慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 1998年 解説

・ 問題文

問題 何かを表現するには,メディア(媒体,媒介)が必要です。どのメディアを選ぶかによって,表現もまた影響を受けます。そして,同時にメディアは表現によってメディアとして機能します。資料1~4を読み,表現行為とメディアの関係について。自分なりの考えを1000文字以内で述べなさい。注1:文章は,多少の編集,省略が施されている。

・ 問題の読み方

 「表現行為とメディアの関係について、自分なりの考えを1000文字以内で述べなさい。」という問題を見て、なにを書けばいいのかを理解できる人はそうはいない。何を書くことを求められているのかほとんど理解できない人がほとんどであろう。この問題は、つまり「表現行為とメディアの関係について、(何が問題となりうるかを)、自分なりの考えを1000文字以内で述べなさい。」というふうに読むことができる。なぜなら、それが論じるということだからである。

 このように問題を読むと、構成が定まってくる。 表現行為とメディアの関係について税理した上で、 表現行為とメディアの関係についての問題を提起し、その原因を分析し、解決策or結論を提起し、それを吟味するのがこうした問題の解き方となる。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 マスメディアに代表されるメディアではだけではなく、世の中で傍流とされているものにも触れながら議論を展開すると、学際領域の有用性が高まり、評価の高い小論文を書くことが出来る。

・ 模範解答

議論の整理……

資料1〜4で紹介されている作品を見てもわかるように、メディアはコンテンツの内容を制約する役割がある。たとえば、資料1・資料4にあるように一本の線・点・面で表すことができる表現は、表現全体がもつ可能性からいえば限られたものであるし、資料2・資料3であるような言語表現で表される表現も決して表現したいことのすべてを伝えきれるわけではないだろう。

問題発見……

このように表現行為は常にメディアによる制約を受ける性質のものである。こうした制約を表現を阻害する要因としてではなく、むしろ表現に膨らみをもたせ、受けてに様々な、あるいは重層的な解釈を可能にさせるためにはどのような条件を満たさなければならないのかについて論じたい。

論証……

まず、メディアが同一である以上、受け手が得る新鮮な印象は、始めてその表現に触れた時が最も鮮烈であり、その後は回数を経るごとにその新鮮味が薄れる。
たとえば、らーめん一風堂の河原社長は、「ラーメンはメディアである」と主張するラーメン職人の一人である。メディアである以上、受け手の驚きは徐々に薄くなるため、一風堂では毎シーズン、スープから麺に至るまでのすべてを作りなおしているという。
このように、同じメディアという制約がある以上は、受け手に与える驚きの総量を変えないためにも変わり続ける、それも受け手に一回目と同じかそれ以上の驚きを与えながら変え続けるという極めて困難な仕事に表現者は挑戦せざるを得なくなる。

解決策or結論……

こうした困難な仕事に対し、メディアそのものを変える、あるいはメディアそのものの変化に順応するだけの変化を行うことは、決して難しいことではない。ネットメディアとそのコンテンツが、まさにそうした変化の仕方をしている。2ちゃんねるからmixi、そしてLINEへと変わっても人々が表現しているコンテンツがさほど変わらないのはその証左といえよう。

解決策or結論の吟味……

だが、今後、おそらくこうしたプラットフォームの変化、あるいはデバイスの変化はプッシュホンがプッシュホンのまましばらく変化を止めたように、あるいはテレビがテレビのまましばらく変化を止めたように、総じて変化がなくなっていくであろう。
そのようなメディア・プラットフォームの変化に乏しい時代の到来こそが、真にコンテンツの作りてが、「変わらないために変わり続ける」ことが出来るかの試金石となる。

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