【問題概要】
上智大学 外国語学部 ポルトガル語学科 カトリック高等学校対象特別入試 2024年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
次の文章を読んで1から5の問いに答えなさい。課題文は、スウェーデンの多文化共生、ソマリア系移民との関係、欧州における反移民政策、英国のEU離脱後の労働力不足と不法移民問題を扱い、グローバル化社会では人の移動が不可欠である一方、反発も強いことを論じている。
1:「多文化共生」を維持しようとする「開かれたスウェーデン」というのはどのようなものか本文に即して説明しなさい。(200字程度)
2:本文において、移民問題が議論されにくくなっている理由にはどういったことが挙げられているか簡潔に説明しなさい。(100字程度)
3:本文におけるソマリア系移民とスウェーデン当局とのあいだに生じた問題はどういったものか説明しなさい。また、その問題についてあなたの見解を述べなさい。(300字程度)
4:本文では多文化主義の見直しが必要になっており、反移民政策が支持されるケースもあることが述べられています。こうした状況について、あなたの見解を述べなさい。(字数制限なし)
5:ポルトガル語圏で移民や多文化がしばしば話題となる国はどこか答えなさい。また、その国の移民や多文化という事柄に関して、あなたの知っていることを述べなさい。(字数制限なし)
1【解説】
1【解答例】(191字)
「開かれたスウェーデン」とは、移民や難民を社会の構成員として受け入れ、福祉や教育を通じて共生を図ろうとする社会である。出身や宗教の違いを理由に排除せず、多文化主義を維持しようとする。一方で、治安や統合の問題が起きた時にも、移民全体を敵視せず、社会問題として向き合おうとする姿勢を含む。つまり、同化だけを求めるのではなく、違いを認めながら共通の制度の中で暮らす社会を目指すものである。
2【解説】
2【解答例】(110字)
移民問題を語ると差別主義者と見なされる恐れがあり、治安や統合の問題を率直に議論しにくいからである。その結果、不満が表に出にくく、移民への不安が反移民政党に吸収されやすくなる。社会全体で冷静な検討ができない点が問題である。
3【解説】
3【解答例】(294字)
ソマリア系移民と当局の間では、子どもの保護や家庭への介入をめぐる不信が生じた。移民側は文化や宗教を理解されず、子どもを奪われると感じ、当局側は子どもの権利や安全を守る必要を重視した。私は、子どもの安全は最優先だが、行政が一方的に介入すれば不信を深めると考える。通訳、宗教指導者、地域団体を交え、制度の目的を説明しながら支援するべきである。また、親の文化を尊重しつつ、暴力や虐待を許さない共通ルールを明確にする必要がある。多文化共生には、違いを放置するのではなく、共通のルールを対話で理解させる仕組みが必要である。行政への信頼を作るには、罰する前に相談できる窓口を用意することも欠かせない。
4【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で立場、STEP2で反移民政策の限界、STEP3で制度、STEP4で政治の説明責任、STEP5で結論を述べます。
4【解答例:5STEPs段落構成】(636字)
STEP1
私は、多文化主義の見直しは必要だが、それが反移民政策の正当化だけに向かうべきではないと考える。移民が増えれば、言語、教育、雇用、治安、宗教、福祉の面で摩擦が起きることはある。そうした問題を語れない社会では、不満が地下にたまり、反移民政党の支持を強める。
STEP2
しかし、摩擦があるからといって移民を一括して排除する政策は現実的でも公正でもない。本文が示す英国の例では、合法的な出稼ぎ労働者が減った結果、農場や福祉施設で人手不足が深刻化した。労働需要がある限り、人の移動を完全に止めることは難しい。
STEP3
必要なのは、開かれた受け入れと社会統合の制度を両立させることである。受け入れる側は、言語教育、職業訓練、住居、学校支援を整える必要がある。移民側にも、法制度、男女平等、子どもの権利、公共ルールを学び守る責任がある。どちらか一方だけに適応を求めると、共生は成り立たない。
STEP4
また、政治は移民問題を感情的な対立にせず、データに基づいて説明すべきである。治安や福祉の問題があるなら隠さず検証し、移民が経済や地域を支えている事実も示す。そうして初めて、差別を避けながら現実的な議論ができる。
STEP5
結論として、多文化主義の見直しとは、移民を拒むことではなく、共生を理念から制度へ移すことである。反移民感情を無視せず、その背景にある不安を政策で小さくし、同時に人権と尊厳を守ることが重要である。移民を受け入れる社会には、受け入れる側の負担を軽くする支援と、移民が社会のルールを理解する支援の両方が必要である。
5【解説】
5【解答例】(214字)
ポルトガル語圏で移民や多文化が話題となる国として、ブラジルが挙げられる。ブラジルは先住民、ポルトガル系、アフリカ系、日系、欧州系など多様なルーツを持つ社会である。日本との関係では、20世紀初頭から日本人移民が渡り、現在も大きな日系社会が存在する。一方、1990年代以降は日系ブラジル人が日本へ働きに来る流れも生まれた。ブラジルの多文化性は豊かさであるが、人種や階層による格差も残っており、単に混血社会と呼ぶだけでは不十分である。



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