慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 2013年 解説

問1:あなた自身の身体知の学び

 図1は、知の種類と学び方を表した図です。わたしたちの知を平面としてとらえ、学びの象限と名付けました。図には知を理解するために2つの軸を設けています。頭脳知(形式知)と身体知(暗黙知)軸、段階的(学習)と非段階的(学習)軸がそれを示しています。

 図1と、資料1から資料3をふまえた上で、あなたがこれまでに学んだ身体知(あなたが第I象限と第IV象限に属するであろうと考える知)について述べてください。その身体知がどのような経験によって獲得されたのかを具体的に述べたうえで、自分が学んだ方法以外に、はたしてその知を獲得する別の方法がなかったか、について考察してください。(400字)

問2:身体知の学びを支援する新たな方法の提案

 問1で述べたあなた自身の身体知を、大きく向上させる新しい方法を提案してください。必ずしも科学技術にとらわれる必要はありません。あなた自身の自由な発想によるこれまでにないまったく新しい方法を提案してください。(400字)

問3:未来創造塾において、身体知の学びを支援する新規科目の提案

 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでは、近い将来新たに建設する未来創造塾において滞在型教育に挑戦します。慶應義塾大学の原点である適塾”のように、教員をふくめた仲間と寝食をともにし、問題発見解決型学習を目指します。

 あなたは入学後、この未来創造塾において、あなたが独自に提案する科目設置を認められました。あなた自身が伸ばしたいと考える自らの身体知を最大限引き出し、伸ばしていくための新規科目を提案してください。問2において、あなたが提案した新たな身体知の学びの方法を具現化する手段として、ここで提案する科目は、あなただけでなく、多くの学生に貢献しうるものであってほしいと願っています。

 設置する科目名、その科目で履修する内容、その科目を履修することによって伸ばせるとあなたが期待する身体知は何か、想定する学生数、評価方法、そして学生、教員の学び方と教え方がどのようにあるべきかについて述べてください。未来創造塾に必要とされる設備・環境などを挙げても構いません。(600字)

・ 問題の読み方

 まず、問一については、下記の要素を満たせば良い。
議論の整理……身体知の定義の明確化と、身体知の分類について、ならびにどんな身体知を獲得したか
問題発見……身体知を獲得する上で、どのような問題があったか?
論証……その原因はなにか?
解決策or結論……その解決策or結論はなにか?
解決策or結論の吟味……その解決策or結論に課題はないか?

 次に、問二については、下記の要素を満たせば良い。
議論の整理……身体知を大きく伸ばす方法とは?
問題発見……身体知を大きく伸ばす上で、どういった問題があったか?
論証……その問題はどのような原因で生まれるのか?
解決策or結論……その根本的な原因の解決策or結論は何か?
解決策or結論の吟味……その解決策or結論を吟味する方法は何か?

 最後に問三については、5STEPsを軸に書きながらも、定められた要素を全て入れると良い。
議論の整理……今まで自分が獲得した身体知と、その獲得方法の問題点と改善案についてのまとめ
問題発見……その改善案をカリキュラムに落としこむ上での問題を書く
論証……その改善案をカリキュラムに落としこむ上での問題が生じる原因を書く
解決策or結論……その根本的な原因を潰す解決策or結論を書いた後、その科目で履修する内容、その科目を履修することによって伸ばせるとあなたが期待する身体知は何か、想定する学生数、評価方法などを書く
解決策or結論の吟味……解決策or結論の吟味の中で、特に利害関係者検討にフォーカスして書く。学生、教員の学び方と教え方がどのようにあるべきかを中心に書くと良い。

・ SFCが求める解答への指針

 問二・問三で重要になるのが、
(1) 学際領域の活用
(2) 技術力・データーベースなどの活用
(3) ほかの大学が参入できないようなor慶應に教えを乞わざるをえないような仕組み
である。

 この観点から考えると、問二においてはその解決策or結論がコンピューターシミュレーションや統計学を用いたものであることが求められる。また、問三では、慶應SFCがその分野において先駆的な取り組みを行うことで、データーベースを構築し、同様の授業を他大学で行う際の参考資料として提供するなどして、慶應SFCがその分野の取り組みにおいて主導権を握るという趣旨のことを書けば良い。

・ 模範解答

問一

議論の整理……身体知の定義の明確化と、身体知の分類について、ならびにどんな身体知を獲得したか

私が獲得した身体知は陶芸である。陶芸の特筆すべき点は、ただ単に段階的に作業をしていれば完成するわけではなく、完成までに極度の精神的緊張が必要な点である。こうした点において、陶芸はマグカップ作りやガラス細工とは一線を画する。

問題発見……身体知を獲得する上で、どのような問題があったか?

陶芸をする際に問題になるのは、ろくろを回しながら、いかに型崩れせずに器を仕上げるかということである。

論証……

この力の入れ具合は、従来自ら非段階的に会得するしかないとされてきた。実際私も、職人の指の動きなどを見ながら、試行錯誤しながら形が崩れないよう何度も何度もやりなおし、ようやくこの技術をものにした。

解決策or結論……

しかし、陶芸といえど、本質的には工業製品の生産と変わらない。事実、今日ではセラミックという形で陶芸製品と同じ材質のものが自動車や電線にも使われている。このことから、側面・底面など器をパーツ分けし、初心者にある程度均質な陶芸製品を作らせることは可能であると私は考える。(396文字)

問二

問題発見……身体知を大きく伸ばす上で、どういった問題があったか?

陶芸は従来、純然たる職人技だとされてきた。しかし、寿司握りや漆塗りなど職人技とされてきた多くの技術が現在では段階的な操作をする機械でも可能になっており、私は陶芸も段階的に制作することが可能であると考えている。

論証……その問題はどのような原因で生まれるのか?

たとえば、陶芸の力を大きく伸ばすことを疎外する要因としては、「ろくろ」がある。ろくろをくるくる回しながら絶妙な指使いで形を崩さずに陶芸をする自信が多くの初心者にはないのだ。またこれがより上級の作品を作るときの足枷になる。

解決策or結論……その根本的な原因の解決策or結論は何か?

そこでまずは、ベルトコンベヤー方式を用い、予め出来合いのタイル状の底面のみを初心者に触ってもらうことにする。その次に、これも予め出来合いの側面を底面にくっつけ、側面と底面が接着するように工業用接着剤を指す。

解決策or結論の吟味……その解決策or結論を吟味する方法は何か?→利害関係者検討

このやり方であれば、ろくろをゆっくり回しながら、初心者でも陶芸作りを楽しむことが十分可能だ。限りなく器の形に近い出来合いのパーツを使った上で、素材に工夫を加えれば、型崩れの危険性も極端に減るだろう。(394文字)

問三

議論の整理……今まで自分が獲得した身体知と、その獲得方法の問題点と改善案についてのまとめ
問題発見……その改善案をカリキュラムに落としこむ上での問題を書く
論証……その改善案をカリキュラムに落としこむ上での問題が生じる原因を書く

私は「造形身体知の段階的身体化」という科目の開設を提案したい。
従来、陶芸に代表される造形技能はことごとく非段階的な学習を経て習得されるものとされてきた。いまだにこと陶芸の世界では段階化が進んでいない。そのことが、陶芸を多くの初心者から遠ざけている。

解決策or結論……その根本的な原因を潰す解決策or結論を書いた後、その科目で履修する内容、その科目を履修することによって伸ばせるとあなたが期待する身体知は何か、想定する学生数、評価方法などを書く

私はこの「造形身体知の段階化」という科目を通じ、誰もが素質を問わず段階的に陶芸技術を習得することができるようにしたいと考えている。当初は、若手陶芸家と生産技術の専門家の二人を教員として擁し、4人程度の学生数で始めるべきだろう。ここで初心者でも安定して段階的に陶芸技術を伸ばせることが立証できたら、10人、30人、100人と学期ごとに履修者を増やしていけば良い。
評価方法はひとえに指示された工程の完成度であるべきだ。これを評価材料とすれば段階的な技術の進歩を公平に評価できる。

解決策or結論の吟味……解決策or結論の吟味の中で、特に利害関係者検討にフォーカスして書く。学生、教員の学び方と教え方がどのようにあるべきかを中心に書くと良い。

また、教員の教え方は、懇切丁寧に教えるというものであってはならない。従来の陶芸技術が懇切丁寧に教えられる割には非段階的で習得しにかった反省を活かし、その逆をいく指導法をここでは徹底したい。つまり、マニュアルを見れば誰でも段階的に陶芸作りに親しめるようにするのだ。このためには、情報を整理するカオス系学問と生産工学とのコラボレーションが必要である。また、ただ単に講師が学生を評価するのではなく、学生から上がってきた課題を講師の教え方の評価材料とし、マニュアルの改定やSAや教員の交代も視野にいれて授業を運営する。(543文字)

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