慶應義塾大学 法学部 小論文 1999年 解説

・ 問題文

次の文章は、戦争の責任と戦後の処理の問題に ついて、一つの考え方を述べたものである。筆 者の考え方を要約したうえ、あなたの考えるところを自 由に論じなさい。

・ 問題の解き方

 5STEPsで書いていく。

・ 模範解答

議論の整理……

筆者は、日独ともに、戦中の戦争犯罪や戦後の高度経済成長などで同じような歩みを重ねてきたにも関わらず、日本とドイツの戦後処理のあり方があまりにも異なるという事実を整理している。

問題発見……

こうしたドイツと日本の戦後処理の違いがどのように生まれ、日本がドイツのように戦後処理の問題を清算するためにはどのような方策が考えられるのかをここでは整理したい。

論証……

こうした戦後処理の違いの背景には、戦後処理を行う主体の性質が異なることがまず考えられる。
なぜなら、ドイツにおけるナチス政権とは一種のクーデターによって生まれた政権であり、彼らは旧来からドイツの政界を牛耳っていたわけではなかった。そのため戦後賠償の主体となったのも、ナチスドイツとは関係がない政府の構成員であった。
一方で、日本における軍部政権は、旧来から政界の主流派であった勢力、あるいは旧来的な政治制度の延長線上に生まれ、また戦後も軍部が失脚した以外にはほとんど変わらない構成員が政権の運営を担当してきた。
例えば、日本においては、A級戦犯の被疑を掛けられた官僚が後に総理大臣になる事例もあるなど、人材面で戦前に活躍していた官僚が非常に多く戦後も登用されてきた。このような権力の連続した継承が、戦中の体制を正当化し、戦後賠償を送らせてきた一つの背景としてあった。
また、戦後の日本においても、男尊女卑的な考え方が色濃く、従軍慰安婦を調達した元総理大臣や財界人が、そうしたことを嬉々として回顧録に掲載するほどであった。こうした儒教的な価値観の影響下にあったことも、日韓の戦後賠償問題の解決を長引かせる要因の一つとして存在した。
こうした権力の連続や、儒教的価値観の影響が残った原因としては、まず第一には封建的な天皇制制度の存続がある。第二次世界大戦時、法律上の最高責任者は、ドイツの場合はアドルフ・ヒトラーであり、日本の場合は紛れも無く天皇陛下であった。ここで、ヒトラーは自殺したにもかかわらず、天皇は命を取り留めたばかりか、その制度そのものさえ存続したため、今日においても日本の戦後賠償問題は解決せずにいる。

解決策or結論……

天皇陛下はヒトラーとは異なり、戦中以前より日本国家統合の象徴であった。よって、天皇制を今から廃止する選択肢は現実的ではないだろう。
日本の戦後賠償問題については、被害者・加害者ともに高齢で存命者は年々少なくなっている。そのため、天皇陛下ならびに首相など政治家がが被害にあった諸外国を刺激しないよう十分注意をしながら、損害賠償額はなるべく抑制しつつも出来うる限りの賠償をすることで彼らを刺激しないことがまず大切である。

解決策or結論の吟味……

こうした取り組みの中で、現在の体制を維持できるようにソフトランディングするのが、日本国内からの反発を抑え、諸外国の国民からも尊敬されうる国家になる上で最善の解決策or結論だろう。

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