【問題概要】
上智大学 経済学部 経済学科 帰国生入試 2023年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
次の文章を読み、その後に掲げられている設問にそれぞれ答えなさい。使用言語は日本語とする。
課題文は、政府主導の大学改革や教育改革について、現場の実態から出発する「演繹型の政策思考」ではなく、理念や将来像を掲げる「未来志向の政策提言」が先行し、政策が迷走してきたことを論じている。
問1 政府(文部科学省)主導の大学改革はなぜ迷走を続けてきたのか。著者の言う「演繹型の政策思考」と「未来志向の政策提言」の意味するところに留意しながら、わかりやすく説明しなさい(800字程度)。
問2 大学改革や教育改革に限らず他の行政分野においても、理念先行で地に足のついていない政策提言がなされることがある。著者が指摘していることを踏まえつつ、自らの考えを述べなさい(400字程度)。
問1【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で原因、STEP2で抽象語の問題、STEP3で未来志向の限界、STEP4で大学の多様性、STEP5で結論を述べます。
問1【解答例:5STEPs段落構成】(785字)
STEP1
政府主導の大学改革が迷走してきた理由は、大学や学生、研究現場の実態を丁寧に分析する前に、望ましい未来像や流行語を掲げ、それに合わせて制度を動かそうとした点にある。課題文のいう「演繹型の政策思考」とは、具体的な問題の積み上げから政策を考えるのではなく、あらかじめ決められた理念やモデルから現場を説明し、改革を導く思考である。
STEP2
たとえば、国際競争力、イノベーション、実学重視、選択と集中といった言葉は、それ自体が不要なわけではない。しかし、それらが大学の多様な役割や地域性、基礎研究の長期性を無視して一律の目標になると、現場は数値目標への対応に追われる。教育の質を高めるはずの改革が、書類作成や評価指標への適応を増やし、かえって教育研究の時間を奪うこともある。
STEP3
また、「未来志向の政策提言」は、将来社会に必要な人材や大学像を語る点では魅力的である。だが、未来を語るだけで、現在の制度、財源、人員、学生の実態を検討しなければ、政策は実行可能性を欠く。大学改革では、グローバル人材や社会実装などの目標が繰り返されても、それを支える教員配置、授業設計、研究環境が十分に整わない場合がある。
STEP4
著者が批判しているのは、改革そのものではなく、改革が現実から離れて自己目的化することである。大学は職業訓練機関だけでなく、基礎研究、市民教育、地域文化の維持など多くの機能を持つ。にもかかわらず、政府が一つの理想像を押しつけると、大学の多様性が失われる。
STEP5
したがって、大学改革に必要なのは、抽象的な未来像から出発するのではなく、現場で何が起きているのかを検証し、目的と手段を対応させることである。学生の学び、教員の研究時間、地域社会との関係、財政の制約を踏まえ、小さく試し、結果を見て修正する政策が求められる。迷走の原因は、理念が多すぎたことではなく、理念を現実に接続する手続きが弱かったことにある。
問2【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で行政一般への展開、STEP2で理念の役割と限界、STEP3で当事者参加、STEP4で結論を述べます。
問2【解答例:5STEPs段落構成】(387字)
STEP1
理念先行の政策提言は、教育以外の行政分野でも起こる。たとえば少子化対策で「子育てしやすい社会」を掲げても、保育士の待遇、住宅費、長時間労働、地域の医療体制を同時に改善しなければ、実際の出生や子育ての困難は変わらない。
STEP2
理念には、人々を動かし政策の方向を示す役割がある。問題は、理念が現場の調査や実行条件の検討を省略する口実になることである。行政は、都合のよい成功例だけを引用するのではなく、失敗例や地域差も含めてデータを示すべきである。
STEP3
また、政策の影響を受ける当事者を議論に参加させることも重要である。医療、福祉、雇用、教育では、制度を使う人と現場で働く人の経験がなければ、机上の改革になりやすい。
STEP4
結論として、よい政策には理念と現実の往復が必要である。まず現場の問題を把握し、次に目標を定め、試行と検証を経て修正する。その過程を公開することで、地に足のついた政策提言に近づく。



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