【問題概要】
上智大学 文学部 フランス文学科 帰国生入試 2024年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
次の文章を読んで、問いに答えなさい。
1. 全文を日本語に訳しなさい。出典は訳さなくてよい。
2. 下線部について、上の文章の内容をふまえ、600〜800字程度で自分の考えを書きなさい。日本語で論じること。
課題文は、ジョルジュ・サンド『わが生涯の記』の一節であり、自分の生涯を書くこと、自分を定義し要約することの困難、人間の心の研究、自分について語ると無意識に自分を美化し高めてしまう傾向を述べている。
1【解説】
仏文和訳は、自己を書く義務、自己認識の困難、自己美化の傾向という流れを保って訳します。
1【解答例】(497字)
自分自身の人生の歴史を書くことに、また、その人生が私たちの中に残した記憶の中から、保存する価値があると思われるものを選ぶことに、傲慢や不遜があるとは私は思わない。私としては、一つの義務を果たすのだと思っている。それはかなりつらい義務でさえある。なぜなら、自分を定義し、一人の人間として自分を要約することほど難しいことを私は知らないからである。人間の心の研究は、その中に深く入り込めば入り込むほど、かえってはっきり見えなくなる性質のものである。活動的な精神を持つある人々にとって、自己を知ることは退屈で、つねに不完全な研究である。それでも私はこの義務を果たすつもりである。私はずっとそれを目の前に置いてきたし、他人に自分自身について行うよう勧めてきたこと、すなわち自分自身の本性についての誠実な研究と、自分自身の存在についての注意深い検討を、死ぬ前に必ず行うと約束してきた。自分について語ることに慣れると、人は容易に自慢するようになる。それもおそらく、人間精神の自然な法則によって、まったく無意識のうちにそうなるのである。人間精神は、自分が見つめる対象を美しくし、高めずにはいられないからである。
2【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で筆者への立場、STEP2で自己物語化、STEP3で語る価値、STEP4で自己美化への対処、STEP5で結論を述べます。
2【解答例:5STEPs段落構成】(742字)
STEP1
筆者は、自分について語ることには義務としての価値がある一方で、自己を定義し要約することは難しく、人は自分を語る時に無意識に美化してしまうと述べている。私はこの見方に賛成である。自己理解は必要だが、完全に客観的な自己記述はほとんど不可能だからである。
STEP2
人が自分の人生を語る時、出来事そのものをそのまま並べるのではなく、意味のある物語として組み立てる。失敗を成長のきっかけとして語り、偶然の選択を必然だったように説明することがある。これは意図的な嘘でなく、自分の人生に一貫性を与えたい欲求から生じる。
STEP3
しかし、だからといって自分を語ることをやめるべきではない。自分の経験を言葉にすることで、何を大切にしてきたのか、どこで他者を傷つけたのか、何に支えられてきたのかが見えてくる。自己の物語化には危うさと同時に、反省の可能性がある。
STEP4
大切なのは、自分の語りが選択と解釈を含むことを自覚することである。日記、友人との対話、他者からの批判、過去の記録に触れることは、自己美化を相対化する助けになる。自分をよく見せたい気持ちを否定するより、それがあることを前提に検討すべきである。
STEP5
結論として、自分について語ることは、傲慢な行為ではなく、誠実に行えば自己理解と他者理解を深める行為である。ただし、その語りは常に不完全で、自分に都合よく整えられる危険を持つ。だからこそ、自己を書く者は、自分の弱さや矛盾も含めて見つめる必要がある。他者に読まれる文章であればなおさら、成功だけでなく迷いや失敗も記すことで、自己美化を抑え、読者との信頼を作ることができる。その姿勢は、読む側にも筆者を一人の人間として受け止める余地を与える。筆者の言葉は、自伝や自己表現において、率直さと謙虚さの両方が必要であることを教えている。



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