慶應義塾大学 法学部 小論文 1994年 解説

・ 問題文

次の文章を読んだ上で、筆者のいう「すき間」の意義を、あなたの実生活に即して論じなさい。

・ 問題の解き方

 5STEPsで書いていく。

・ 模範解答

議論の整理……

筆者は、近代の日本では拝金主義が跋扈し、効率を第一にしたため、本来健全な人格形成のためには必要な「すき間」が亡くなってしまったと述べている。その上でそうした「すき間」を建築の中で取り戻し、そうした空間の中で思索を巡らせることこそが次世代を生きる若者にとって真に必要な時間であるとしている。

問題発見……

私も、こうしたすき間の欠如による歪んだ人格形成の一例に触れたことがある。
たとえば、リビングを通らずに子供部屋に入ることができる構造の家屋は、確かに空間の有効利用という面では効率的だ。だが、親と接することなく子供が個室に逃げこむことが出来るため、親子間でのコミュニケーションがなくなり、その結果、ひきこもりなどあらたな問題を生み出す結果となった。

論証……

こうした構造の住居が、外にでることが出来ない子供を生むのは、こうした住居にはすき間としてのリビングが存在しないからである。こうした住居において、リビングはあくまでもひとつの分離された空間であり、「すき間」や「路地」のような人々が何のきっかけもなく心を通わせることができる場所ではないのである。
こうした場所がないことが、子どもたちに玄関から自室まで何者の干渉もなしに滑り込む自由を与える。だが、そうした自由は結局のところ、他者との関わりを極限まで減らすことになり、最終的には外に出るのも怖いという極めて内向きな子供を生み出すことになる。

解決策or結論……

こうした内向きな子供を産まないためには、まず家屋の設計の際にいくつかの工夫をすべきである。たとえば、玄関から家に入ると後に(断熱性の問題があるので多少の間仕切りはするにしても)、のビングを通らなければ自室に入ることができない構造を作るべきである。また、食事はリビングでしか取れないような仕組みも合わせてつくるべきである。部屋での飲食ができる構造(ゴミ箱の常備や、不必要な机の常備)を行うと、子どもたちが個食に走り、これが人格形成上救いがたい影響を及ぼすことがある。

解決策or結論の吟味……

こうした住居の構造を取ることは、従来フェミニズムの影響を受けた建築家などからは強い批判を受けてきたが、こうした一種プライバシーを軽視した家造りをすることによる効用もまた大きい。子どもたちは外に出ることができる子供になり、また母親も父親もいつまでも相手を尊重する緊張感を持って生活できるようになる。このように住んでいる人の利害を考えても、こうしたリビングを中心とした家造り、もっといえば「すき間」を中心とした家造りは意義深いものがある。

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