慶應義塾大学 経済学部 小論文 1981年 解説

慶應義塾大学 経済学部 1981年度 小論文模範解答

議論の整理……

基本的人権という価値観は、産業革命以降の市民革命によって形成されたものである。そもそも、産業革命以前においては、基本的人権という価値観は不必要なものだった。なぜなら、蒸気機関に財表される生産力を飛躍的に増大させる機具がなかったため、農家の息子は農家、職人の息子は職人という様子で、身分が固定化されており、それぞれに固有の職業組合の中で人間として尊重されうる地位を確立することができたためである。また、彼らは自分の目の届かない範囲にまで及ぶ莫大な財産を持つこともなかったため、そもそも財産を意識的に守る必要がなかったともいえる。

問題発見……

たが、市民革命以降、飛躍的に増大した生産力の影響で、身分階層は流動化し、もともとは農家であった者が優れた商才で大資本家へと駆け上がっていくこともままあった。すると、目の届かない範囲にまで及ぶ莫大な財産の管理が課題となった。

論証……

そこで生まれた考え方の一つが基本的人権の一つである財産権である。政府とは国民の生命・安全・財産を守るための機構であり、その権能を十分果たさないのであれば革命を起こして転覆させても良いという考え方のもとに、人々は自らの生命・安全・財産を守る政府を待望した。

解決策or結論……

こうした市民のニーズに対し、政府は当初警察力と軍事力の増大によって応えたがすぐに行き詰まった。産業革命以降、人々のあいだでは従来まれに見るほど格差が拡大し、もはや失うものすらない失業者は、命の危険すら顧みずに強奪などの犯罪行為をする危険があった。こうした失業者の存在は、富裕な市民の生命・安全・財産を脅かすのに十分なインパクトをもっていた。
このことから、政府は警察力・軍事力の拡大による基本的人権としての財産権の保護のみならず、福祉の拡大による基本的人権としての社会権(生存権)の保護すら強いられるようになった。貧者保護は、高邁な理想の実現によってではなく、富裕な市民の財産保護という極めて現世的要求によって実現されたのである。

解決策or結論の吟味……

こうした解決策or結論は、自由と民主主義の恩恵を、富裕な市民のみならず、貧者にさえも分け与えた。かくして、普通選挙権の導入を経ても、民主主義というシステムは朽ちることなく機能しているのである。基本的人権という価値観は、産業革命以降の市民革命によって形成されたものである。そもそも、産業革命以前においては、基本的人権という価値観は不必要なものだった。なぜなら、蒸気機関に財表される生産力を飛躍的に増大させる機具がなかったため、農家の息子は農家、職人の息子は職人という様子で、身分が固定化されており、それぞれに固有の職業組合の中で人間として尊重されうる地位を確立することができたためである。また、彼らは自分の目の届かない範囲にまで及ぶ莫大な財産を持つこともなかったため、そもそも財産を意識的に守る必要がなかったともいえる。
たが、市民革命以降、飛躍的に増大した生産力の影響で、身分階層は流動化し、もともとは農家であった者が優れた商才で大資本家へと駆け上がっていくこともままあった。すると、目の届かない範囲にまで及ぶ莫大な財産の管理が課題となった。
そこで生まれた考え方の一つが基本的人権の一つである財産権である。政府とは国民の生命・安全・財産を守るための機構であり、その権能を十分果たさないのであれば革命を起こして転覆させても良いという考え方のもとに、人々は自らの生命・安全・財産を守る政府を待望した。
こうした市民のニーズに対し、政府は当初警察力と軍事力の増大によって応えたがすぐに行き詰まった。産業革命以降、人々のあいだでは従来まれに見るほど格差が拡大し、もはや失うものすらない失業者は、命の危険すら顧みずに強奪などの犯罪行為をする危険があった。こうした失業者の存在は、富裕な市民の生命・安全・財産を脅かすのに十分なインパクトをもっていた。
このことから、政府は警察力・軍事力の拡大による基本的人権としての財産権の保護のみならず、福祉の拡大による基本的人権としての社会権(生存権)の保護すら強いられるようになった。貧者保護は、高邁な理想の実現によってではなく、富裕な市民の財産保護という極めて現世的要求によって実現されたのである。
こうした解決策or結論は、自由と民主主義の恩恵を、富裕な市民のみならず、貧者にさえも分け与えた。かくして、普通選挙権の導入を経ても、民主主義というシステムは朽ちることなく機能しているのである。

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