慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 2002年 解説

問題

 「Skyscraper」すなわち「摩天楼」とは,天をかすめるものという意味から超高層建築の代名詞のように使われています。ここに,人類の空に対する夢と願望を示すために,資料3点を添付します。そこでこれら3つの資料を参考として,次の課題に答えてください。

 解答欄(1)には、800字以内で、人類の空に向かう構想力とそれ自体が抱える問題点について論じてください。その際,摩天楼の発生。技術の可能性と限界,人類の生存についての視点を必ず織り込んでください。

 解答欄(2)には、「資料1」で示されたバベルの塔が,過去から引き継がれたプロジェクトとして今日まで建設が続けられたと仮定し,このプロジェクトの今後について提案してください。プロジェクトを継続するか見直すかを判断し,具体的な内容を示してください。工事の継続,不動産としての販売、解体整理、映像化。テーマパーク化、など自由闘達なアイデアを期待しています。表現方法は自由ですが、枠内(縦15cm×横27cm)に必ず収めてください。

・ 問題の読み方

 いずれも、5STEPSで書くべき問題である。

 問一は課題文を参考にした上で5STEPsに収める必要があり、問二はゼロベースで5STEPsを用いる必要がある。

・ SFCが求める解答への指針

 問一については、下記のようにまとめるべきである。

議論の整理……

共通の前提→

3つの資料からわかることは、塔は歴史的に、人間の活動において象徴的な存在だったというということだ。

議論の論点→

資料1にあるようなバベルの塔は「権威・繁栄」の象徴であり、資料2にあるようなアメリカで生まれた摩天楼は「自由と競争」の象徴である。また、資料3にあるようなフラーのタワーは「ネットワーク」のシンボルとして作られた。これらが象徴する人間の活動は、人間がこれまでに、自然を支配し改造しようとしてきたという歴史を示している。
中でも、摩天楼の発生に関しては、アメリカ人が、都市の均質化に対抗する手段として「高さ」を追求しながら、競争をしてきた結果である。それまで水平方向に都市の拡張をしていたアメリカ人が、その限界を感じ、空中に向かって拡張させたことで摩天楼が生まれた。このアメリカの摩天楼のように、都市に高さを追求するのは、効率が良いからである。都市が水平方向に広がらずに垂直に伸びることで、情報や資本、さらには人を一カ所に集中させることができる。

問題発見……

しかし、都市空間に対して「効率の良さ」を極限まで追求すると、「効率の悪い空間は無駄だ」という考えが生まれてしまう。その考えが広まることで、自然環境が少しずつ減らされ、競争が激化し、都市空間は強者だけが活動する空間になってしまう。さらに、情報と富が一カ所に集中してしまい、各地の貧富の差が拡大してしまう。摩天楼の密集する先進国の都市が、「権威・繁栄」の象徴である「現代版バベルの塔」になってしまう。

論証……

原因A→

こうした富と情報の集中は、人材確保上の事情から生じる。

原因B→

優れた人の集中が、より優れた人の集中を生み、それが加速する。

原因C→

優れた人であればあるほど、そうでない人と一緒にいることをきひする。

解決策or結論……

このような状況を改善していくためには、資料3にもあるように、ネットワークで繋がった「宇宙船地球号」を作ることが重要だ。局所的に密集した摩天楼を建設するのではなく、世界に摩天楼を点在させる。そして、各地の摩天楼に人を集中させ、それらをネットワークでつなぐ。つまり、各地の摩天楼に人間活動のコミュニティを形成し、人間活動を横にではなく縦に拡張していくという構想だ。

解決策or結論の吟味……

これにより、現在のような、各地域ごとにおける情報と富の格差を減らすことが可能になる。また、活動が横へと広がらないことで、無駄な森林伐採を無くし、動物の活動範囲を保護していくことにもつながる。

 

 問二については、下記の点に注意しながら執筆すべきである。

 まず、解決策or結論について

(1) 学際領域
(2) 解決策or結論実行者が持つ技術力やデーターベースの優位性活用
(3) 他の競合が参入できない仕組み

 の条件を満たすこと。

 その上で、論理構成にそれを可能とする現実性があることである。

議論の整理→

現在の我々は、戦後に比べると物をたくさん持つようになった。

問題発見→

しかし、その反面で、必要でなくなればすぐにごみにしてしまう。そのような、大量生産・大量消費・大量廃棄社会になってしまっている。また、「都市」そのものも同じような存在だ。

論証→

物を集め、消費し、外部に廃棄物を出すという存在である。このまま人や都市が、外部にごみを放出し続けると、将来的には同じ場所にごみを埋め立てることができなくなる。そして、埋め立てる場所を確保するために、森林が切り開かれてしまう。

解決策or結論→

この問題の解決のためにも、今後はエコシステムとして、バベルの塔の建設を継続するべきだ。そもそも摩天楼自体、アメリカで、空中への都市の拡張を主な目的として建設されたものだ。新しいエコシステムとしてのバベルの塔も、アメリカのように、縦へと拡張させる。埋め立てる場所を横へと広げていくのではなく、上下に広げていく。これにより、埋め立て地の確保のために、自然が失われ続けることを防ぐことが可能だ。

学際分野→

だが、こうした取り組みには、従来の建築学の枠を超えた様々なシュミレーションが必要不可欠になる。

データーベース→

また、コンピューターシミュレーションなどによる膨大な情報蓄積も必要不可欠だ。

競合が参入できない仕組み→

そうした観点から、建築学と情報工学の融合が容易なSFCがこうした開発の先頭に立つべきだろう。

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