慶應義塾大学 文学部 小論文 1996年 解説

・ 問題文

(間1)三つの文に描かれた生き方の共通点と相違点を明らかにしなさい。(三百字以内で答えること。)
(問2)それぞれの文の筆者が対象をとらえる際の姿勢について、考えるところを述べなさい。(四百字以内で答えること。)

・ 問題の解き方

 問一は共通点と相違点とあるので、5STEPsの議論の整理のフォーマットを使うことが望ましい。このように共通点と相違点というふうに書く設問は珍しいが、この事自体が小論文の5STEPsの有用性を明らかにしている。
 問二はそれぞれの文の筆者が対象を捉える際の姿勢について、”考えるところを述べなさい”とあるが、これは論述問題である。述べなさいと書いてあると反射的に要約問題だと見紛うことがあるが、これはれっきとした論述問題である。なぜなら、”考えるところ(問題だと考えているところ)を述べなさい”という出題であるためだ。文学部としては珍しく解決策or結論を模索する形式の問題であるため、そのあたりは心して臨みたい。

・ 模範解答

問一

共通点……

三つの文章に書かれた生き方の共通点は、彼らは現実よりも理想を重視して人生を生きたことにある。別の言い方をすれば、見るべきものより見たいものを見て生きてきたと言っても良い。

相違点……

相違点に関しては、周囲の世界、あるいは全世界についてポジティブに捉えるかネガティブに捉えるか、そもそも世界などというものを甚だ関心を示さないかという点が、生き方あるいは世界の把握方法とでも言うべきものが異なっている。
たとえば、坂東玉三郎は周囲の世界に対するネガティブな感情を全世界にまで拡大しているし、尾形亀之助はそもそも周囲の世界に対してはポジティブに捉えながら、全世界というものについては気にかけるということも無い。一方、柴田収蔵については、全世界への関心はなみなみならぬものがあるが、周囲の世界についてはほとんど関心を示していない。
三つの文章に書かれた生き方の共通点は、彼らは現実よりも理想を重視して人生を生きたことにある。
相違点に関しては、周囲の世界、あるいは全世界についての把握方法とでも言うべきものが異なっている。
たとえば、坂東玉三郎は周囲の世界に対するネガティブな感情を全世界にまで拡大しているし、尾形亀之助はそもそも周囲の世界に対してはポジティブに捉えながら、全世界というものについては気にかけるということも無い。一方、柴田収蔵については、全世界への関心はなみなみならぬものがあるが、周囲の世界についてはほとんど関心を示していない。(258文字)

問二

議論の整理……

これらの課題文の筆者に共通してみられる傾向は、個人としての対象や対象が持つ感情を、絶対的な筆者の視点から解説をしているのみであることである。また、対象が持つそうした感情を持ちながらも大成功した人や大失敗した人などとの比較検討を通じた、対象の相対的なポジショニングが十分に取れていない部分にある。
Aは過去の後世者と対象を比較し、Bは対象のロールモデルとして山頭火を紹介し、Cは実用的な地図製作者を紹介しているが、こうした者と対象とのポジショニングを数字などを用いてより明確にすれば、彼らが客観的に見てどういった位置にあるのかが分かるだろう。

問題発見……

ここで問題なのは、筆者が対象を一種の玩具として扱っている部分である。

論証……

そうした表現は文章の多くの部分から感じることができる。たとえば、個人の悪癖をあげつらう部分などは代表的な事例である。

解決策or結論……

そうした部分に字幅を咲かず、対象を多くの事例の中でより相対化したりすることによって、より正確に対象の姿を捉えることができると私は考える。

解決策or結論の吟味……

こうした解決方法は、筆者個人が一個人を絶対的な筆者の視点から論じるよりは遥かに記述の正確性を担保するものであろう。
これらの課題文の筆者に共通してみられる傾向は、個人としての対象や対象が持つ感情を、絶対的な筆者の視点から解説をしているのみであることである。
Aは過去の後世者と対象を比較し、Bは対象のロールモデルとして山頭火を紹介し、Cは実用的な地図製作者を紹介しているが、こうした者と対象とのポジショニングを数字などを用いてより明確にすれば、彼らが客観的に見てどういった位置にあるのかが分かるだろう。
ここで問題なのは、筆者が対象を一種の玩具として扱っている部分である。
そうした表現は文章の多くの部分から感じることができる。
そうした部分に字幅を咲かず、対象を多くの事例の中でより相対化したりすることによって、より正確に対象の姿を捉えることができると私は考える。
こうした解決方法は、筆者個人が一個人を絶対的な筆者の視点から論じるよりは遥かに記述の正確性を担保するものであろう。(384文字)

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