小論文第三段階 「段落の構成方法と内容(小論文の5STEPs)」

■ 小論文 第三段階 「段落の構成方法と内容(小論文の5STEPs)」(3日目・1日2時間)

これを習得するためには小論文の基本的な文法ドリルが独自教材であるので、そちらの5STEPsドリルを演習していただく形になる。

0. アドミッション・ポリシーから見る小論文の構成

慶應SFCのアドミッション・ポリシーは「問題発見・問題解決型教育」である。この表現は、SFCのありとあらゆる公式文章に頻出する。また、大学入学時のレポートレクシャーでも、問題発見・問題解決型教育に基づくレポートの作成方法について教授を受ける。

だが、小論文を書く上で、

(2) 問題発見
(4) 問題解決

だけでは小論文の構成としては、いささか弱い。

「問題発見・問題解決」を支えるためには、それに派生した要素が必要であり、そうした要素のことを個々では大まかに「小論文の5STEPs」という。そして、5STEPsから派生する小論文を書く上で考慮に入れなければならない要素が20ほどある。

1. 派生の必要性により生まれた「小論文の5STEPs」

まず、

(2) 問題発見→優れた問題発見のためには、議論を整理する必要がある。
(4) 問題解決→優れた問題解決のためには、それが徹底的な論証の賜物である必要があるし、解決策or結論については適切な吟味検討を加えなければならない。

このように、考えると小論文の構成は以下の5STEPsにまとめられる。

(1) 議論の整理
(2) 問題発見
(3) 論証
(4) 解決策or結論
(5) 解決策or結論の吟味

だが、これが分かっただけでは小論文は書けない。小論文として成り立たせるためには、このそれぞれで書く必要がある要素を検討した上で、それらの要素が長くなる場合には結論・根拠・具体例を用い展開しなければならない。

2. 小論文の5STEPsは小論文に必要なすべての要素を満たすために細分化される

小論文の5STEPsのみでは、小論文を書くことは難しいので、これをさらに細分化する必要がある。特に重要なものには、☆を付けて強調する。

(1) 議論の整理
・ 共通の前提or共通の理想☆
・ 食い違う思考回路or方法論☆
・ 事実の時系列or場所ごとの整理
・ 重要な定性的・定量的比較
・ わかりにくい言葉の言い換え

まず、議論の整理をする上で大切なのは、それぞれの課題文で共通している議論の前提や理想を見出すことである。同じ出発点から端を発した議論であることが分かれば結論へ着地させやすいため、共通部分をまず認識することは極めて大切である。

その上で、思考回路や方法論の部分でどういう食い違いが生じているかについては整理すべきだろう。こうした論点を的確に見出すためにも、事実を時系列or場所ごとに整理したり、重要な定性的比較(数字では表せない比較)・定量的比較(数字で表せる比較)に触れたり、わかりにくい言葉については言い換えることもまた重要である。

小論文を書く上で気をつけなければならないこととしては、中学一年生が読んでも理解できるように書くことである。たとえば、各設問ごとに、課題文も問題文も何も見ていない人でも理解できるように書くように工夫すべきである。なぜなら、小論文の採点は通常複数人で行われるが、問1のみ、問2のみの採点を連続して数百ページ行ったほうが作業としては効率的であるため、前後の設問で自らが書いた解答からの引用を行っても十分理解されないケースがあるからだ。

また、大学の先生はあくまでも特定分野の専門家であり、すべての領域において学識がある人間ではないということも認識しなければならない。むしろ、特定の分野に優れた人間というのは、それ以外を切り捨てながら生きてきた可能性も否定できず、それこそそれ以外の分野については中学1年生並の習熟度であることもまた多いのが事実だ。そうした点を考えると、その分野に精通している人間であれば無意識に飛ばしてしまいそうな論理的説明も十分に書く必要があることがわかる。

また、課題文中からの引用については必ず『』など簡易な引用符を付けるようにしたほうが良い。大学の先生は自らが論文を書く立場であるため、自らが考えて書いた部分と引用により掲載した部分を明確に分けることを求める。まずは、こうした基本的な論文作法に習熟することが極めて大切である。

(2) 問題発見
・ 問題の列挙
・ 問題の細分化
・ 問題の重要度整理
・ 問題の特定☆
・ 問題の今日的意義の確認

次の問題発見パートにおいては、簡易的なピラミットストラクチャーを用いる。ピラミットストラクチャーとは主な議論テーマを最上に置き、その上で問題をいくつかに分解し、それぞれの原因を探る問題解決手法のことである。アメリカの主要な大学やコンサルティング・ファームではすでに導入されている上、慶應SFCでも2010総合などで出題実績があるが、小論文で導入するにはあまりに小論文の字数が短いため、今回は簡易的な導入に留める。

ピラミットストラクチャーを簡易的に導入する段階で、まず行うべきことは考えられる問題の列挙である。それぞれの問題が単なる言葉の言い換えになってはいけない。あくまでもそれぞれの問題は漏れがなく、ダブリがないように分類されていなければいけない。まず、漏れがないというのは、そのテーマについてだいたいの網羅性を確保しているということだ。たとえば政府についての話であれば、内政と外交というふうにテーマを分けるとだいたいの網羅性は得られる。次に、ダブリがないというのは、それぞれの問題が単なる言葉の言い換えや因果関係の過程の一部ではなく、完全に独立しているということである。

その上で、この漏れがなくダブリがないということに気をつけながら問題を細分化し、
1. 深掘りできそうな問題か? (≒自分が十分な知識を持っている問題か?)
2. 根本的な原因を潰しやすそうな解決策or結論が思い浮かぶ問題か? (≒自分が十分な知識を持っている問題か?)
3. 重要な問題か? 解決する価値のある問題か?

の三つの観点から問題を特定にするべきである。

これらの基準は本来であれば、問題設定の基準としてはふさわしくない。問題設定というのは本来問題解決時に社会に与えるインパクトをベースに設定するものだ。だが、限られた知識量で合格に値する小論文を書くという目的の上では、やはり自分がそのテーマについて十分な記述ができるかという側面から問題設定を考えなければならない。これは社会人になってからもそうで、重要な問題はたしかに大切なのだが、それ以上に自分が力を発揮できる問題を解決することが大切な場面がままある。

また、慶應の大学院入試などでも、実際に自分の持論と逆の持論を論理的に構成することが求められる場面がある。たとえば、慶應MBAの試験においては、マクドナルド派とケンタッキー派に分かれて意見を論じ、ついでその逆の意見を論理的に構成する問題が出題された実績がある。

こうしたことを考えると、やはり書きやすいかどうかで問題設定をすべきだろう。

また、意外と見過ごしがちな事実としては、問題設定をし、論証をし、解決策or結論を書いた時点ですでにその問題が解決されていたということもままある。情報の非対称性の問題で、その解決策or結論が未だ世間一般に幅広く浸透していなかっただけで、すでにその解決策or結論があるというケースもまた多いのだ。こうした事態を招かないために大切なのは、(1)議論の整理の「事実の時系列or場所ごとの整理」である。まずこの段階で、特に答えるべき問いが指定されていない場合は、現在より少々先に起こりうる問題を解決するような形の問題設定をすべきだ。次に、(4) 解決策or結論の「原因Cを潰すための解決策or結論☆(四則演算アイディア、痛し痒し、技術、データーベース、学際融合)」の部分で、まだ現実化されていないアイディアの作りこみを徹底すべきだ。

この二つの原則に沿った書き方をすれば、もうすでに解決されている問題について、問題発見・論証・解決策or結論を書くということは無くなるだろう。

(3) 論証
・ 問題についてぱっと思いつく原因Aの設定☆
・ 原因Aの原因Bの分析☆
・ 原因Bの原因Cの分析☆
・ 原因A,B,Cにおける因果関係の確認☆
・ 因果関係の恣意性についての確認☆

まず、問題についてぱっと思いつく原因Aを設定する。この原因の着想は特定の価値観に基づく恣意的かつ例外的なものでさえなければ、何であっても構わない。原因の着想は一般的なものであればあるほどよい。

なぜなら、小論文については、書く前の仮説と、書いた後の結論は全く異なっていることそのものが書き手の成長であるからだ。おおよそ、人間は小論文を書く前からそのテーマについては何かしらの持論を持っている。そのほとんどは、以前読んだ本の受け売りであったり、自分の偏見のコレクションであることが多い。よって、まず小論文において論証をする際には予断を持たずに行うことが極めて大切になる。その上で、論理的に思考し、今までの偏見を打ち破り、自ら考えた論理的な論証と解決策or結論をストックしてほしいものだ。

その上で、原因Aの原因B、原因Bの原因Cというふうにそれぞれの問題の原因を深く分析してほしい。この論証の過程にはその人の人間観が表れるが、それ自体があなたの小論文をあなただけしか書けないかけがえのないものにするので、そうした部分での人間観の表出は全く問題ない。

その上で、原因A,B,Cが因果関係があり、またその因果関係に特定の解決策or結論に誘導する意図を持つ恣意性がなければ問題ない。

(4) 解決策or結論or結果
・ 原因Cを潰すための解決策or結論or結果(四則演算アイディア、痛し痒し、技術、データーベース、学際融合)☆
・ 解決策or結論を実行できる抽象的な根拠or結果が成り立つ抽象的な根拠
・ 解決策or結論を実行できる根拠たりうる具体的な事例or結果が成り立つ具体的な事例
・ 解決策or結論を実行するために必要な資源(人的資源、資産、お金、情報、技術、データーベース)or結果が成り立つ上で必要な条件
・ 他の解決策or結論or結果の列挙

解決策or結論については、原因Cを潰すものという定義をここでは行う。解決策or結論とは何ですか?と聞かれることがままあるが、解決策or結論とは原因を潰すものである。

その上で、慶應SFCに合格するための優れた解決策or結論の典型というのはたしかにあるので、その典型例についていくつか述べていきたい。

1. 四則演算アイディア

まず、アイディアというのは、基本的には以下の4つのうちのいずれかに分類される。そうでないものは、単なる既存の何かの言い換えにすぎないことが多い。

i. 足し算のアイディア(ex;「いちご」+「大福」≒いちご大福)
ii. 引き算のアイディア(ex;「ガラケー」−「キーボード」≒スマホ)
iii. 掛け算のアイディア(ex;「インターネット」×「携帯電話」≒スマホ)
iv. 割り算のアイディア(ex;「テナント」÷「ブース」≒ネットカフェ)

たとえば、いちご大福は、いちごと大福を合わせたものだし、スマホはガラケーからキーボードを引いたものである。他にもスマホはインターネットデバイスと携帯を掛けあわせたものであるともいえるし、ネットカフェはテナントをブースで割ったものであるともいえる。

2. 痛し痒し

次に大切なことは、そのアイディアが競争相手にとって痛し痒しで手が出さないアイディアであることだ。こうしたアイディアの特徴は「相手が今まで資産だと思っていたものが、同じアイディアを実行する上で負債に変わること」である。

たとえば、ネットビデオレンタル店に既存のビデオレンタル店が参入しようとすると、今まで持っていた店舗や店員という資産が重荷になる。なぜなら、新規参入者は店舗や店員という負担なしに、ネットビデオレンタル店の高い利益を楽しむことができるが、既存のビデオレンタル店は常に店舗や店員という固定費負担に悩まされるためである。

また、これはネット証券についても事情は同じである。既存の証券会社がネット証券に参入しようとすると、今まで持っていた店舗や店員という資産が重荷になる。ところが新規参入者はそうした重荷に悩まされずに済む。

他にも、たとえばネット家庭教師でも事情は同じである。私が毎日×10分のネット家庭教師に参入した際には、他の家庭教師会社はこの事業には参入できないだろうと考えていた。なぜなら毎日×長時間の契約を多数持っている家庭教師会社はその既得権益を失うことになるだろうと考えたためだ。

3. 技術

また、技術については、SFCの教授が書いている本や、SFCのサイト、ORFというSFCの研究発表会にも足を運び、SFCではどのような研究をしているのかを良く知ることが初歩となる。なぜSFCの研究について把握する必要があるのかというと、SFCを主語とする企画書形式小論文を書く際には、まだSFCにない技術ではなく、すでにSFCが持っている技術をベースとしたほうが書きやすいためだ。

4. データーベース

ほかにも、その解決策or結論を実行する上で他者とくらべて有利になる側面として、データーベースが構築できるか否かがある。たとえば、宅配便のドライバーの不在通知のデーターを集め、その家の在宅時間を把握するビックデータ―や、空気清浄機や冷蔵庫からそれぞれの家庭の食品消費状況や健康状態を把握するなど、データーベースはさまざまな用途で用いることができ、かつ一度構築できると、なかなか他者が巻き返しを図ることは難しくなる。

5. 学際融合

また、SFCはある学問分野と他の学問分野の知見を融合した小論文のアイディアを書かせることが多い。こうした部分をしっかり協調して書けるかどうかが小論文が書けるかどうかの試金石になるため、あらゆる学問分野についての素養を身につけておくべきであろう。

(5) 解決策or結論の吟味
・ 利害関係者(ex;売り手・買い手・同業・新規参入者・代替品開発者)の利害☆
・ 他の解決策or結論との比較☆
・ 戦略的に打ち手が正しいかの検討(集中戦略・差別化戦略・囲い込み戦略)
・ 今後の課題
・ 結論の要約

解決策or結論の吟味においてまず重要になるのは、利害関係者がそれぞれどのような反応を示すかである。利害関係者は主に、売り手・買い手・同業・新規参入者・代替品開発者の五者がおり、これを5FORCEsと言う。

例えば、公立学校制度においては、売り手は通っている学校、買い手は学校の生徒であり、同業は他の学区の公立学校、新規参入者は新しくできる学校、代替品開発者は学習塾や高卒認定試験、あるいはそれが受けられる予備校である。このように、ありとあらゆるテーマには利害関係者が存在するので、まずはそれぞれがどのような利害を持ち、あなたの解決策or結論にどのように反応するかについて触れなければいけない。

次に、他の解決策or結論との比較も重要になる。

また、他の解決策or結論と比較をする場合には、その解決策or結論を実行する主体の特性をわきまえた上で、その主体の力が弱ければ限られた範囲をターゲットにした一つの問題解決に集中させるべきだし、ある程度の力を持っているのであれば新規参入者に力を持たせないよう差別化する必要があるし、その主体の力が圧倒的であれば他の新規参入者に追いつかれないように、他の新規参入者が始めそうなことはすべてやることが大切である。

また、その後には今後の課題について軽く触れ、最後には解決策or結論を要約して書くと良いだろう。人間は忘れやすいいきものであるから、小論文のような字数の限られたテキストで複数のことを書いてはいけない。一つのことをただ一つのことを反復していいづけることが大切である。

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