【問題概要】
上智大学 文学部 フランス文学科 帰国生入試 2025年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
次の文章を読んで、下の問に答えなさい。
The identical story is not the same story to all who hear it. Each will enter it at a slightly different point, since no two experiences are exactly alike: he will replay it in his own way, and transfuse it with his own feelings. Sometimes an artist of compelling skill will force us to enter into lives altogether unlike our own, lives that seem at first sight dull, repulsive, or eccentric. But that is rare. In almost every story that catches our attention we become a character and act out the role with a pantomime of our own. The pantomime may be subtle or gross, may be sympathetic to the story, or only crudely analogous; but it will consist of those feelings which are aroused by our conception of the role. And so, the original theme as it circulates, is stressed, twisted, and embroidered by all the minds through which it goes. It is as if a play of Shakespeare’s were rewritten each time it is performed with all the changes of emphasis and meaning that the actors and audience inspired.
1. 全文を日本語に訳しなさい。ただし、出典は訳さなくてよい。
2. 下線部に示された筆者の意見について、自分の考えを日本語600〜800字で述べなさい。
1【解説】
1【解答例】(196字)
同じ物語であっても、それを聞くすべての人にとって同じ物語になるわけではない。人はそれぞれ少し異なる地点から物語に入り、自分の経験と感情を通して語り直す。強い表現力を持つ芸術家は、時に自分とはまったく違う生を読者に経験させるが、それは稀である。多くの場合、人は物語の中の人物になり、自分なりの身ぶりで役を演じる。そのため、物語の主題は人々の心を通るうちに強調され、ねじ曲げられ、飾り立てられる。
2【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で筆者への賛否、STEP2で経験による差、STEP3で読みの根拠、STEP4で文学の力、STEP5で結論を述べます。
2【解答例:5STEPs段落構成】(731字)
STEP1
筆者は、同じ物語も受け手ごとに異なる物語として経験されると述べている。私はこの意見に賛成である。物語は紙面や映像の中に固定された内容ではなく、読む人の記憶、価値観、感情によって意味を変えるものだからである。
STEP2
たとえば家族との別れを描く作品を読む時、実際に近しい人を失った経験がある人と、まだその経験を持たない人とでは、同じ場面から受ける痛みや重さが違う。恋愛、移民、貧困、差別を扱う物語でも同じで、読者は自分の経験を通して登場人物に近づく。
STEP3
このことは、物語の理解が単なる主観でよいという意味ではない。本文に書かれていないことを勝手に読み込めば、作品の理解は崩れる。重要なのは、本文の表現を根拠にしながら、自分の経験がどのように反応しているのかを自覚することである。
STEP4
また、優れた文学は、読者を自分と違う人生に入らせる力を持つ。普段なら退屈、不快、奇妙だと感じて避ける人物でも、作品の中ではその人の視点に立たされる。そこに文学の倫理的な力がある。読者は他者を単純に判断する前に、その人の内側を想像する訓練を受ける。
STEP5
結論として、物語は作者だけで完成するのではなく、読者や観客の心を通るたびに新しい意味を帯びる。ただし、その自由は本文を無視する自由ではない。作品の言葉を丁寧に読み、自分の経験がどこで反応したのかを考える時、読書は自己理解と他者理解の両方を深める。だからこそ、同じ作品を年齢や経験を重ねて読み返すことには意味がある。以前は見えなかった人物の孤独や弱さが、後になって理解できることがあるからである。物語の変化は、読者自身の変化を映す鏡でもある。さらに、他の読者と感想を比べることで、一つの作品が複数の人生に開かれていることもわかる。そこに読書の豊かさがある。



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