小論文第五段階 「課題文365冊読書&他流試合1000本」

■ 小論文 第五段階 「課題文365冊読書(ザッピング習得)&他流試合1000本」(1〜12ヶ月目・1日2時間)

SFC小論文はアイディアの質で合否が決まる傾向がある。アイディアの選定基準についてはすでに触れているが、良質にアイディアを量産するにはどうすれば良いのかをここでは触れていく。

1. アイディアを出すために必要なのは知識量と知識の整理方法と場数

まず、そもそもアイディアとは先に述べたように組み合わせによって生まれる。アイディアがなにかの言い換えではない限り、アイディアはなにかとなにかを足したものか、なにかからなにかを引いたものか、なにかとなにかをかけたものか、なにかとなにかを割ったもののいずれかに収束する。

この「なにか」についての知識、つまり慶應SFC小論文に出てきそうなありとあらゆる知識をまずは増やしていくことが大切だ。その上で最も役立つのは、たとえば英語学習の長文暗誦の箇所で触れたリンガメタリカやアカデミック5冊の暗誦や、慶應小論文で過去に出題された出典本に一通り目を通し要約することである。

また、知識の整理方法を習熟する必要もあるが、これは5STEPsの演習で十分にこなすから問題ないだろう。場数については、小論文は多くの場合過去に出た問題と良く似た問題が出る傾向があるが(少なくとも慶應5学部×20年分の演習を行っていた場合)、心配がある場合は代ゼミの小論文ノートなど、過去のバックナンバーも含めれば1000本以上の小論文が掲載されている本もあるので、そうしたそういった他大学の過去問も参考にして勉強してほしい。

2. 知識を最も効率よく習得する方法は目次を用いた要約作成によるザッピング方法取得

知識を最も効率よく習得する方法は、残念ながら要約本を読むことではない。要約本は5STEPsでいうと、問題発見と解決策or結論・結果の部分は書いてあるものの、作者がどのような思考回路からその解決策or結論・結果を導いたかが表れる論証にはほとんど触れていないためだ。だが、多くの場合小論文を書く能力を高める場合には、どうするかを知ることではなく、なぜそうするかを知ることが大切になる。ノウハウではなくノウホワイを知ることが小論文の執筆力を高める第一歩となる。

そのためにおすすめしたいのが、目次を一通り書き写した上で、それぞれの論理構成を5STEPsの形に従って要約することだ。

また、こうした要約を作る際のザッピング方法についてだが

・ 最初に述べたように、課題文のタイトルと、SFCの場合は小見出しのタイトルに着目し整理する。
・ 次に、具体例の書いてある段落は無視し、抽象論のみに着目する。
・ 次に抽象論の中でも、以下の3つにのみ着目する。
i. 抽象論が書いてある段落の文頭・文末の文と、その文中の指示語が指す単語→もっとも抽象的な文章が書かれている
ii. 逆接の接続詞のすぐ後の文(しかし、などの逆接の場合)・すぐ前の文(ただし、などの補足の場合)→文章全体の主張が書かれている
iii. 接続詞そのものと、文章全体の主題となる単語が書かれている文→全体的な議論の論理的な流れを俯瞰できる
・ その上で、5STEPsに基づいて議論がどのように展開されているかを要約する

というやり方がおすすめである。このように要約すると、要約する際の漏れやダブリが無くなる。

ただ、ここまでザッピングが出来なくとも、文章に書いてあることの中で抽象的な部分を抜粋するだけでも、十分勉強にはなる。5STEPsでいうと論証の章のような論理的整合性が強く求められる部分については丁寧に扱っていこう。

3. 過去に出題された本を読み、他大学の小論文にも目を通し、場数を踏む

過去の出典本や他大学の小論文にも一通り目を通すことで、見たことのない問題が出てくることはほぼ無くなるだろう。事実慶應SFC2学部に関しても、過去の出題はほとんど8分野にまとめることができ、例外的なテーマが出てくる年はせいぜい全体の一割程度である。また、その一割に関しても他大学(特に特色入試が始まる前の京都大学経済学部論文入試や旧帝国大学の後期試験)などですでに出てきたテーマが扱われる事が多い。

1.教育 2014s,2008s,2007s,2005s,2013t
2.政治 2013s,2011s,2009s,2001s,2000s,1999s,1997s,1994s,
3.グローバル 2012s,2004s,2003s,
4.介護 2010s,1998s,
5.知的心構え 1995s,1993s,2010t,
6.環境 2014t
7.企画書形式 2012t,2011t,2008t,2007t,2006t,2005t,2002t,2001t,1999t
8.メディア 2009t,1998t,1997t,1996t,
9.その他 2006s,2002s,1996s,1992s,2000t

(s:総合政策学部,t:環境情報学部)

4. 知識量×知識の整理方法≒アイディア・カテゴライズの質

アイディアやカテゴライズの質は、知識量とその整理方法に依存する。知識の整理方法については、概観をすでに述べているが、実際に自ら場数を踏んで経験することがもっとも良い勉強になるだろう。またアイディアの質についても、実現可能性が高く、社会の問題解決に役立つようなアイディアは突拍子な思いつきによって生まれるものでなく、豊富な知識量と子孫演算アイディアに代表されるような組み合わせ方法、そしてアイディアを選定する審美眼(その選定基準についてはここでほとんどすべて紹介した)によって生まれるものである。

よって、小論文を得意教科にするためには、知識量と知識の整理方法を学び、その上で場数を踏み、どのような出題にも怖気づかないようにすることがまずもって大切である。

■ 小論文 学部別対策法

□ 総合政策学部

1. 政治経済分野の出題が2年に1回の比率で出る

すでに紹介したように、政治経済分野の出題が二年に一回のペースで出てくる。

2. 学部の成立過程からわかるように、新自由主義関連の本を読むべき

もともと慶應SFCは経済学部出身の加藤寛教授によって作られた経緯があり、規制緩和などで知られる新自由主義学派の教授が多いことでも知られている。ミルトン・フリードマンの選択の自由や資本主義と自由、ハイエクの隷属への道など彼らが学生時代に特に熱心に読んだ本については一通り目を通しておいて損はない。

3. 他の頻出分野は、教育・グローバル・介護・知的心構えなど

この分野については、ひたすら本を読むしかほかないだろう。独自の解決策or結論の立案なども難しい分野なので、その学問領域の枠内で新しいアイディアを作ろうとするのではなく、他の学問領域からもその解決策or結論を評価できるような複眼的な視点を持てるようにあらゆる学問の入門書などを読むのが良い。

□ 環境情報学部

1. 企画書形式の出題が2年に1回の比率で出る

環境情報学部は、近年ではほとんど企画書形式の問題となりつつあり、過去20年分を見ていても、企画書形式の出題が10年分以上出ている。

2. 学部の成立過程からわかるように、当面はIoT関連の本を読むべき

もともとはインターネットの父と言われる村井純学部長始めとした教授がいるため、インターネット関係、とくに最近のIoTについての本は読んでおいたほうが良い。またアイディアの出し方は相当習熟しないとうまくいかない事が多いので、オズボーンの創造性を活かすなどもおすすめ。

3. 他の頻出分野は、環境・メディア・知的心構えなど

環境情報学部のテーマは、ある程度政治経済の授業を受けたり、あるいは受験サプリで政治経済のセンター対策を受講すれば良い総合政策学部の問題とは違い、おそらく過去に出題された出典本を読まない限り手も足も出ないという問題が多い。毎日学習会ではそのあたりの書籍について一通りの解説を加えるが、実際はそうした解説がないとかなり厳しいだろう。

□ 経済学部

1. 東大の滑り止め学部として、東大の現代文要約力を意識した出題

慶應経済は東大受験の際に併願して受けることが多い学部です。東大の現代文要約力を活かした出題が多く、比較的小論文の負担を少なく受けられるのが経済学部の特徴です。実際東大志望者についていうと、慶應経済の小論文対策はほとんどせずに合格したという人が多い。

ただ、私大専願の場合文章力の基礎も十分ではないケースが多いため、私大専願で慶應受験をする場合はぜひ相談してほしい。

2. 経済学・経営学の基礎的な素養があると強みに

また、課題文を読めばある程度理解できるようには書いているものの、具体化←→抽象化の訓練が十分ではない私大専願受験者にとっては少々難しい課題文が多いのもまた事実である。こうした訓練はある程度現代文に習熟すれば問題無くできるが、少々難しい場合は中澤幸夫氏の経営学・経済学の入門書を読むと良い。リンガメタリカやアカデミックと同じ構成であるため、暗誦長文集の中に加えても良いだろう。

3. 比較的問題解決型の出題が多いのも特徴

SFCがもともと経済学部の教授が分派して作ったものであるという経緯から、英語・小論文ともに傾向が似ており、奇抜な出題や問題解決型の出題も多いのが特徴である。

□ 文学部

1. 20年間を通じて共通しているテーマは「不条理との対峙」

文学部が20年間に渡り問い続けてきたテーマは戦争や環境破壊、司法制度など数多くあり、それらにはなんら共通点がないように思える。だが、いずれのテーマに関しても本質的には、「不条理との対峙」を掲げているという点ではなんら変わることはない。

不条理という問題に直面したとき、論証すらできない不条理とどのように対峙に、受容し、折り合いをつけてきたかについて問いかけるのが文学部の問題であり、そうした問題を解く際には自らの論理的思考はもちろん大切だが、それ以上に課題文の読解能力が問われることになる。

2. 様々な不条理に対する理解と批判精神が必要

また、課題文を解くにあたって、さまざまな不条理の背景事情に対する理解が十分備わっていることも必要不可欠だ。その上で、現実社会に対する健全な批判精神を持ち、それを理解できることも極めて重要である。

3. 比較的結論を出したり影響を考察する出題が多いのも特徴

解決策or結論を書く問題というのは殆ど出ず、どちらかというと結論を出したり影響を考察する問題が多いのも特徴の一つである。

□ 法学部

1. 法学分野の出題と政治分野の出題が混在

基本的に大抵の法学分野・政治学分野については、高校範囲の政経資料集や教科書、受験サプリのセンター政経対策の授業を見れば問題なく対応できる範囲である。そもそもそういったものを見て習熟できないぐらいの興味しかないのであれば、そもそも法学部は受けるべきではないだろう。

2. 政治分野においてはリーダーシップ論が盲点に

盲点になりがちなのは、政治経済ではなぜか取り扱わないリーダーシップ論についてで、これはマキャベリの君主論を一通り読んだ上で、要約もしっかり作っておいたほうがいいだろう。さらには慶應を受ける友人がいれば、マキャベリの君主論については議論の余地がある。

3. 長い要約を経て答えるべき問いが定められた上での問題解決型問題も出題される

まず、法学部の稀有な特徴としては、1000字程度というSFC並の長文記述について、要約を400字程度行わなければならない不文律があることだ。この長さは5STEPsのバランスを考えても異常で、5STEPsの議論の整理パートを使うだけでは要約は十分ではないだろう。具体例箇所を増やすという方法もあるが、それ以上に入れ子構造型の5STEPs要約を用い、要約を行ったほうがいいかもしれない。

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