慶應義塾大学 法学部 小論文 2013年 解説

・ 問題文

 次の文章は、日本における内閣制度発足当初の状況について論じたものである。当時の内閣制度が抱えていた問題点を三○○字程度にまとめ、これを踏まえて、現在の内閣総理大臣のリーダーシップのあり方について、あなたの考えを自由に論じなさい。

・ 問題の解き方

 5STEPsで解くべき問題。法学部独自の要素としては、300字〜400字程度で書くことを指示された長い要約問題があるため、必要に応じて結論・根拠・具体例か5STEPsの議論整理パートか簡易的な5STEPsを用いた要約を記す必要がある。その上でそれら全体を議論の整理とし、5STEPsで議論を展開する。

・ 模範解答

議論の整理……

 結論……

内閣制度発足当初の問題点は藩閥政治の横行である。

 根拠……

なぜなら、内閣総理大臣は内閣全体を指揮しなければならない存在であるにも関わらず、旧知の仲である藩閥の構成員を中心に内閣を構成することで、本来あるべき緊張感が欠如するためである。

 具体例……

例えば、内閣制度発足当初の十年間は、薩長四人ずつ計八名の「元勲級指導者」ー伊藤博文・黒田清隆・井上警・山県有朋・松方正義・西郷従道・山国顕義・大山魔ーによる「政権寡占クラブ」が成立した。仕事を厳しく管理するという点から見ると、こうした仲間たちによる馴れ合いの政治が良い結果をもたらすことは極めて難しいだろう。

問題発見……

ここで、今日の政治に目を向けてみると、例えば安倍晋三首相は長州藩・山口県の出身である。彼もまた、内閣に元々からの友人を登用するなど、極めて内向きな政権運営で良く知られた人物である。このように、仲間内だけで人事を決めることにより、政治を行う上での原則ではなく、人間関係が最も重視される、極めて反知性主義的な政権運営がなされるというのが今日の内閣が抱えている問題である。

論証……

法治主義や基本的人権の否定を始めとする、今日の内閣の混乱は、こうした政権内部での反知性主義の蔓延によって起きている。もともとの人間関係が強固である場合は、それぞれの主張が法的に誤っていることを指摘することはしばしば困難になるからである。こうした背景から、今日では法の歴史から見るとにわかに信じがだい議論が交わされることも一度や二度では亡くなってしまった。
たとえば、「西洋から来た基本的人権という考え方の悪影響が……」という表現が憲法改正草案についての議論で噴出したが、こうした議論はそもそもの憲法の存在意義を否定するものでにわかには信じがたい。他にも法治主義の否定など、このような議論は枚挙に暇ない。
このように友人を中心とした組閣が可能になったのは、派閥の力が弱まったためであり、その根本的な原因は政党助成金と小選挙区制の導入にある。小選挙区制により各選挙区の各政党から当選できる議員が一人ずつになったこと、また政党助成金により派閥よりも党本部の資金力が充実したことが、与党内に首相への抵抗勢力が生まれなくなった根本的な原因である。

解決策or結論……

こうした事態への解決策or結論は、各政党が各選挙区から複数の当選者を出すことができる大選挙区制の導入と、政党助成金の廃止である。これにより派閥の力が強まれば、閣内でも活発な議論が生まれ、結果として現在の内閣を覆う反知性主義は一掃されるだろう。

解決策or結論の吟味……

派閥の再興により、今まで以上に大胆な改革への障壁は増えるだろうが、派閥の存在は改革の実現可能性にはほとんど影響がないという見方もある。たとえば、小泉政権下ではあれほど旧田中派の影響力が強かったにも関わらず郵政民営化を成し遂げている。このように改革が成就できるか否かは、内閣総理大臣自身のリーダーシップに依る部分が大きい。

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