慶應義塾大学 文学部 小論文 1994年 解説

・ 問題文

(問I) 【B】の文章においてダークスンは、機械仕掛け のカブトムシに対する態度を変化させている。この変 化は【A】の文章の著者の立場からみるとどのように説 明できるか、三○○字以内で述べなさい。
(問Ⅱ) 【A】の文章の著者の「心」に関する主張につい て、どのように考えるか、四○○字以内で述べなさい。

・ 問題の解き方

 問一については、ある程度Aの筆者の立場に即した上で書かなければならない問題であるため、書くことが難しい。慶應では時折MBA(経営管理学修士号・大学院)の入試などでこうしたある立場の人になり変わって書く問題が出てくるが、学部としてはかなり珍しい出題である。5STEPsで書くと齟齬が生じる可能性が大きいため、結論・根拠・具体例で書く方がいい。結論・根拠・具体例で書けば、結論さえ正しければ根拠・具体例については芋づる式に正しくなるため、文章を書く上で気をつけるべき点が減るためである。
 問二については、Aの筆者を批判する立場の問題であるため、むしろ5STEPsを用いて論じた方が分かりやすいだろう。
”述べなさい”とあると、えてして要約を書くものだと考えてしまう人がいるが、”どのように考えるか”という問題文は、”どのよう(な問題があると)考えるか”と言い換えることがてぎるため、5STEPsで書くべき問題である。

・ 模範解答

問一

結論……

Bの文章におけるダークスンの態度の変化は、Aの文章の筆者の、心の動きを機械化することで、心に近い機械を生み出すことは可能であるというAの文章の筆者の意見に沿ったものである。

根拠……

実際に、Bの文章において、ダークスンは、機械で作られたにすぎないカブト虫を退治することに対し、なみなみならぬ関心を注ぎ、実際その試みが少なくともダークスンに対してはある程度良く機能していると言える。

具体例……

たとえば、機械仕掛けのカブト虫を退治する際に、ダークスンは極めて感情的な反応を示している。具体的にいえば、殺す際にも抵抗を感じている。
Bの文章におけるダークスンの態度の変化は、Aの文章の筆者の、心の動きを機械化することで、心に近い機械を生み出すことは可能であるというAの文章の筆者の意見に沿ったものである。
実際に、Bの文章において、ダークスンは、機械で作られたにすぎないカブト虫を退治することに対し、なみなみならぬ関心を注ぎ、実際その試みが少なくともダークスンに対してはある程度良く機能していると言える。
たとえば、機械仕掛けのカブト虫を退治する際に、ダークスンは極めて感情的な反応を示している。具体的にいえば、殺す際にも抵抗を感じている。

問二

議論の整理……

Aの文章内で筆者は、人間の心の動きを再現する機械について言及している。人の心の動きをある程度把握をした上で、それをコンピュータープログラムに落とし込めば、人間の心の動きとほぼ同じ動きをしているコンピュータープログラムが作られるという考え方である。

問題発見……

こうした考え方は一面の真理ではあるが、このプログラムは人間の感情変化の仲で、もっとも大切な一つの側面を捨象している。

論証……

まず、こうしたプログラムを作る際に観測できる人間の心の動きというのは、喜怒哀楽でいえば、ポジティブな感情が多い。なぜなら、観測される側の人間は自らの評判のために良い人物を感じるからである。また、ネガティブな感情を観測できたとしても、その程度は極めて浅いものになるだろう。人生がそれによって破綻をきたすほどの変化というのは、人生においてそうそう無いためである。

解決策or結論……

このように考えると、やはり人の心をコンピューター化することは難しい。

解決策or結論の吟味……

このことから、いざというときの、自らを立て直す力などのタフさこそが、コンピューターでは再現できない人間が人間たる理由であるといえよう。
Aの文章内で筆者は、人間の心の動きを再現する機械について言及している。人の心の動きをある程度把握をした上で、それをコンピュータープログラムに落とし込めば、人間の心の動きとほぼ同じ動きをしているコンピュータープログラムが作られるという考え方である。
ここで、このプログラムは人間の感情変化の仲で、もっとも大切な一つの側面を捨象している。
まず、こうしたプログラムを作る際に観測できる人間の心の動きというのは、喜怒哀楽でいえば、ポジティブな感情が多い。なぜなら、観測される側の人間は自らの評判のために良い人物を感じるからである。また、ネガティブな感情を観測できたとしても、その程度は極めて浅いものになるだろう。人生がそれによって破綻をきたすほどの変化というのは、人生においてそうそう無いためである。
このように考えると、やはり人の心をコンピューター化することは難しい。

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