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宇都宮大学 国際学部 前期日程 2025年度 小論文過去問解説(言語・文化・アイデンティティ)

宇都宮大学 国際学部 前期日程 2025年度 小論文過去問解説(言語・文化・アイデンティティ)

問【解説】

設問条件の判定

  • 制限字数: 1000字以上1200字以内
  • 意見論述の要求: あり
  • 選択テンプレート: 5STEPs法
  • 判定根拠: 著者の主張を要約したうえで、「アイデンティティ」「言語」「文化」に着目して自分の意見を具体例とともに論じる問題であるため。

設問文

「アイデンティティ」と「言語」と「文化」に着目しながら著者の主張を要約したうえで、それに対するあなた自身の意見を、具体例を交えながら、1000字以上1200字以内(改行による空白、句読点を含む)で論じなさい。

課題文・資料の整理

課題文は、言語が常に民族的アイデンティティや共同体文化の根幹になるとは限らないと述べる。アイヌ語を話せなくてもアイヌ民族である意識を持つ人、在日コリアンで日本語しか話せなくても韓国人・朝鮮人としての意識を持つ人、日本手話を母語とする人の例が示される。筆者は、「他言語=他民族」「同じ言語=同じ民族」と捉える考え方が、多様な言語コミュニティの人々を排除すると警戒している。また、「日本語」と一口に言っても、方言、家庭での言葉、学校や職場での言葉など無数の変種があり、そこには複数の文化とアイデンティティがあるとする。

解答プロセス

5STEPに当てはめた書き方

STEP1 議論の整理

筆者の主張は、言語・文化・アイデンティティを単一に結びつける見方を批判する点にある。

設問要件対応: 著者の主張を要約する。

STEP2 問題発見

言語を民族や文化の証明とみなすと、その言語を使えない人や複数の言語を生きる人を排除してしまう。

設問要件対応: 「アイデンティティ」「言語」「文化」の関係を問題化する。

STEP3 論証

家庭内言語、方言、手話、移民の子どもなどの具体例から、アイデンティティは一つではなく関係の中で変化することを示す。

設問要件対応: 具体例を交える。

STEP4 結論

言語は文化を支えるが、アイデンティティを一つに固定する根拠ではなく、複数の自己を結ぶ媒体として捉えるべきだと述べる。

設問要件対応: 自分の意見を明示する。

STEP5 吟味

共通語の学習や社会参加に必要な言語能力は否定せず、多様性尊重と共通基盤を両立させる。

設問要件対応: 一面的な多様性論を避ける。

問【解答】

筆者の主張は、言語、文化、アイデンティティを一対一で結びつける見方を疑う点にある。ある言語を話すことが、必ずその民族的アイデンティティや文化の唯一の根拠になるわけではない。課題文では、アイヌ語を話せなくてもアイヌ民族としての意識を持つ人や、日本語しか話せなくても韓国人・朝鮮人としての意識を持つ在日コリアンが例に挙げられている。また、日本手話を母語とする人々の例からも、同じ日本社会に生きていても、言語経験は一様ではないことが分かる。筆者は、「同じ言語=同じ民族」「他言語=他民族」と考えることが、言語で自分を説明できない人や複数の言語を生きる人を排除すると述べている。

この問題で重要なのは、言語が文化と無関係だということではない。むしろ言語は、ものの見方、感情の表し方、人間関係の作り方を支える文化の一部である。しかし、それを単一で均質なものとして扱うと、現実の人間の多様さを見落とす。たとえば「日本語」と言っても、標準語、方言、家庭で使う言葉、学校や職場で使う言葉、友人同士の言葉は異なる。人は場面ごとに言葉を使い分け、そのたびに異なる自分を表している。

私も、アイデンティティは一つの言語によって固定されるものではなく、他者との関係の中で重なり合い、変化するものだと考える。たとえば、外国にルーツを持つ子どもが家庭では親の母語を聞き、学校では日本語で学ぶ場合、その子は二つの文化の間で揺れているのではなく、二つの文化を結びつける経験をしている。家庭の言語は家族の記憶や出自を支え、日本語は学校や地域社会への参加を支える。どちらか一方だけを「本当の自分」と決める必要はない。

また、方言にも同じことが言える。学校や公的な場では標準語が必要になるが、地域の方言には、その土地の生活感覚や人間関係の距離感が含まれる。方言を「正しくない日本語」と見なせば、その人が育った地域文化まで低く見ることになる。言語を尊重するとは、単に言葉を保存することではなく、その言葉で生きてきた人の経験を尊重することでもある。

ただし、多様な言語文化を尊重することは、共通語の必要性を否定することではない。社会で協働し、学び、権利を主張するには、共通に使える言語能力も必要である。大切なのは、共通語を学ぶことと、家庭語や方言、手話などを否定しないことを両立させることだ。言語は人を分類する札ではなく、複数の文化やアイデンティティを行き来するための通路として捉えるべきである。

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