慶應義塾大学 文学部 小論文 1999年 解説

・ 問題文

(問1)モシ族における「もの」と「ひと」の関係を要約して述べなさい(三○○字以内)。
(問2)自分たちと異なる文化を理解するための心構えを、筆者の見方をとり入れながら、具体的な事例をまじえて述べなさい(四○○字以内)。

・ 問題の解き方

 わかりにくい表現ではあるが、全体として「要約して述べなさい」問題と「具体的な事例を交えて述べなさい」問題では、求める解答が異なる。
 問一のような要約して述べなさい問題については、結論・根拠・具体例で書く。一方、問二のような具体的な事例を交えて書きなさいというのは、議論を整理し、問題を提起し、原因を分析し、解決策or結論を提起し、解決策or結論を吟味する5STEPsの形で議論を進める。文学部では解決策or結論を模索する形の5STEPsを用いることは珍しいが(一般的に文学部では結果を模索する形の5STEPsを用いることが多い)問二は数少ないそういった事例の一つである。

・ 模範解答

論文模範解答

問1

結論……

モシ族における「もの」と「ひと」の関係とは、人間以外が人間のために犠牲になるのは当然であるという極めて人間中心主義的な価値観である。

根拠……

そもそもモシ族の人々には、「自然」という概念がない。モシ族の人々は、世界の根源的な力である「ウェンデ」に対して生贄を捧げることで、人間の生活領域外にある「ウェオゴ」から生活に必要な人間以外のものを収奪することによって生計を成り立たせている。

具体例……

具体的には、モシ族の人々は、動物を屠殺する仕事も幼児に任せることがある。こうした、我々の思考の枠組みからいうと残酷な仕事でも何の躊躇もなく幼児に任せるのは、彼らの思考の枠組みからすればそれが当然のことであるからだと言える。
(300字)

問2

議論の整理……

私達は、しばしば自らの思考の枠組みで、私達と異なる文化を理解しようとする。一方、作者は自らの思考の枠組みではなく、異なる文化そのものの思考の枠組で、異なる文化を理解することの大切さについて述べている。

問題発見……

とはいえ、私達が異なる文化の持つ思考の枠組みで、異なる文化を把握することは甚だ困難なことである。

論証……

私達が、異なる文化の持つ思考の枠組みで、異なる文化を把握することが難しいのは、私達が常にそれぞれの文化の表層的な部分しか理解できないためである。たとえば、モシ族の人々が屠殺に対し何らの躊躇を感じないことについても、彼らの思考回路を表層的に理解することを通じてしか理解できない。

解決策or結論……

ここで、多くの議論に欠けているのは、こうした思考回路が形成されるまでのそれぞれの文化が抱えてきた環境要因への理解である。こうした要因があれば、このような文化になるのも理解できるというような環境要因が理解できれば、私達が他の文化をより理解できるようになるだろう。

解決策or結論の吟味……

人間生活の本質的かつ根源的目的が子孫の繁栄にあるかぎり、同じような環境要因を投入した際には、同じような解決策or結論が出てくる可能性が高い。もし仮に同じような解決策or結論が採用されなかっにせよ、解決策or結論が提案・実行されるまでの理路は、環境要因に対する理解さえあれば十分理解可能だと私は考える。
私達は、しばしば自らの思考の枠組みで、私達と異なる文化を理解しようとする。
とはいえ、私達が異なる文化の持つ思考の枠組みで、異なる文化を把握することは甚だ困難なことである。
私達が、異なる文化の持つ思考の枠組みで、異なる文化を把握することが難しいのは、私達が常にそれぞれの文化の表層的な部分しか理解できないためである。たとえば、モシ族の人々が幼児を屠殺に用いることに対し何らの躊躇を感じないことについても、彼らの思考回路を表層的に理解することを通じてしか理解できない。
ここで、多くの議論に欠けているのは、こうした思考回路が形成されるまでのそれぞれの文化が抱えてきた環境要因への理解である。
解決策or結論が提案・実行されるまでの理路は、環境要因に対する理解さえあれば十分理解可能だと私は考える。

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第6章 モチベーションについて考えよう
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