慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 1996年 解説

・ 問題文

問1 次の四つのテキストA,B,CおよびDは,それぞれの視点から。現代社会における商品および商品広告について論じています。これらのテキストから読み取れる限りでの,商品および商品広告についての各テキストの論述の論点を説明し,あわせてあなた自身の考えを述べなさい。その際,すべての記述と論述を800字以内におさめなさい。
問2 テキストEはラジオを媒体とする商品広告コピーです。問1で述べたあなた自身の論述の視点から。このCMコピーについて200字以内で論述しなさい。

・ 問題の読み方

 SFCにおいて、とくに環境情報学部でよく見られるメディアとコンテンツの問題に近い問題。メディアとコンテンツについての問題意識を持っていないと少々難しい出題である。構成そのものとしては、単純に5STEPsを用いればよく、まず課題文について整理し、ついで商品および商品広告についての問題を提起し、次にその原因を分析し、最後にその問題の解決策or結論を書き、それを吟味すれば良い。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 ありがちなメディア論・コンテンツ論ではなく、情報技術や消費者保護と絡めて書けるとSFCの学際的研究にも近い面白い小論文が書ける。

・ 模範解答

議論の整理→

AからDまでの4つの論文では、「現代の消費社会における商品のシンボル化」について共通して言及されている。具体的に見ると、論文Aでは、商品の日常生活における意味は商品自体の象徴的価値を作り出すということが述べられている。その象徴的価値を生み出す過程を担っているのが広告である。論文Bでは、私たちの消費活動が、広告を介さなければ私たちの生活様式にはなれていないことを指摘している。論文Cは、私たちが個別の商品そのものに価値を見出しているのではなく、商品のイメージにしか価値を感じていないことを指摘する。また、論文Dでは、製品の差異が価値を生み出す消費社会において、近年平準化してしまった商品の差異を補うものが広告であると説明している。

……それぞれの根拠について以下紹介する。

論文A

 商品は,その歴史的出現以来,モノとしての価値とシンボルとしての意味とを兼ね備えていた。貴重な商品は,その購買者に地位賦与の機能を与えることは,大昔から知られているし,近代にはいれば,ガス灯や自転車は文明開化のシンボルと考えられた。そして,社会が複雑化し,商品が多様化すればするほど、商品のシンボル機能は,大きくなって行く。さまざまな意味が,商品に与えられる。

論文B

 AT&Tによって提示されたようなマス・イメージは,覚えやすい言語、信仰のシステム、共通の感性を叩きこむ回路をつくりだし,現代社会の一部となる意味を私たちに説明してくれる。それは,品物とサービスの販売と消費で定義づけられた社会,人間関係がしばしば金銭のやりとりで規制される社会。解決策or結論を見出す必要に迫られればすべて金でかたづけることが常識になりつつある社会だ。冒頭の広告に見られるような意図は日常のことになった。消費が私たちの“ウェイ・オブ・ライフ”なのだ。

論文C

 消費者はもはや特殊な有用性ゆえにあるモノと関わるのではなく,全体としての意味ゆえにモノのセットとかかわることになる。洗濯機,冷蔵庫。食器洗い機等は,道具としてのそれぞれの意味とは別の意味をもっている。ショーウィンドウ,広告。企業。そしてとりわけここで主役を演じる商標は,鎖のように切り離し難い全体としてのモノの一貫した集合的な姿を押しつけてくる。それらはもはや単なるひとつながりのモノではなくて,消費者をもっと多様な一連の動機へと誘う,より複雑な超モノとして互いに互いを意味づけあっているが,この限りにおいてはモノはひとつながりの意味するものなのである。

論文D

 A氏は,まずメンフラハップのコマーシャルを例にあげ,「モノはそこにあるだけではただのモノにすぎない。が,そのモノに面白い言葉がつくと。とつぜんモノが息づき,モノと人間との関係が生き生きとしたものに変わってくる」と,広告の“あらまほしきありよう”を説いてから,商品というモノを息づかせることなく,モノから離れ,一人歩きしていった“繁栄”の60年代以降の広告について批判的にのべている。

問題発見→

近年の大量生産・大量消費社会において、人々は商品よりも、それに付いてくるイメージ・情報・評判を消費意欲の根源にし、消費の対象としている。そうした流れの中で、虚偽広告や誇大広告によるトラブルが多く発生してしまっている。広告の発信者が売り上げを伸ばすために、実際の商品の値段とは異なるものを広告したり、料金の体系が実際のものとは異なっていたりというような例が多い。

……広告により購買を判断する上で起こる問題について述べている。

論証→

虚偽広告や誇大広告をしてしまうのは、広告の中の情報が、発信者から受信者へ届くまでに変わらずに一方通行だからである。受信者にとって魅力的な情報を載せておけば、それが実際とは異なっていても受信者は気がつかない。特に、紙媒体の商品広告は、完全に情報の一方通行である。

……誇大広告が起こる原因を書いている。

解決策or結論→

この情報が変わらずに一方通行になっていることを解決するために、徐々に紙媒体の広告は減らし、「広告のSNS化」という解決策or結論を採用したい。デジタル化した商品広告を主流にし、広告の情報に対し誰でもレビューのような感想を付け加えることができるようにするものである。

……誇大広告が起こる根本的な原因の解決策or結論を書いている。

解決策or結論の吟味→

これにより、消費者が広告の発信者の1人になることが可能になり、情報の一方通行は解消される。広告に実際の消費者の感想が付け加えられるようになるので、売る側は、虚偽広告や誇大広告ができなくなる。現在でも、商品広告に対して様々な規制はあるが、それに加え一般の人々さえも監視役になるものである。
また、どんなに魅力的と思わせる情報であっても、それが嘘であれば意味をなさなくなるため、情報ではなく商品そのもので競い合うことが必要になる。これは、広告やイメージの差異で消費活動をする社会から、商品そのものの価値を消費意欲の根源にし、消費の対象にする社会に変化していくことを意味する。つまり、商品の性能が平準化してしまうことを防ぐことが可能である。

……利害関係者を踏まえながら書いている。

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