【問題概要】
上智大学 外国語学部 フランス語学科 帰国生入試 2024年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
次の本文を読み、設問に答えなさい。課題文は、欧州の排外主義とナショナリズムを扱い、反移民感情の規定要因が、単なる経済的利害から、文化的保守性、政治的不信、ナショナル・アイデンティティ、欧州統合への不信へと捉え直されてきたことを論じている。
問1:筆者は「人は、必ずしも利己的な動機ではなく、ある程度向社会的な関心から、移民に対する態度を形成していると言えよう」と述べています。これは、研究が進むにつれて、反移民感情の規定要因が捉え直されたことを指摘している文です。下線部①までの本文から、反移民感情の規定要因が捉え直された経緯とその内容の変化を300字以内で説明しなさい。
問2:下線部②にあるとおり、人の移動の問題が「欧州統合に参与していることによる直接の影響を受けている」と言える欧州連合(EU)の2つのしくみを、本文を踏まえて200字以内で説明しなさい。
問3:日本は、主要なヨーロッパ諸国と比べ、移民や難民の受け入れ数は少ないのが現状です。この現状に関し、まず、その理由を考えて説明しなさい。次に、この現状に対するあなたの考えを、その理由とともに述べなさい。解答全体を1000字以内におさめること。
問1【解説】
問1【解答例】(286字)
当初、反移民感情は、移民が雇用や賃金を奪うという個人の経済的利害から説明されがちだった。しかし研究が進むと、社会経済的地位よりも、文化的保守性、政治的不信、ナショナル・アイデンティティ、治安や社会秩序への不安が強い説明力を持つと捉え直された。つまり、人々は単に自分の損得だけでなく、社会全体のあり方や共同体の維持への関心から移民への態度を形成している。さらに、欧州統合やEU政治への不信も、人の移動を自国で管理できないという感覚を生み、反移民感情と結びつくようになった。利己心だけでなく、社会を守りたい意識が背景にある。移民への態度は価値観や政治観にも左右されるのである。
問2【解説】
問2【解答例】(182字)
第一に、シェンゲン協定により、欧州域内に入った人は高い自由度で他国へ移動できる。第二に、難民・移民への対応や国境管理について、司法内務協力の下でEUに一定の権限が委譲され、加盟国はEUの方針と無関係に判断できない。これらにより、人の移動は各国の国内問題であると同時に、欧州統合の帰結として受け止められ、国内政治の不満とも結びつく。各国民は統制権の喪失を感じやすい。
問3【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で理由、STEP2で社会意識、STEP3で現実、STEP4で制度設計、STEP5で結論を述べます。
問3【解答例:5STEPs段落構成】(908字)
STEP1
日本で移民や難民の受け入れ数が欧州諸国より少ない理由は、地理的条件、制度、社会意識の三つにある。日本は島国で、欧州のように陸続きで多数の人が移動する環境ではない。また、難民認定や在留資格の制度も厳格で、労働者を受け入れても「移民」と呼ばない政策姿勢が続いてきた。そのため、長期定住を前提にした議論が遅れた。
STEP2
社会意識の面では、日本語中心の学校、職場、行政が前提となっており、言語や文化の違いを持つ人を生活者として受け入れる準備が十分ではない。外国人が増えると地域のまとまりが弱まるのではないか、治安や福祉に影響するのではないかという不安も根強い。こうした不安は差別と同じではないが、制度が不足すると排除感情に変わりやすい。
STEP3
一方で、日本社会はすでに外国人労働者に支えられている。介護、建設、農業、製造、外食などでは人手不足が深刻であり、少子高齢化を考えれば、外国人の受け入れを避け続けることは現実的でない。必要な時だけ労働力として受け入れ、生活者としての権利を軽視するなら、社会的分断を生む。
STEP4
私は、日本は受け入れ数を増やすかどうかだけでなく、受け入れる場合の制度設計を急ぐべきだと考える。日本語教育、子どもの学校支援、医療通訳、労働相談、住居差別への対応を整えなければ、地域の不安も移民側の孤立も強まる。反対に、制度が整えば摩擦は小さくできる。
STEP5
結論として、日本の受け入れ数が少ない現状には理由があるが、それを固定すべきではない。欧州の経験から学ぶべきことは、移民問題を放置したり、語ること自体を避けたりすると不信が強まるという点である。日本は、排除でも無計画な受け入れでもなく、共生の制度を作りながら段階的に受け入れる道を選ぶべきである。受け入れの是非を抽象的に争うだけでなく、どの地域で、どの仕事に、どの支援を付けて受け入れるのかを具体化する必要がある。外国人を一時的な労働力としてだけ扱わず、地域社会の一員として支えることが、将来の摩擦を小さくする。人数だけでなく、受け入れ後の教育と権利保障まで含めて政策を評価すべきである。地方自治体、学校、企業が役割を分担し、困った時に相談できる窓口を常設することも欠かせない。



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