【問題概要】
上智大学 法学部 国際関係法学科 帰国生入試 2024年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
記事を読み、以下の各問について(1)(2)いずれも400字以内で記述せよ。解答に際して問題番号を明記すること。課題文は、フランスで移民にルーツを持つ若者が警察による取り締まりや社会的排除を経験し、「本当のフランス人ではない」という感覚に苦しんでいること、多様性の受け入れに困難があることを論じている。
(1) 文章中下線部について、どのような「正義」がどのように踏みにじられたというのであろうか。
(2) 文章中下線部②について、現在、各国で盛んに「多様性の重視」が語られているが、日本、フランスも含めて自分のよく知る国について「多様性の受け入れに困難を抱えている」のは、どういう背景があるからだろうか、そしてその困難をどう克服することができるだろうか。
(1)【解説】
法的平等だけでなく、同じ市民として認められる承認の正義を説明します。
(1)【解答例】(382字)
踏みにじられた正義とは、出自や肌の色にかかわらず、同じ市民として尊重され、公平に扱われるべきだという正義である。課題文では、移民にルーツを持つ若者が、理由もなく警察から身元確認を求められたり、社会の中で「本当のフランス人ではない」と感じさせられたりしている。これは法の下の平等だけでなく、フランス社会の成員として認められる承認の正義が損なわれていることを意味する。警察による射殺事件は、若者たちに「自分も同じ目に遭うかもしれない」という恐怖を与え、国家が守るべき市民を逆に脅かしていると受け止められた。そのため、怒りは単なる事件への反応ではなく、長く蓄積した不平等への抗議として表れたのである。国家が平等を掲げながら、現実には一部の市民を疑いの対象として扱う時、正義は制度と日常の両方で踏みにじられる。市民としての帰属を否定されること自体が、深い不正義なのである。
(2)【解説】
形式的平等と現実の差別のずれを背景に、制度的対応を述べます。
(2)【解答例】(380字)
多様性の受け入れが難しい背景には、形式的な平等と現実の差別とのずれがある。フランスでは、国民はすべて同じフランス人であるという理念が重視される一方、移民にルーツを持つ人々が教育、雇用、警察対応で不利に扱われる現実がある。日本でも、外国にルーツを持つ子どもや労働者が増えているが、日本語能力や生活習慣の違いが自己責任とされ、制度的支援が不足しやすい。多様性を克服すべき困難としてではなく、社会の前提として扱う必要がある。そのためには、差別の実態を把握するデータ、学校での多文化教育、警察や行政の研修、言語支援、雇用差別への対策が必要である。また、少数者に同化だけを求めず、多数派の側も自分たちの普通を見直すべきだ。国籍や肌の色ではなく、具体的な困難に応じた支援を行うことも重要である。多様性の受け入れは理念の宣言ではなく、制度と日常の行動を変えることで実現する。



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