慶應義塾大学 文学部 小論文 2005年 解説

・ 問題文

設問1 なぜ傍線部のパラドクスが生じることになるのか、筆者の考えを三○○字以上三四○字以内でまとめなさい。
設問2 つぎに掲げるのは、この文章のすぐ後に筆者が引用している、ある少女の投書です。この投書が仮に新聞の相談 コーナーに寄せられたものであって、あなたがその回答者ならば、この相談に対してどのように回答しますか。三六○ 字以上四○○字以内で書きなさい。
私は、自分らしさというのがまったくわかりません。付き合う友達によって変わってしまう自分、気分によって変わ ってしまう自分を考えると、いったい何が本当の私なのかわからなくなります。自分には個性がないんじゃないかとずっと悩んでいます。

・ 問題の解き方

 SFC型の問題発見型問題と違い、文学部の場合は、問題発見→論証→結果という形で書くことが多い。問一はそういった問題である。また、字数が少ないため、議論の整理と結果の吟味は割愛している。問二についても、同じような構成を採っている。

・ 模範解答

設問1

近年、自分の個性は普遍的実在であるはずなのに、それを実感できない断片化した自分というパラドクスに悩む人が多いという。
筆者は、こうした悩みの背景として、個々人が、不変であることが多い明文化可能な信念や理念によってではなく、絶えず変化する生理的欲求をベースとして行動を取るためであると考えている。
たとえば、人に優しくすることが自分の死後の幸福を保証するという価値基準を持っている人間は常に誰に対しても優しく接するが、一方生理的欲求にしたがって、その時々の気分で行動を変える人にはそうした個性は期待できない。このように生理的欲求を重視した生き方は、自分の個性は普遍的実在であるはずなのに、それを実感できない断片化した自分というパラドクスを生み出すと筆者は主張している。(334文字)

設問2

多くの人が、自分にはかけがえのない自分らしさがあるとかんがえているが、こうした考え方は正確ではない。自らの信念を忘れずに生きている人間には、不変の自分らしさがあるが、自らの生理的欲求の赴くままに行動している人間の「自分らしさ」とはその時々で大いに変わるものである。
なぜ、その時々で自分のあり方がかわるのかというと、状況や話す相手など以上に強い自分自身の意思や信念をもっていないからである。そうした人が、その時々で自分の意思だと考えているものは、多くの場合生理的欲求でしか無いことが多い。
こうした行動基準を持つためには、まずはこうでありたくはない自分を明確にすることである。自己の行動の中で、否定すべき側面をすべて洗い出し、改善することによって、自分がどうありたいかを明確にすることができるし、そうした週間を継続し続ければ、「理想の自分像」が自分自身の個性になる。(384文字)

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