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上智大学 文学部 フランス文学科 公募制推薦入試 2022年度 小論文 過去問解説

【問題概要】

上智大学 文学部 フランス文学科 公募制推薦入試 2022年度の小論文過去問です。

【設問文全文】

次の二つの問いに、それぞれ600字程度で答えなさい。ただし2の解答には、新しい解答用紙を使用すること。

1. 次の文章は『狭き門』の一節です。これについて、作品に具体的に言及しながら、自由に論じなさい。

牧師は最初全巻を読んだ。「力を尽して狭き門より入れ。滅びにいたる門は大きく、その路は広く、之より入る者おおし。生命にいたる門は狭く、その路は細く、之を見いだす者すくなし」(山内義雄訳、新潮文庫)

2. 次の文章は、『狭き門』について、評論者が自分の考えを述べたものです。これについて、『狭き門』に具体的に言及しながら、自分の考えを述べなさい。なおジェロームがジェロムと表記されていますが、同じ作中人物です。

主人公アリサは恋人ジェロムに押しつけられたあまりに美化されたイメージに殉じて、あたかも自分が一人の聖女のように振舞わなくてはならなかったのであり、この苦しい背伸びがやがて彼女をジェロムから引き離して、孤独のうちに死なせたのであります。

1【解説】

5STEPs法での書き方

STEP1で象徴の意味、STEP2でアリサの葛藤、STEP3で理念の危うさ、STEP4で作品評価、STEP5で結論を述べます。

1【解答例:5STEPs段落構成】(616字)

STEP1

 『狭き門』における「狭き門」は、単に宗教的な救いの道を指すだけでなく、アリサとジェロームの恋愛のあり方を方向づける象徴である。広い道が安易な幸福や世俗的な結婚を意味するなら、狭い道は自己を厳しく律し、欲望を抑え、より高い精神的完成を目指す道である。

STEP2

 アリサはジェロームを愛しているが、その愛をそのまま結婚という形で実現することにためらいを持つ。彼女にとって愛は、相手を所有することではなく、神に向かって自分を高める試練でもある。そのため、ジェロームとの幸福を求める気持ちと、聖なるものへ向かおうとする気持ちが衝突する。

STEP3

 しかし、この「狭き門」は美しい理念であると同時に、危うい理念でもある。アリサが自分の弱さや欲望を認めず、純粋さを求めすぎることで、彼女自身もジェロームも苦しむ。狭い道を選ぶことが、他者との現実の関係を拒むことになれば、それは信仰ではなく孤立に近づく。

STEP4

 作品の魅力は、アリサの選択を単純に正しいとも誤りとも言えないところにある。彼女は世俗的な幸福を軽く見ているのではなく、愛をより高いものにしようとしている。しかし、その高さへの憧れが、人間としての自然な愛情を傷つける。

STEP5

 結論として、「狭き門」は、人が理想を追う時の尊さと危険を同時に示す言葉である。安易な幸福に流されない姿勢は尊いが、理想が生きた人間関係を犠牲にするなら、その道は救いではなく苦しみになる。『狭き門』は、愛と信仰、純粋さと人間性の緊張を描いた作品である。

2【解説】

5STEPs法での書き方

STEP1で引用への立場、STEP2でジェロームの理想化、STEP3でアリサ自身の志向、STEP4で理想化の危険、STEP5で結論を述べます。

2【解答例:5STEPs段落構成】(659字)

STEP1

 引用文は、アリサがジェロームに美化された像を押しつけられ、その像に応えようとして聖女のように振る舞い、孤独に追い込まれたと述べている。私はこの見方に賛成である。ジェロームの愛は深いが、彼はアリサを一人の揺れる人間としてではなく、崇高で清らかな存在として見がちだからである。

STEP2

 ジェロームにとってアリサは、恋人であると同時に精神的理想の象徴でもある。その視線はアリサを高める一方で、彼女に弱さや欲望を表す余地を与えない。アリサはジェロームの期待を内面化し、自分もまた聖なる愛を目指さなければならないと思い込む。

STEP3

 ただし、アリサを完全な被害者としてだけ見ることはできない。彼女自身にも、世俗的な幸福より精神的完成を重んじる志向がある。ジェロームの美化が彼女を縛ったとしても、その束縛はアリサ自身の信仰や理想主義とも結びついていた。悲劇は、一方的な押しつけだけでなく、二人が同じ理想を別々の形で追いすぎたことから生じた。

STEP4

 この作品が示すのは、愛する相手を理想化する危険である。相手を高く見ることは美しいように思えるが、相手が苦しみ、迷い、矛盾する存在であることを認めなければ、愛は相手を孤独にする。ジェロームの愛は、アリサを理解するより崇拝する方向に傾いた。

STEP5

 結論として、引用文の指摘は、アリサの悲劇の重要な一面を捉えている。彼女はジェロームの理想像に応えようとし、自分の人間的な感情を抑えた。しかし同時に、その悲劇はアリサ自身の純粋さへの執着にも支えられていた。『狭き門』は、理想化された愛が、相手を孤独に追い込むことを描いている。

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