。

……率直に言って、マニュフェストの引用部分が膨大すぎ、適切な引用を行うことは非常に難しい。あらかじめ、自民党と民主党の政策的な違いに詳しくなければ、答えることが相当困難な問題だろう。

問題発見……

しかし両党ともに、明らかにしていない政策がある。消費税増税についての政策だ。

……多くの人が誤解しているが、この小論文の主なテーマは、この論じられていない政策について触れるところから始まる。

論証・解決策or結論……

民主党は年金の財源を消費税から調達すると言っているので、現時点での税率で基礎年金をまかなっていけるのかについても記述する必要がある。仮に現時点でそれが無理なら、消費税を増税することを明記するべきである。一方で、自民党にしても、少子高齢化の時代に、マニフェストに書かれた政策を実現させるための財源を確保するのは難しい。

……字数が少なくなったので、原因は軽く触れるのみにとどまるが、支持母体などからこうした議論ができない理由を分析する文章があっても良い。

解決策or結論の吟味……

自民党の場合は、一部で、政策の実現可能性の根拠が不明な部分が見られる。しかし民主党の場合は、1つの政策のついて具体的な記述がなされていて、政策を支える根拠が明確にされていることが多い。以上を踏まえると、民主党のマニフェストの方が、国民にとって説得力のあるものである。

……少なくともマニュフェストという意味においては、という前提の上で議論する必要がある。

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