慶應義塾大学 法学部 小論文 2007年 解説

・ 問題文

以下の文章を読み、そこで展開されている「法」と「政治」と「歴史」の三者の関係を五○○字程度で要約し、それと関連づけながらあなた自身の考えを述べなさい。

・ 問題の解き方

 まず、「法」と「政治」と「歴史」の三者の関係を五○○字程度で要約するということが極めて難しい。この制約を果たすためにまず大切なことは、それぞれの定義を明確にすることである。このそれぞれの定義を明確にする際に重要になるのは、同じフレームワークでそれぞれの定義を固めることである。
 その上で、5STEPsを展開していけば、課題文中の文章内容を沿った小論文を書くことができる。
 だが、問題そのものも難しく、”「法」と「政治」と「歴史」の三者の関係を五○○字程度で要約し、それと関連づけながらあなた自身の考えを述べなさい。”このように書いてある場合に、どのような問題提起をすればいいか分からないケースも多々ある。大切なことは、「法」と「政治」と「歴史」の三者の関係における議論を整理し、問題を提起し、その原因を分析し、解決策or結論を書き、それを吟味することである。こうした問題発見型の小論文学習こそが正しい問いを立てる能力の向上に繋がる。

・ 模範解答

議論の整理……

まず、筆者が述べている「法」「政治」「歴史」という言葉の定義について整理したい。ここで筆者が述べている「法」とは、大きな秩序を守るために存在する。つまり、大きな秩序のためには小さな真実の真偽は問わないのが法である。また「政治」は、法と制度をなかだちに行われる。この「政治」もまた、大きな秩序のためには、小さな真実の真偽は問わないという性質を持っている。一方「歴史」については、もちろん正しい歴史的真実というのはありながらも、それぞれの政治的正義に基づき、そのあり方がそれぞれの立場によって変わる過去についての記述である、というような定義付けをしている。
この「法」「政治」「歴史」の関係が端的にあらわれているのが、日本の戦後賠償問題である。日本が戦争中に行った数多くの蛮行とされる行為が、どの程度「歴史」の上で真実であったかは定かではないが、戦争中に旧日本軍から支配された国々は彼らなりの「政治」的正義に基いて、現在の国際「法」に基づく賠償を要求している。日本政府もまたどの程度まで彼らの主張が真実であるかは度外視し、そうした要求に応え続けてきた。こうした関係は、まさに大きな秩序を守るために小さな真偽を問わない姿勢といえよう。

問題発見……

無論、大きな秩序を守るためには、歴史の真実に目を瞑り、それぞれの政治的正義に配慮しながら、法的解決を図ることは必要不可欠である。現に日本の敗戦後の数十年はそういった歴史であった。だが一方で、そうした妥協に対する国民の不満が、日本における特に特定のアジア人種に対する排外主義につながってきたことも事実である。

論証……

日本における排外主義がいまだに健在で、かつドイツのようにそうした排外主義に対する法的規制もないのは、日本人の抑圧された民族感情が原因であるといえる。
日本は、戦後の歩みを唯一の被爆国としてスタートした。長崎と広島の原爆による犠牲者は数十万人を越え、米軍による民間人に対する空爆も計り知れないほど甚大な被害を日本に及ぼした。にもかかわらず、日本はその圧倒的な力関係の違いから米軍に対して抵抗することができないばかりか、諸外国からも謝罪と賠償を強く求められ続けてきた。
こうした鬱屈した国民感情が、今日の日本においては、特定のアジア民族に対する排外主義へとつながり、そうした動きへの法的整備も十分ではない状態を生み出した。

解決策or結論……

こうした排外主義につながったのは、本来ならば米国に対して行うべき抗議感情が、その行き場を持て余した結果であるともいえる。アメリカの戦争犯罪には目を瞑るという一種法的な解決は、日本の戦後諸問題の解決には必要不可欠ではあったが、一方なぜ私達はアメリカに対し沈黙せざるを得なかったかも総括をした上で、そうした鬱屈した根性の矛先が旧植民地圏に向かわないように細心の注意を払うべきである。

解決策or結論の吟味……

こうした周辺諸国に対する思慮深さが、結局のところそれぞれの国の政治的正義に対する配慮につながり、日本の歴史問題の法的解決を容易にするのである。

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