【問題概要】
上智大学 外国語学部 フランス語学科 帰国生入試 2025年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
課題:小論文(1400字)。次の文章を読み、設問に答えなさい。
課題文は、教育社会学の用語である「公正」と「卓越性」、学力保障と学力向上、新自由主義的教育改革、ペアレントクラシー、教育を選ぶ層と教育を受ける層の二極分化、学校を排除の場から包摂の場に転換する必要を論じている。
問一 傍線部①の「公正」と「卓越性」の概念を説明しなさい。(200字程度)
問二 傍線部②について、著者が「納得のいかないことも多い」と述べている理由を説明しなさい。(200字程度)
問三 「アリストクラシー」から「メリトクラシー」、さらに「メリトクラシー」から「ペアレントクラシー」社会への移行が起こっている理由を説明しなさい。(200字程度)
問四 傍線部③について、本文の内容を踏まえながら、具体例を交えてあなたの考えを述べなさい。(800字程度)
問一〜問三【解説】
各200字程度の説明問題なので、本文の概念を定義、理由、移行過程に分けて簡潔に答えます。
問一【解答例】(180字)
公正とは、教育機会をそろえる入口の平等と、教育達成を保障する出口の平等の両方を含む概念である。家庭や地域にかかわらず、すべての子どもが学ぶ機会を得て、基礎的な学力を身につけられることを重視する。卓越性とは、子どもの能力を高い水準まで伸ばす概念であり、全体の水準向上とトップ層の育成を含む。両者は対立概念ではなく、高い水準で両立してこそ優れた教育システムになる。
問二【解答例】(184字)
著者が納得できないのは、新自由主義的な教育政策が、公正よりも競争、選択、自己責任を強める方向に働くからである。全国学力テストや学校選択制などは、一見すると努力や改善を促す制度に見える。しかし実際には、家庭の資源が豊かな層ほど有利な学校や情報を選びやすく、弱い立場の子どもをさらに不利にする危険がある。それでも支持が広がる点に、著者は教育の公正が後退する不安を見ている。
問三【解答例】(187字)
近代以前のアリストクラシーでは身分や家柄が人生を左右した。近代社会では学校教育を通じて能力と努力により人生を開くメリトクラシーが広がった。しかし近年は、子どもの能力や努力の前提が家庭の経済力、保護者の教育意欲、文化資本に左右されるようになった。そのため、能力主義に見える社会が、実際には親の力に左右されるペアレントクラシーへ移行している。学力格差が家庭格差を映すためである。
問四【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で問いの意味、STEP2で具体例、STEP3で原因、STEP4で対応策、STEP5で結論を述べます。
問四【解答例:5STEPs段落構成】(728字)
STEP1
本文の傍線部③は、日本の教育がすべての子どもの教育を受ける権利を十分に保障できているのかを問うものだと読める。私は、理念としては保障されていても、現実には家庭、地域、障がい、外国につながる背景、貧困によって学びの条件に差があると考える。
STEP2
たとえば、塾に通える子どもと通えない子どもでは、受験情報や学習時間に差が出る。また、外国にルーツを持つ子どもは、日本語支援が不足すると授業内容を理解しにくい。障がいのある子どもも、合理的配慮が不十分なら、能力以前に参加の機会を奪われる。
STEP3
この問題は、本人の努力不足だけでは説明できない。新自由主義的な発想では、学校選択や競争が改善を生むとされる。しかし、選択には情報、時間、交通費、保護者の交渉力が必要である。資源のある家庭ほど選択を利用でき、資源の少ない家庭は取り残される。
STEP4
したがって、教育を受ける権利を実質化するには、学校を包摂の場に変える必要がある。具体的には、日本語指導員、スクールソーシャルワーカー、特別支援教育支援員を増やし、家庭の負担に依存しない補習や給食、教材費支援を整えるべきである。
STEP5
結論として、公正な教育とは、同じ制度を用意するだけでは実現しない。子どもごとに出発点が違う以上、不利を補う支援を入れて初めて、学ぶ権利は現実のものになる。卓越性も一部の子どもだけを伸ばす意味でなく、すべての子どもが自分の力を発揮できる条件を作ることで達成されるべきである。学校が排除の場にとどまれば、社会の分断は再生産される。包摂の場に転換することは、弱い立場の子どもを助けるだけでなく、社会全体の力を広げる教育政策である。競争を完全に否定する必要はないが、競争に参加する前提条件を整えなければ、公正な競争にはならない。



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