千葉大学 教育学部(社) 2002年 小論文 解答例

v0k02120

  • 設問

以下の文章で、筆者は「南北問題」の歴史的背景を説明する「かつてふつうに考えられてきた近代世界史の構図」に対して、「近代世界システム論」を主張しています。この文章を手がかりにして、綿織物工業から始まった産業革命期のイギリスと、後に植民地となったインドを事例として、「近代世界システム論」の特徴を説明しなさい。(1000字以内)

 

  • 答案構成

はじめに、議論の整理としてこれまでの近代世界史の構図の定義を述べる。次に問題発見としてこのような従来の考え方の問題点を述べて、同時にその根拠にも触れる。そして、解決策or結論ないしは従来の考えに対する反論として述べられる筆者の考えについて説明する。ここで「近代世界システム論」の特徴を具体的に述べれば良い。最後に、「近代世界システム論」の特徴については、結論と、結論の詳しい説明を具体例を交えながら述べるという形にする。基本的には5STEPSの議論の整理、問題発見、解決策or結論に特に重点をおいて、解決策or結論は結論、説明・具体例という形で書くという入れ子状の構造になる。

 

  • 答案例

議論の整理

これまでの近代世界の見方では、世界は一国史観に基づいてそれぞれの国が干渉しあうことなく単線的な発展理論のなかで「先進国」と「後進国」を競っていると捉えられていた。

問題発見

しかし、このような考えに基づけば、国家間は干渉することなく、それぞれが独立したレールの上で、一様な発展過程の進行を競争している。そのため、「先進国」は努力したが、「後進国」は怠惰で頑張らなかったために「遅れて」しまったと説明される。すなわち、国ごとに単線的な発展過程において「進んで」いるか「遅れて」いるか位置づけられて、その原因が国家の努力不足、ひいては国民性や宗教などに求められるあまりにも単純な捉え方になってしまう。

(解決策or結論・筆者の反論のうち)結論

このような問題点に対し筆者は「近代世界システム論」を主張する。「近代世界システム論」においては、歴史は「国」を単位として動くのではなく、世界はそれぞれの要素が相互に関わり合い影響し合いながら一つの大きなシステムとして捉えられる。この考え方に立てば、禁欲、勤勉の精神により産業革命で急激な工業化を遂げた「先進国」イギリスと、のちにその植民地になった「後進国」インドといったようには捉えない。

(解決策or結論・筆者の反論のうち)説明・具体例

すなわち、世界はイギリスやインドを含む多数の変数の関わり合う一つの大きなシステムであり、イギリスが国民性に優れていて発展の階段をいち早く先んじて登っているのではなく、あくまでも世界帝国イギリスと原料供給地としてのインドであり、世界システムを構成する一要素に過ぎない。このような考えでは発展の過程は一様ではないため、「先進」も「後進」もなく同じ時間を共有し世界システムを構成する一要素としてそれぞれの国家や地域が捉えられる。そして、世界を大きなシステムとして見た場合、その先進性や後進性は問題にならないが、お互いの関わり合い方、「押し合い、へし合い」の結果が強調される。すなわち、世界帝国、世界の「中心」としてのイギリス、そしてそのイギリスの植民地かつ原料供給地であり、「中心」に対して「周辺」に位置するインドとして認識される。関わり合い、「押し合い、へし合い」をした結果役割が決まっているのだ。このように、「近代世界システム論」とは、世界を一つの大きなシステムと捉えて、そのシステムのなかで各国家や地域に対して「中心」と「周辺」という役割が成立していると考えるのである。

 

 

これまでの近代世界の見方では、世界は一国史観に基づいてそれぞれの国が干渉しあうことなく単線的な発展理論のなかで「先進国」と「後進国」を競っていると捉えられていた。

しかし、このような考えに基づけば、国家間は干渉することなく、それぞれが独立したレールの上で、一様な発展過程の進行を競争している。そのため、「先進国」は努力したが、「後進国」は怠惰で頑張らなかったために「遅れて」しまったと説明される。すなわち、国ごとに単線的な発展過程において「進んで」いるか「遅れて」いるか位置づけられて、その原因が国家の努力不足、ひいては国民性や宗教などに求められるあまりにも単純な捉え方になってしまう。

このような問題点に対し筆者は「近代世界システム論」を主張する。「近代世界システム論」においては、歴史は「国」を単位として動くのではなく、世界はそれぞれの要素が相互に関わり合い影響し合いながら一つの大きなシステムとして捉えられる。この考え方に立てば、禁欲、勤勉の精神により産業革命で急激な工業化を遂げた「先進国」イギリスと、のちにその植民地になった「後進国」インドといったようには捉えない。すなわち、世界はイギリスやインドを含む多数の変数の関わり合う一つの大きなシステムであり、イギリスが国民性に優れていて発展の階段をいち早く先んじて登っているのではなく、あくまでも世界帝国イギリスと原料供給地としてのインドであり、世界システムを構成する一要素に過ぎない。このような考えでは発展の過程は一様ではないため、「先進」も「後進」もなく同じ時間を共有し世界システムを構成する一要素としてそれぞれの国家や地域が捉えられる。そして、世界を大きなシステムとして見た場合、その先進性や後進性は問題にならないが、お互いの関わり合い方、「押し合い、へし合い」の結果が強調される。すなわち、世界帝国、世界の「中心」としてのイギリス、そしてそのイギリスの植民地かつ原料供給地であり、「中心」に対して「周辺」に位置するインドとして認識される。関わり合い、「押し合い、へし合い」をした結果役割が決まっているのだ。このように、「近代世界システム論」とは、世界を一つの大きなシステムと捉えて、そのシステムのなかで各国家や地域に対して「中心」と「周辺」という役割が成立していると考えるのである。(969字)

 

 

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