■ 文学部 2000
・ 問題文
(問1)自己と他者の補完性を著者はどのように考えているのかまとめなさい(三○○字以内)。
(問2)「他者の他者としてのじぶん」とは何か述べなさい(四○○字以内)。
・ 問題の解き方
問一については字数の問題と設問の性質から、結論・根拠・具体例で書くことが最もふさわしい問題である。基本的に要約系問題は結論・根拠・具体例のフォーマットを用いることが多い。
問二の「他者の他者としてのじぶん」という表現は、慶應文学部が好む題材で2014年でも出題がある。「他者の他者としてのじぶん」とは、他者から見た時他者である自分に着目する考え方である。これは論述系問題であるため、5STEPsを用いる。文学部の問題においては、解決策or結論を模索する問題ではないため、解決策or結論ではなく、その問がもたらす結果に着目して議論を組み立てることに注意しなければならない。
・ 模範解答
問一(254文字)
結論……
自己と他者の補完性とは、自らが他者の他者であることによって、自らのアイデンティティーを確立しようとする動きのことである。
根拠……
ここでの、自己というのはあくまでも他者との相対的な位置関係によって確立されるものである。
具体例……
たとえば、患者の居ない医師や看護婦はありえないし、教え子の居ない教師というのもありえない。このように、人は他者の存在によって、自分のアイデンティティーを確立する。一方、このように自分の立ち位置を明確にできる他者が居ない場合には、人間は自らがどのような人間であるかということを知ることができない。
問二(386文字)
議論の整理……
大方の人は、自分というのは一つの別け隔てなくかけがえのない存在であると考えている。だが、実際には自分には「絶対的な自分」と「他者の他者としての自分」という二つの側面がある。前者はなにがあろうとも変わらない自分自身の姿であり、後者は他者から見た場合の自分自身の立ち位置である。
問題発見……
ここで、多くの人が「絶対的な自分」だと考えている自分像でさえ、実のところ「他者の他者としての自分」であるという問題がある。
論証……
例えば、あなたはどんな人間ですか?という質問を投げかけられたら、看護師である、あなたの妹である、というような回答が寄せられるだろう。これらはすべて「他者の他者としての自分」である。
結果……
このように、自分が絶対的な自分自身だと考えている自分像の多くが、実際には他者との関係に関係付けられている。
結果の吟味……
筆者はこうしたパラドクスのことを「他者の他者としてのじぶん」として表現している。
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