慶應義塾大学 法学部 小論文 2000年 解説

・ 問題文

一九七○年代に書かれた次の文章を読んで、特定の社会問題に焦点を合わせながら、あるいは あなた自身の経験にもとづきながら、自らの考えを自由 に述べなさい。

・ 問題の解き方

 5STEPsで書いていく。

・ 模範解答

議論の整理……

筆者は、現在日本の社会状勢の混乱は、父性的な倫理観と、母性的な倫理観との葛藤の中で生まれているとしている。本来であれば、私的な空間には母性的な倫理観があり、一方公的な空間には父性的な倫理観があって然るべきであるにも関わらず、日本社会ではえてして母性的な倫理観が公的空間においても跋扈する傾向がある。

問題発見……

たとえば、本来ならば冷厳とした利害得失の判断の上で行われるべき公共事業が、とかく一個人の思いを尊重した意思決定によって為される事例がある。一例としては、新国立競技場についての議論がある。五輪の実行委員会の会長である有力な政治家の思いを最大限尊重して計画立案をした結果、総工費は当初予定の二倍以上にまで膨れ上がり、結果世論の猛反発を受けるまでその計画が野ざらしにされてきた。

論証……

このような情緒的な意思決定がしばしばなされる原因は、日本社会の倫理観が欧米の倫理観と比較し、相当、内部に甘く、外部に厳しい構造を採用しているためである。
例えば、日本社会においては、課題文中の交通事故の事例にも見られるように、自らと同じ倫理観を採用している人間に対しては極めて甘いが、自らと異なる倫理観を採用している人間に対しては極めて厳しいという特性がある。
こうした特性が、組織内部における公私混同を許す姿勢を生み、そうした姿勢は倫理観といえるほどに定着し、異なる倫理観(つまり、この場合ではあれば公私の峻別)を採用する人間を排除する方向にまで至る。
こうした例の一つとしては、公立学校における教職員の労働組合運動にある。本来公務員は法律でこうした運動を禁じられているにも関わらず、こうした運動をしない講師がむしろ排除される傾向さえある。

解決策or結論……

こうした倫理観の混乱による公私混同に対しては、妥協のない徹底した処罰で対応すべきである。日本社会全体としては、こうした倫理観の混乱は頻繁に見られる事例だが、まず管理者は自ら襟を正し、公私を峻別した上で、公私混同をする構成員を徹底的に排除すべきである。

解決策or結論の吟味……

日本社会は、異なる倫理観に厳しい社会である。よって、組織の長や、組織のあらゆる構成員が公私混同に厳しければ、必然的に組織全体が公私混同に厳しい組織ができる。日本の社会情勢の混乱の真の原因は、異なる倫理観に厳しい日本型社会ではなく、そうした社会において公私混同が許される組織を設計することにこそあるのだ。

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