慶應義塾大学 環境情報学部 2024年度 小論文 模範解答・解説
慶應義塾大学環境情報学部および総合政策学部では、開設当初から入学試験に小論文を取り入れてきました。この小論文の試験では、資料として我々が入学試験で出してきた過去問題および要旨とその解答例・解法例を引用しました。以下の設問に解答してください。
設問1)
過去問題1、2、3は、環境情報学部または総合政策学部の過去の入学試験で出題された小論文の問題の抜粋とその解答例です。これらの問題は受験生のどんな知的能力を測ろうとしてこれらの問題を出題したのでしょうか。過去問題1、2、3にある問題の抜粋および解答例から、これらの問題に共通する領域と構造、受験生に求めている知的能力について考え、300字以内で記述しなさい。
(この設問ではそれぞれの小論文の問題が取り上げた資料を掲載していませんが、それらを読まずとも解答することができます)
【解説】
- 共通する領域
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- インターネットの普及(過去問題2)や政治・経済の変化が激しい現代社会では、将来を予測することが難しくなっており(過去問題3)、「知」の在り方も変化している。このような時代において、知識の意味や役割、社会における知の活用方法がどのようにあるべきかが共通して問われている。
-
- 共通する構造
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- 抽象的な概念と具体的な事例を行き来し、既存の知識に対して批判的な視点を持ちながら、新たな知の創造や応用を促す構造を持っている
- ex)過去問題3
- 論理性・普遍性・客観性をもつ抽象的な「科学の知」⇔多様な意味を担う事物に囲まれて他者と相互に影響し合いながら直感と経験を類推を積み重ねて創出する体性感覚的な地である「臨床の知」
- ex)過去問題3
- →個別の事例を広い文脈の中で捉え、知の本質を考察することが求められている
- 抽象的な概念と具体的な事例を行き来し、既存の知識に対して批判的な視点を持ちながら、新たな知の創造や応用を促す構造を持っている
-
- 受験生に求めている知的能力
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- 抽象と具体を行き来できる文章理解力
- 複雑な概念を理解し、批判的に思考する力
- 不確実な社会において自ら考え、行動に移せる柔軟な思考力と、知識を単なる理論にとどめず、実社会に応用できる実践力
【解答例】
これらの問題に共通する領域は、「不確実性に溢れた社会における知の在り方」である。 予測ができない不確実な社会において、地域社会、国家、国際社会において未来の知はどのようにあるべきかについて議論されている。どの問題も、既存の知識や情報に対する批判を通じ、新たな知の創造に対する知見が述べられている。ここにおいて、受験生に求められている知的能力は、抽象的な概念を理解する文章理解力に加え、内容を自分自身の経験や知識、実生活に結びつけて深く考察する思考力である。また、大学入学後に、自身の抱く知的好奇心を、ただ知識のインプットだけに止めず現実社会に応用できる実践力があるかどうかがみられている。
設問2)
過去問題4、5、6は、環境情報学部または総合政策学部の過去の入学試験で出題された数学の問題とその解法の例です(ただし解法はひとつとは限りません)。これらは高度な高校数学の計算手法を身につけていなくても正解できる問題ですが、これらの問題には通底する出題意図があります。受験生のどんな知的能力を測ろうとしてこれら問題を出題したのでしょうか。過去問題4、5、6の3つの問題と解法例から、これらの問題に共通する構造、受験生に求めている知的能力について考え、300学以内で記述しなさい。
(この設問では引用したそれぞれの数学の問題について解答する必要はありません)
【解説】
【3つの問題の共通点】
- 数式が使われていない
- 複雑な数式や計算手法を使わず、論理的な推論や情報整理が重視されている
- 推定や帰納法のプロセス
- 問題の部分的な情報を整理して、そこから法則やパターンを推定する。
- 小さなヒントや制約・条件から、全体の構造を帰納的に導き出す
- 情報整理
- 与えられた情報を視覚的に整理し、それを元に答えを導く
- 抽象から具体へ
- 部分的な情報を使い、抽象的なパターンを発見し、それを具体的な解答に落とし込む
【問題4.5.6解説】
-
- 問題4
- オープンキャンパスでの説明役の配置を、特定の条件に従って決める問題。4つの建物と所属、出身地の組み合わせを条件に従って配置する
- 複数の制約条件を整理しながら、可能な組み合わせを検討し、合理的な答えに導く必要がある
- 問題4
- 複雑な条件を論理的に処理し、情報を効果的に使って推論を進める力
- 問題5
- 16の都市を一筆書きのようにすべて一度ずつ訪れ、元の都市に戻る経路を求める問題。都市間の接続を示す図から最適な経路を見つける。
- 問題を整理しながら論理的に経路を推測する力(すべての道路を一度だけ使用するという条件を満たしながら推論を重ねる)
- 問題6
- 9つの水槽間で水がどのように流れているかを求める問題。水の流量が一定であり、各水槽に入る量と出る量が等しいという条件のもとで、水の流れを計算する。
- 流入・流出のバランスを保ちながら、各水槽間での水の流れを計算するため、水量の保存という物理的な法則を使って、複雑なシステムの各部分を順に解決していく力が必要になる。情報の整理力と推論力が求められる。
【解答例】
過去問題4、5、6に共通する構造は、複雑な情報を整理し、論理的に推論して問題を解決する力を測るものである。これらの問題では高度な数学的計算能力が必要とされるわけではなく、解答に至るまでの過程が重要視されている。すなわち、問題に含まれる条件やパターンを発見し、それをもとに全体の解を導き出す力が試されている。受験生に求められている知的能力は、問題の本質を見抜く問題発見能力、次に部分解を全体に拡張する抽象化力、そして最終的に得られた解を具体的に適用する具体化力である。また、与えられた情報を正確に整理し、論理的に処理することで、現実世界の問題解決にも応用できる柔軟な思考力が期待されている。
設問3)
今から4年後の2028年2月に、湘南藤沢キャンパスで新しい大学入試のあり方を問うコンテストが開催されることになりました。環境情報学部に入学してからあなたが発揮してきた思考の特徴が評価され、あなたがそのコンテストの出場者に選ばれました。そのコンテストでは、新しい大学入試の土台となるようなプロトタイプ(試作品) としてのミニ試験を提案します。コンテストの当日には提案されたそれぞれのミニ試験を環境情報学部の 1年生5名ずつが受験します。
そしてすべてのミニ試験は以下の4つの要件を満たす必要があります。
[要件1]設問1)および設問2)で解答した知的能力に加えて、あなた自身の思考の特徴を発揮できること
[要件2]本番の入試では多くの入学希望者の中から合格者を選抜する必要があるため、
ミニ試験もそうした働きを備えるべく、受験する5名のある知的能力が何かしらの基準を上回っているかを調べるか(数値化する)、もしくはその5名をその知的能力の順番に従って並べ(相対化する)られること
[要件3]そしてその数値化や相対化の作業を行うにあたって、第三者の誰かもしくは何かが採点や評価をしたり、受験者がお互いに比較したりする等の仕組みも考えること
[要件4]慶應義塾大学の環境情報学部が実施する入学試験(この一般選抜および総合選抜(AO入試)など)と全く同じ形式は避けて新しい形式を考えること
設問3-1)
①設問1)および②設問2)で解答した知的能力、③あなた自身の思考の特徴を簡潔に数文字から20文字程度で解答欄3-1①、3-1②、3-1③に書いた上で、そのミニ試験の出題意図を300字以内で解答欄3-1④で述べてください。
【解説】
新しい大学入試のあり方を提案し、受験生がこれまで発揮してきた知的能力や思考の特徴を活かし、それを基にした「ミニ試験」を設計し、その出題意図と試験内容の具体的な流れを説明することが求められている。
- 設問1で解答した知的能力
- 不確実な状況における課題発見能力や、複雑な情報を整理し正確な判断を下す力。
- 設問2で解答した知的能力
- 得たデータをもとに、論理的かつ実践的な解決策を考える能力や実行力。
- 自分自身の思考の特徴
- 柔軟な発想力、社会問題への関心、データ分析力、、、
これらの3点を踏まえ、次に述べるミニ試験がどのような意図を持っているかを説明する。ここでは、どのような知的能力を測ろうとしているのか、試験を通じて評価する目的が明確に説明されている必要がある。例えば、受験者が不確実な状況の中で複雑な問題を整理し、データを用いて実現可能な解決策を提示する能力を評価するなど。
【解答例】
①不確実性に対処できる柔軟な思考力
②複雑な情報を整理し重要な要素を抽出して正確に判断できる能力
③課題の解決策を社会で実践するための応用力
ミニ試験の出題意図は、アフリカなどの途上国における自然災害や紛争が発生している仮想地域に対して、受験者がデータ分析力、危機管理能力、そして実践的な問題解決力を発揮することを評価するものである。この試験では、受験者はAIが提供する地形、気象、人口移動などのリアルタイムデータを基にして、支援計画を策定する過程を通じて、課題発見能力と迅速な意思決定力が問われる。特に、限られた時間の中で、効果的な資源配分や避難計画を策定する柔軟な思考力が重要とされる。
設問3-2)
そのミニ試験の内容を具体的に説明してください。例えば論述試験で用いる資料や学科試験や実技試験の問題の詳細まで書かれている必要はありませんが、どういった分野のどのような資料や問題や実技を組み合わせてどのような知的能力を測り、どのような仕組みでその能力を数値化もしくは相対化するものかを述べてください。解答には図や絵を用いても構いません。
【解説】
ミニ試験の具体的な内容や評価方法について説明する。どのように知的能力を数値化したり相対化するのか、さらにその評価がどのように公平に行われるかを考慮することが求められる。
・解答までの流れ
- 試験のテーマ設定
- テーマを明確にする。
- 試験の流れの設計
- 試験のステップを具体的に説明する
- 情報提供→分析→問題解決策の立案→プレゼンテーション。
- 試験のステップを具体的に説明する
- 評価基準の設定
- 各段階でどの能力を評価するか(情報整理力、分析力、提案力など)。
- どの基準で受験者の能力を評価するか(データ分析の正確さ、解決策の実現性、提案の創造性など)
- 解決策の現実性・持続可能性も評価対象にする。
- 数値化・相対化の仕組み
- 受験者の成果をどのように数値化するか、もしくは相対評価するかを説明する。
時間が限られているため、自分の興味関心があるテーマや考えやすいテーマで書くこと。
設問1,2で問われたことと紐付けながら解答を考える。
【解答例】
このミニ試験の内容は、仮想地域における危機的状況に対処するため、受験者がデータを活用し、迅速かつ実効性のある支援計画を立案するプロセスを評価する形式である。試験は湘南藤沢キャンパスで行われる。
試験の流れとして、まず受験者には仮想地域の基本情報が提供される。この基本情報には、地理的状況、経済的背景、人口統計などが含まれており、受験者はこの情報を基に、地域の現状と課題を把握する。次に、AIが提供する最新のリアルタイムデータを活用し、自然災害や紛争によって引き起こされる危機に対処する計画を立案する。このデータには、天候変動、人口移動、被害規模の予測などが含まれ、受験者はこれらのデータを活用して、緊急支援計画を策定することが求められる。例えば、現在紛争が進行中の南スーダンの仮想シナリオが設定される場合、受験者は、どのようにして限られた資源を最適に配分するか、また避難ルートを確保するか、さらにどの地域や住民を優先して医療支援を行うべきかといった判断を下す必要がある。AIは、これらの決定に対してフィードバックを提供し、受験者はそのフィードバックを基に計画を改善することで、柔軟な対応力とデータ駆動型の判断力が試される。
評価は、以下の3つの側面に基づいて行われる。第一に、受験者がAIによるデータを正確に読み取り、状況を的確に分析できるかが評価される。第二に、策定した計画の実行可能性や迅速性が評価の対象となる。短期間で支援を行う場合に、いかに効果的な手段を選び出せるかが重要視される。第三に、長期的な視点から支援の持続可能性を考慮しているかどうかも評価基準に含まれる。これは、ただの一時的な支援ではなく、地域全体の復興や安定を見据えた提案が求められるという意味である。
試験の最終段階では、受験者が自身の支援計画をプレゼンテーション形式で発表し、他の受験者や試験官からのフィードバックを受ける。これにより、受験者が自分の提案を客観的に見直し、さらに改善する力が問われる。AIと人間の協働による現実的な問題解決を重視し、知識の応用力、判断力、実行力を包括的に評価する新しい形式の試験であるといえるだろう。
メモ
過去問題1 1993年度
「科学の知」
未来の知はどうあるべきかについて君自身の考えを述べる
論理性・普遍性・客観性をもつ抽象的な「科学の知」⇔多様な意味を担う事物に囲まれて他者と相互に影響し合いながら直感と経験を類推を積み重ねて創出する体性感覚的な地である「臨床の知」
科学の知が強力で支配的に見え得てもそれは人間の地の一つの中にしか過ぎない
過去問題2 1997年度
21世紀における「知識と情報」
情報に詳しいが何も考えない人種、実践知のなさ
つもり知識の批判
情報社会だからこそ情報に溺れずに常に内政し続けてゆくことが無限の可能性
過去問題3 1995年度
変革の時代における転換期を迎えている
自然界では不確定性が状態であり、不確定性な時代
秩序せいと不確定性の相互関係
深く的ゆえに可能となる創造性や生産性に着目しそれを受け入れられるような姿勢を持つことが大切なのではないか、不確実性こそが無限の可能性を持っている
知的心構えもあるあらゆるものが考えられるが明確に示す
設問2)
過去問題4、5、6は、環境情報学部または総合政策学部の過去の入学試験で出題された数学の問題とその解法の例です(ただし解法はひとつとは限りません)。これらは高度な高校数学の計算手法を身につけていなくても正解できる問題ですが、これらの問題には通底する出題意図があります。受験生のどんな知的能力を測ろうとしてこれら問題を出題したのでしょうカ、。過去問題4、5、6の3つの問題と解法例から、これらの問題に共通する構造、受験生に求めている知的能力について考え、300学以内で記述しなさい。
(この設問では引用したそれぞれの数学の問題について解答する必要はありません)
設問3)
今から4年後の2028年2月に、湘南藤沢キャンパスで新しい大学入試のあり方を問うコンテストが開催されることになりました。環境情報学部に入学してからあなたが発揮してきた思考の特徴が評価され、あなたがそのコンテストの出場者に選ばれました。そのコンテストでは、新しい大学入試の土台となるようなプロトタイプ(試作品) としてのミニ試験を提案します。コンテストの当日には提案されたそれぞれのミニ試験を環境情報学部の 1年生5名ずつが受験します。
そしてすべてのミニ試験は以下の4つの要件を満たす必要があります。
[要件1]設問1)および設問2)で解答した知的能力に加えて、あなた自身の思考の特徴を発揮できること
[要件2]本番の入試では多くの入学希望者の中から合格者を選抜する必要があるため、
ミニ試験もそうした働きを備えるべく、受験する5名のある知的能力が何かしらの基準を上回っているかを調べるか(数値化する)、もしくはその5名をその知的能力の順番に従って並べ(相対化する)られること
[要件3]そしてその数値化や相対化の作業を行うにあたって、第三者の誰かもしくは何かが採点や評価をしたり、受験者がお互いに比較したりする等の仕組みも考えること
[要件4]慶應義塾大学の環境情報学部が実施する入学試験(この一般選抜および総合選抜(AO入試)など)と全く同じ形式は避けて新しい形式を考えること
メモ
1993年度
「科学のち」
未来の知はどうあるべきかについて君自身の考えを述べなさい
科学の知が強力で支配的に見え得てもそれは人間の地の一つの中にしか過ぎない
1997年度
21世紀における「知識と情報」
情報に詳しいが何も考えない人種、実践知のなさ
つもり知識の批判
情報社会だからこそ情報に溺れずに常に内政し続けてゆくことが無限の可能性
1995年度
変革の時代における転換期を迎えている
自然界では不確定性が状態であり、不確定性な時代
秩序せいと不確定性の相互関係
深く的ゆえに可能となる創造性や生産性に着目しそれを受け入れられるような姿勢を持つことが大切なのではないか、不確実性こそが無限の可能性を持っている
知的心構えもあるあらゆるものが考えられるが明確に示す
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