【問題概要】
上智大学 総合人間科学部 看護学科 帰国生入試 2023年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
課題文は、著者が人生で体験した大きな「境」として、見えなくなること、聞こえにくくなること、さらに全盲ろう者としての状態を説明する難しさを述べる。ピアノの鍵盤を叩いた時、同じ鍵盤なのに音が変化して聞こえ、頼りにしていた音の世界が失われた体験が語られる。また、宇宙飛行士が盲ろう疑似体験を行い、船外活動中に通信が途切れて孤独になる感覚と似ていると述べた場面が紹介される。
【問】1. 本文冒頭の「私がこれまでの人生で体験したもっとも大きな『境』は、二つある。」に使われている「境」を別の言葉で言い換えて、原稿用紙の1行目に書いてください。
2. ピアノの鍵盤を叩いた時の体験から作者がこの文章で説明していることについて、あなたの思いや考えも含めて600字程度で述べなさい。原稿用紙の3行目から書き出してください。
1【解説】
1【解答例】(11字)
人生を分ける大きな転機
2【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で筆者の体験の意味、STEP2で感覚と世界の関係、STEP3で自分の考え、STEP4で支援の姿勢、STEP5で結論を述べます。
2【解答例:5STEPs段落構成】(657字)
STEP1
筆者がピアノの鍵盤を叩いた時の体験から説明しているのは、障害とは単に一つの感覚が失われることではなく、世界とのつながり方そのものが変わる経験だということである。同じ鍵盤を叩いているのに音が変化して聞こえた場面は、頼りにしていた聴覚の世界が崩れていく恐ろしさを示している。
STEP2
人は視覚や聴覚を個別の機能として考えがちである。しかし、実際にはそれらを通して空間、人、時間、自分の位置を感じている。筆者にとって、失明後に残された音の世界は外界とつながる手がかりだった。その音まで不確かになることは、単に不便が増える以上の意味を持つ。
STEP3
私はこの文章から、障害を外から簡単に理解したつもりになってはいけないと感じた。ヘレン・ケラーのようだと言っても伝わらず、宇宙飛行士の船外活動にたとえて初めて少し共有される点に、経験を言葉にする難しさが表れている。他者の苦しみは、説明されても完全には同じように感じられない。
STEP4
それでも、理解を諦めるべきではない。宇宙飛行士の疑似体験のように、想像し、試し、本人の言葉を聞くことで、孤独や不安に近づくことはできる。看護や福祉では、病名や障害名だけで判断せず、その人がどのように世界を受け取っているのかを尋ねる姿勢が重要である。
STEP5
結論として、ピアノの体験は、感覚の喪失が生活全体の意味を変えることを伝えている。支援とは不足した機能を補うだけでなく、その人が再び他者や社会とつながる方法を一緒に探すことだと考える。相手の世界を完全に代わることはできないからこそ、丁寧に聞き、想像し続ける姿勢が必要である。



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