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東京海洋大学 海洋生命科学部海洋政策文化学科 前期日程 2020年度 小論文過去問解説(移民・公共性・医療コミュニケーション)

東京海洋大学 海洋生命科学部海洋政策文化学科 前期日程 2020年度 小論文過去問解説(移民・公共性・医療コミュニケーション)

問題の概要

令和2年度の東京海洋大学海洋生命科学部海洋政策文化学科前期日程の小論文は、文章Aから文章Cまでを読んで、移民政策、公共性、グローバル化、医療現場における言葉の非対称性を考える問題である。文章Aは、外国人労働者を単なる労働力として受け入れるのではなく、人間として権利保障と社会的包摂を行う必要を論じる。文章Bは、公共性を共同体や市場と区別し、「言説の資源」が公共空間へのアクセスを左右すると述べる。文章Cは、グローバル化が一部の人々を自由にしながら、他方で多くの人々を地域に固定し、公共空間から遠ざけることを論じる。

設問文

次の文章Aから文章Cを読んで、問1から問6に答えなさい。

問1 文章Bの下線部③に「共同体のように閉域をつくるわけではない」とある。文章Aの記述のなかから、そのような市場の特徴を具体的に表していると考えられる箇所の1つを40字以内で抜き出しなさい。ただし、解答は、「企業は〜」となるように解答欄に記入すること。

問2 文章Aの下線部①に「最低限の支え」とあるが、人間としての権利を保障するには、どのような施策が必要であると考えられるか。文章Aから読み取れる複数の具体例に言及しつつ、100字〜160字で述べなさい。

問3 文章Cの下線部④で述べられている「強要されたローカル化」という状態について、文章Aの記述のなかから、そうした状態の具体例として適切と考えられる箇所の1つを40字以内で抜き出しなさい。

問4 文章Aの下線部②にある「撤退ではなく関与の方へ、周縁化ではなく包摂の方へ。そして排除ではなく連帯の方へ」社会の方向を転換する可能性について議論を進めていくためには、どのような条件が成立することが必要であるか。文章Bの記述のなかから適切と考えられる箇所を50字以内で抜き出しなさい。ただし、解答は、「〜の実現」となるように解答欄に記入すること。

問5 文章Bによると、誰もがアクセスしうる開かれた空間であることが、「公共性」の性格の1つである。しかし、そのような空間は必ずしも実現されていない、と文章Cの著者は主張する。その理由を、文章Cを参照して120字〜160字で述べなさい。

問6 病院で医師や看護師が話す言葉を理解できない患者がいると、嫌な顔をする医師もいるというエピソードが文章Aで紹介されている。患者が自分の病状やそれに対する治療方法についてよく理解できるような説明を受け、十分納得したうえで治療方針を決めるためには、医師・看護師と患者の関係はどのようなものであることが望ましいだろうか。文章Aおよび文章Bで述べられていることを考慮に入れたうえで、考えられることを500字以内で述べなさい。ただし、解答に際しては、以下の用語を必ず使用すること。語の使用順序は自由とする。使用する用語:非対称的、専門用語、言説の資源、対抗的な言説、コミュニケーション

課題文の要点

文章Aは、特定技能による外国人労働者の受け入れをめぐり、外国人を「モノ」や単なる労働力ではなく「人」として扱うには教育、医療、社会保障、言葉の支援が必要だと述べる。とくに、外国人の子どもの不就学、高校中退、日本語が不自由な人の医療不安などを挙げ、「最低限の支え」がなければ権利は現実化しないと論じる。

文章Bは、公共性を「誰もがアクセスしうる空間」として説明しつつ、実際には所得、時間、知識、語り方、専門知へのアクセスといった「言説の資源」の格差によって、公共空間への参加が非対称になると述べる。専門家に説明責任を課すだけでなく、専門知を批判できる対抗的な言説も必要だという点が重要である。

文章Cは、グローバル化が、自由に移動できる人々と地域に固定される人々を分断すると述べる。公共空間が地域生活から離れ、地域の人々が自分たちの問題を討議し、意味をつくる場を失うと、彼らは「強要されたローカル化」の状態に置かれる。

問1【解説】

設問条件の判定

  • 制限字数: 40字以内
  • 意見論述の要求: なし
  • 選択テンプレート: 自由形式
  • 判定根拠: 文章Bの市場の特徴に対応する文章Aの表現を抜き出す問題であり、意見ではなく対応箇所の特定が求められている。

解答プロセス

設問は、文章Bの「市場は共同体のように閉じた領域を作らない」という説明に対応する文章Aの表現を探すよう求めている。文章Aでは、企業が国籍や共同体的所属よりも、生産活動に必要な資源を効率よく得ることを重視する存在として描かれている。したがって、「グローバルな視点」「モノ、カネ、ヒト」「最も効率的に得る」が市場の特徴を表す中核である。

問1【解答】

グローバルな視点でモノ、カネ、ヒトを最も効率的に得るための方法を考える

字数カウント: 38字

問2【解説】

設問条件の判定

  • 制限字数: 100字〜160字
  • 意見論述の要求: 弱い
  • 選択テンプレート: 自由形式
  • 判定根拠: 施策を考える設問だが、文章Aの具体例を複数使うことが中心条件であり、短い説明型答案として構成する。

解答プロセス

設問は「人間としての権利を保障する」ための施策を尋ねている。文章Aの具体例は、教育、医療、社会保障、日本語支援、生活上の手続き支援に分かれる。答案では、外国人を労働者としてだけでなく生活者として扱うことを結論に置き、不就学・高校中退、病院での言葉の壁、行政手続きの困難をまとめて反映する。

問2【解答】

外国人を労働力としてだけでなく生活者として扱い、日本語教育、子どもの就学支援、医療通訳、行政手続きの多言語化、社会保障への接続を整える施策が必要である。不就学や高校中退、病院への恐怖を放置すれば、権利は形式だけになる。

字数カウント: 108字

問3【解説】

設問条件の判定

  • 制限字数: 40字以内
  • 意見論述の要求: なし
  • 選択テンプレート: 自由形式
  • 判定根拠: 文章Cの概念に対応する文章Aの具体例を抜き出す問題である。

解答プロセス

「強要されたローカル化」とは、自由な移動や参加から排除され、地域や生活条件に固定される状態である。文章Aでは、日本語が不自由なために教育や医療から遠ざけられる外国人の姿がそれに当たる。40字以内で具体性が高い箇所として、病院に行くこと自体を恐れる外国人の例を選ぶ。

問3【解答】

具合が悪くても病院に行くこと自体を恐れる外国人たち

字数カウント: 28字

問4【解説】

設問条件の判定

  • 制限字数: 50字以内
  • 意見論述の要求: なし
  • 選択テンプレート: 自由形式
  • 判定根拠: 文章Bの中から、社会の方向転換を議論するための条件を抜き出す問題である。

解答プロセス

文章Aの「関与」「包摂」「連帯」は、閉じた共同体ではなく、異なる人々が共通の問題を語り合える公共性を必要とする。文章Bでは、公共性は「価値の複数性」を条件とし、「共通の世界」への関心をもつ人々の間に生まれる言説の空間だと説明されている。設問の指定に合わせ、「〜の実現」となる形に整える。

問4【解答】

価値の複数性を条件とし、共通の世界に関心をいだく言説の空間の実現

字数カウント: 36字

問5【解説】

設問条件の判定

  • 制限字数: 120字〜160字
  • 意見論述の要求: なし
  • 選択テンプレート: 自由形式
  • 判定根拠: 文章Cに基づいて理由を説明する問題であり、論述ではなく要約説明が中心である。

解答プロセス

設問は、公共性が「誰もがアクセスしうる開かれた空間」であるにもかかわらず、なぜ実現されていないのかを問う。文章Cでは、グローバル化によって意味や価値を生み出す中心が地域から離れ、ローカル化された人々が公共空間に届かなくなると説明される。答案では、移動できる人と固定される人の分断、地域の討議能力の喪失、エリートとのコミュニケーション断絶を入れる。

問5【解答】

グローバル化は一部の人々を自由に移動できる存在にする一方、多くの人々を地域に固定する。公共空間は地域生活から離れ、意味や価値を決める中心が超領域化するため、ローカル化された人々は議論に参加できず、エリートとのコミュニケーションも断たれるからである。

字数カウント: 128字

問6【解説】

設問条件の判定

  • 制限字数: 500字以内
  • 意見論述の要求: あり
  • 選択テンプレート: 5STEPs法
  • 判定根拠: 「どのような関係は望ましいか」を自分の考えとして述べる意見論述であり、文章A・文章Bの考慮と指定語5語の使用が求められているため、5STEPs法で要件を整理する。

解答プロセス

STEP1 議論の整理: 設問文は、患者が病状や治療方法を理解し、納得して治療方針を決めるための医師・看護師と患者の関係を問う。文章Aは、医療現場で日本語や専門用語がわからない患者が恐怖を抱くと述べる。文章Bは、専門知と日常知の格差が公共空間へのアクセスを非対称にすると述べる。

STEP2 問題発見: 問題は、医療者が知識を一方的に説明するだけでは、患者が意思決定に参加できない点にある。設問の要件である「十分納得したうえで治療方針を決める」ためには、情報の理解だけでなく、質問し直し、別の表現で語れる関係が必要である。

STEP3 論証: なぜなぜ分析で考える。第一に、患者が理解できないのは、医療者が専門用語を使うからである。第二に、その背景には、医師・看護師が言説の資源を多く持つ一方、患者は病気や制度について語る資源を持ちにくい非対称的な構造がある。第三に、この構造を放置すると、患者は沈黙し、同意は形式化する。

STEP4 解決策・結論: 望ましい関係は、医療者が患者を受け身の対象ではなく、治療方針を共に決める当事者として扱う関係である。そのためには、専門用語を日常語に翻訳し、通訳・家族・患者会などの対抗的な言説も利用して、双方向のコミュニケーションを確保する必要がある。

STEP5 吟味: 医療者だけに負担を集中させると現場が疲弊するため、病院全体で説明文書、多言語支援、相談窓口を整える必要がある。それにより、医療者の専門性を尊重しながら、患者の理解と納得を支える関係を実現できる。

問6【解答】

望ましいのは、医師・看護師が患者を指示に従うだけの相手ではなく、治療方針を共に決める当事者として扱う関係である。

医療現場では、医師・看護師は病気や治療に関する専門用語を使い、患者はそれを十分に理解できないことがある。この関係は知識の量だけでなく、何をどう質問してよいかまで含めて非対称的である。

文章Bの言う言説の資源の差は、医療にも当てはまる。患者が自分の痛みや不安をうまく言えず、医療者の説明を理解できないまま同意すれば、自己決定は形だけになる。

だから医療者は、専門用語を日常語に置き換え、患者が聞き返せる時間を確保し、必要に応じて通訳、家族、患者会、相談員などの対抗的な言説を治療説明に参加させるべきである。

そのような双方向のコミュニケーションがあって初めて、患者は病状と治療方法を理解し、自分の生活や価値観に照らして納得した選択を行える。

字数カウント: 393字

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