【問題概要】
上智大学 外国語学部 フランス語学科 外国人入試 2023年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
次の文章を読み、以下の設問に答えなさい。
課題文は、フランスで出版されたミシェル・ウェルベックの小説『服従』、移民・難民、イスラム教徒、ヨーロッパ社会の「メインストリームの側」と移民側の関係について論じている。「労働者を呼んだが、やって来たのは人間だった」という引用を通じ、移民を労働力としてだけ扱うことの問題も示されている。
問1 下線部①に関し、この文章の筆者はなぜこの本に言及しているか、説明しなさい。(150字程度)
問2 下線部②「労働者を呼んだが、やって来たのは人間だった」に関し、この引用が意味することを自分の言葉で説明し、また、この引用はどのような問題の核心を突いているのか、説明しなさい。(200字程度)
問3 空欄③にあてはまる内容を、前後の文脈を踏まえた上で考え、書きなさい。(150字程度)
問4 下線部④に関し、そもそも移民や難民が発生する国際情勢上の原因は何か、及び、「メインストリームの側」と移民側の共生のために必要なことは何か、を自分なりに考え、出来るだけ具体的に述べなさい。(700字程度)
問1〜問3【解説】
短答は課題文の中心語を使い、移民を労働力だけでなく生活者として捉える視点を示します。
問1【解答例】(147字)
筆者は『服従』に言及することで、フランス社会がイスラム教徒や移民をめぐる問題を、単なる治安や宗教対立ではなく、文明論的な不安として受け止めていることを示している。小説が話題を呼んだ事実は、その不安が一部の過激な意見ではなく、政治、文学、日常の感覚にまで広がる社会的問題であることを示す例である。
問2【解答例】(183字)
この引用は、受け入れ国が移民を不足する労働力として招いたつもりでも、実際に来るのは家族、宗教、文化、尊厳を持つ一人の人間だという意味である。工場や農業の人手だけを期待しても、人は地域に住み、子どもを育て、信仰や言語を保って生きる。問題の核心は、移民を経済の調整弁としてだけ扱い、生活者・市民としての権利や帰属意識を軽視すると、差別、孤立、社会的対立が生じる点にある。
問3【解答例】(135字)
移民は単なる労働力ではなく、受け入れ社会の中で生活し、家族を持ち、教育や信仰や文化を営む存在である、という視点である。したがって、受け入れ側は雇用だけでなく、住居、学校、地域参加まで含めて考え、対等な生活者として迎える必要がある。人権と尊厳に関わる重要な社会問題である。
問4【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で発生原因、STEP2で引用の意味、STEP3で権利保障、STEP4で多数派側の変化、STEP5で結論を述べます。
問4【解答例:5STEPs段落構成】(649字)
STEP1
移民や難民が発生する原因は一つではない。戦争、内戦、政治的迫害、民族・宗教対立、貧困、気候変動、旧植民地支配の影響、国際的な経済格差が重なって、人々は住み慣れた土地を離れざるを得なくなる。近年のシリア内戦やアフガニスタン情勢、アフリカの紛争、地中海を渡る人々の移動は、その具体例である。
STEP2
一方、受け入れ側は労働力不足を補うために移民を必要としながら、文化や宗教の違いが見えると不安を抱くことがある。ここに「労働者を呼んだが、やって来たのは人間だった」という言葉の意味がある。移民は経済機能だけでなく、生活、家族、信仰、記憶を持つ存在である。
STEP3
共生に必要なのは、第一に権利の保障である。教育、医療、住居、労働条件、在留資格が不安定なままでは、移民は社会の周縁に追いやられる。第二に、言語教育と就労支援が必要である。言葉を学ぶ機会と公正な雇用があれば、移民は社会に参加しやすくなる。
STEP4
第三に、メインストリームの側も変わる必要がある。多数派が自分たちの文化だけを標準と見なし、相手に同化だけを求めれば、対立は深まる。学校や地域で互いの歴史や宗教を学び、差別的言説を放置しないことが重要である。
STEP5
結論として、移民・難民問題は、送り出す地域の危機と受け入れ社会の制度の両方から考える必要がある。国際社会は紛争予防や経済格差の是正に取り組み、受け入れ国は移民を一時的な労働力ではなく生活者として扱うべきである。共生とは、移民だけが努力して多数派に合わせることではなく、双方が制度と意識を変え、同じ社会を作ることである。



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