慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 2005年 解説

・ 問題文

 人が作り出すあらゆる物を人工物といいます。人工物の使いやすさや分かりやすさを決める概念の一つとしてアフォーダンスがあります。アフォーダンスに関して書かれた資料1をよく読んでください。次に,あなた自身の身の回りでアフォーダンスが充分でないため。あるいは間違ったアフォーダンスのために,使いやすさや分かりやすさが損なわれている実例を2つ挙げてください。それらについて。それぞれ,図示してどこがどう使いにくいか。あるいは分かりにくいか。またどのようにすれば改善できるかを,250字以内で具体的に説明してください。

 世の中にある機械やシステムのほとんどは人が使うためのもので2す。人がその機械やシステムをスムーズに使うためには。その機械やシステムに対して,簡単にしかも間違いなく指示を出したり,逆に途中経過や結果を機械やシステムの方から知らせてもらったりといった。良いコミュニケーションが成立していなくてはなりません。そのために人と機械の接点には,ヒューマンインタフェースと呼ばれる機構が設けられています。たとえば現在。パーソナルコンピュータのほとんどには人とのインタフェースとしてキーボード。マウス,ディスプレイなどがあり,また。病院には来訪者とのインタフェースとして。総合案内や行き先表示などがあります。資料2と資料3は,そのインタフェースに関する文章です。これらの資料をよく読み。次の2つの問に答えてください。
[1]この「ヒューマンインタフェース」という考え方が,今なぜ重要だと考えられているのかを,世の中の流れと関連づけて400字以内で記述してください。[2|あなた自身が考える今後のインタフェースのあるべき姿を,具体的に製品や社会システムのジャンルを挙げて,500字以内で述べてください。その際,あなたの注目したその製品や社会システムのジャンルのゾーンを1つ。図7のように丸印で解答用紙の図に記入してください。そして,なぜそのゾーンに注目したのか。そのゾーンが何を表わすのかについても言及してください。
〔解答欄〕

資料3には、家電やコンピュータが例として多く取り上げられていますが、その分野にとらわれる必要はありません。日用品(文房具。化粧品。台所用品など)や社会システム(交通、病院など)を含め、幅広く考えることができます。
なお、解答用紙の図は資料3の中にある図7をもとに作ったものです。これは、支払い能力の高低と忍耐力の大小の2軸により。消費者全体を分類するためのものです。

・ 問題の読み方

 問1や問2-1は文字数が少ないため戸惑う可能性があるが、こうした場合は、問題提起→論証→解決策or結論の中で必要な箇所だけを書けば良い。

 また、問2-2については、一般的に5STEPsを用いるだけなのでそれほど難しい問題ではない。アイディアが浮かばない場合には、オズボーンのチェックリストを用いるなどの工夫を行うと良い。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 問2-2に関しては、現在SFCでも研究が進んでいるような触覚デバイスやウェアラブル、3DのARなどに触れると良い。こうしたテーマについての知識はNewtonなどで適宜補う必要があろう。

・ 模範解答

[問1]

平らな台は「ものを置く」ことをアフォードしている。アイスクリームの冷凍庫の上部が平らになっていると「ものを置く」ことを間違ってアフォードしてしまう。しかもガラスになっていると,実際に何気なく重いものを置いた場合、ガラスが壊れてしまう恐れがある。
この場合,たとえば上面を斜めにすれば,間違って「ものを置く」ことのアフォーダンスが回避され、問題が解消する。

「問2-1」

近代の情報通信技術の進歩によって、家庭や職場、公共の場に情報通信技術が普及している。例えば、家庭にさえもパソコンなど様々な電気機器が普及しており、各家庭がそれらから受ける恩恵はとても大きい。
しかし、一方で、電気機器を使いこなせる人とそうでない人の間での格差を生んでしまっている。その原因は、電気機器が多機能化したことで構造や操作が複雑になっていったからである。
そういった電気機器が誰にとっても扱いやすくなるように、現在ヒューマンインタフェースが重要視されるようになっている。簡単な構造の家庭用電気機器でも高度な大規模システムでも、最終的な操作と判断は人間が行わなければならない。そのような観点からも、ヒューマンインタフェースの重要性は高まっている。

「問2-2」

現在では、家にいながらでも買い物を楽しむことが可能である。インターネットのオンラインショップ、スマートフォン、タブレット端末などの普及により、わざわざ店頭に出向かなくても買い物ができてしまう。
しかし、インターネットのオンラインショッピングのデメリットといえば、本物を直に見て、触ることが不可能であるという点である。店頭に直接買いにいけば触ることは可能だ。実際の感触がどうなのかということは、消費者にとってみれば重要である。特に、衣服を選ぶ際には、肌触りは選択において重要な要素のひとつだろう。
このような問題を解決するために、触感インターフェースという解決策or結論を提案したい。具体的には、スマートフォンやタブレット端末のタッチパネルに、「感触」を実現させる機能を付け加えたい。
このように、タッチパネルに感触を付け足し、肌触りを確かめられるようになるということは、消費活動の手助けにもなる。消費者は実際の感触を確かめられるので、これまでよりも買い物がしやすくなる。これは企業側にも利益になる。また、タッチパネルのボタンに触感があるということは、スマートフォンなどの音声ガイドと組み合わせることで、視覚障害者でもタッチパネルを使えるようになるということだ。健常者のユーザーに対しても、ボタンに触感があれば、間違いやすいボタンを識別できるようになるなど、タッチパネルの利便性を向上させるものである。

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