北九州市立大学 文学部人間関係学科 前期日程 2021年度 小論文過去問解説(科学的方法と人間関係)
問い【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 1000字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 筆者が述べる科学の高い地位の要因を整理したうえで、科学的方法だけでは解決できない社会・人間関係の課題を具体例とともに論じる問題であるため。
設問文
筆者が述べる下線部①の要因について簡潔に記述したうえで、あなたが考える、「科学的」方法に頼るだけでは解決できない社会や人間関係に関わる課題を具体的に例示し、解決できない理由とその対処について1000字以内で自由に論述しなさい。
解答プロセス
5STEPに当てはめた書き方
STEP1 議論の整理
筆者は、科学が電気、安全な飲料水、ペニシリン、空の旅など多くの恩恵をもたらしたため、現代社会で「科学的」という言葉が高い威信を得ていると述べる。一方で、科学的方法が人間の幸福、道徳、知識の意味などすべての重要問題を解けるわけではないとも論じる。
設問要件対応: 「下線部①の要因」を簡潔に整理する。
STEP2 問題発見
問題は、科学的データが有効でも、価値判断や関係修復を必要とする課題では、数値だけでは結論を決められないことである。
設問要件対応: 「科学的方法に頼るだけでは解決できない課題」を設定する。
STEP3 論証
具体例として、学校でのいじめ対応を挙げる。調査票、出席状況、心理尺度は実態把握に役立つが、被害者の安心、加害者の反省、周囲の関係再構築は科学的測定だけでは達成できない。
設問要件対応: 具体例と「解決できない理由」を示す。
STEP4 結論
対処として、データによる把握と、対話、倫理的判断、当事者の尊厳を守る支援を組み合わせるべきだと述べる。
設問要件対応: 「その対処」を示す。
STEP5 吟味
科学を否定するのではなく、科学の知見を土台にしつつ、最終判断には人文学的・倫理的な考察を加える必要がある。
設問要件対応: 科学批判に偏りすぎない立場を確認する。
問い【解答】
筆者によれば、現代社会で「科学的」という言葉が高い地位を持つ要因は、科学が人類に大きな恩恵を与えてきたことにある。電気、安全な飲料水、ペニシリン、避妊法、空の旅などは生活を大きく改善した。そのため社会は科学者を専門家として扱い、重要問題について意見を求め、科学的であることを合理的で信頼できるものと見なすようになった。
しかし、科学的方法だけでは解決できない課題もある。私が例として挙げたいのは、学校でのいじめ対応である。いじめの発生件数、欠席日数、心理検査の結果、SNS上のやり取りの記録などを集めれば、問題の実態を把握することはできる。どの時期に被害が増えたか、誰が関わったか、被害者のストレスがどの程度かを分析することも可能である。こうした科学的・客観的な把握は、対応の出発点として不可欠である。
それでも、いじめは数値だけでは解決しない。なぜなら、そこには被害者の尊厳、加害者の責任、傍観した生徒の罪悪感、学級の空気、教師や保護者の信頼関係が絡むからである。たとえば心理尺度の数値が改善しても、被害者が教室を安全な場所だと感じられなければ、問題が解決したとはいえない。また、加害者に形式的な謝罪をさせても、相手を傷つけた意味を理解しなければ再発を防げない。
したがって対処には、科学的調査と人間的な対話の両方が必要である。学校は記録やアンケートで事実を確認し、被害者の安全を最優先に確保する。そのうえで、当事者の話を丁寧に聞き、何が苦痛だったのか、どのような距離なら安心できるのかを確認する。加害者には処分だけでなく、自分の行為が相手の生活をどう変えたかを考えさせる教育が必要である。
科学は、見落としや思い込みを減らす強力な方法である。しかし、人はいかに生きるべきか、傷ついた関係をどう回復するかという問いには、価値判断と倫理的配慮が欠かせない。科学を尊重しつつ、それだけを唯一の方法とせず、人間の尊厳を中心に据えて判断することが必要である。
字数カウント: 822字



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