【問題概要】
上智大学 総合人間科学部 社会福祉学科 編入学試験 2022年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
以下の図は、各国の女性の就業率と男女の1日当たりの平均無償労働時間の関係を表したものである。無償労働とは、家事、育児、介護など金銭的対価をともなわない労働をさす。(1)と(2)の設問に答えなさい(字数制限なし)。
(1) 図を参照し、各国の女性の就業率と男女の1日当たりの平均無償労働時間には、どのような関係が見られるか、また他国に比較した際の日本(JPN)の特徴を説明しなさい。
(2) 「無償労働に対する女性の責務は、雇用主が女性を採用する相対費用も押し上げるため、女性が育児のために退職する可能性を理由に、雇用主が出産年齢の女性を雇用する際に差別待遇をする恐れが生じることになる」という指摘があります。この差別待遇の背後の要因について具体例をあげて説明するとともに、この差別待遇が女性の人生全般にどのような影響を与えるか、またそれを解消するために必要な方策について、あなたの考えを論じなさい。
(1)【解説】
図表説明では、一般傾向と日本の特徴を分けて述べます。
(1)【解答例】(232字)
図からは、女性の就業率が高い国ほど、男女の無償労働時間の差が比較的小さい傾向が読み取れる。家事、育児、介護が女性だけに偏る社会では、女性が長時間働き続けにくく、就業率も上がりにくい。一方、男性も無償労働を担い、保育制度や働き方が整っている国では、女性の就業継続が可能になる。日本は女性の就業率が一定程度高いにもかかわらず、男女の無償労働時間の差が大きい点に特徴がある。つまり、日本では女性が有償労働にも参加しながら、家庭内の無償労働も多く担う二重負担が残っている。
(2)【解説】
5STEPs法での書き方
STEP1で差別の原因、STEP2で人生への影響、STEP3で具体例、STEP4で方策、STEP5で結論を述べます。
(2)【解答例:5STEPs段落構成】(649字)
STEP1
差別待遇の背後には、女性が出産や育児で退職・休業するという雇用主側の予測がある。たとえば採用や昇進の場面で、同じ能力があっても「将来育児で抜けるかもしれない」と見なされると、女性は責任ある仕事を任されにくくなる。これは本人の能力ではなく、無償労働を女性が担うという社会的前提による差別である。
STEP2
この差別は、女性の人生全般に大きな影響を与える。若い時期に採用や昇進で不利になれば、賃金、職業経験、管理職への道が制限される。出産後に非正規雇用へ移ると、収入だけでなく年金や社会保障にも影響が残る。結果として、老後の貧困リスクや離婚・死別後の生活不安も高まる。
STEP3
具体例として、育児休業制度があっても職場で男性が取得しにくい場合、実際には母親が休むものとされる。保育所の不足や長時間労働も、女性に退職を迫る要因になる。企業はその状況を前提に女性を不利に扱い、さらに女性が家庭責任を担う構造が固定される。
STEP4
解消には、第一に男性の育児休業取得を実質化し、長時間労働を改めることが必要である。第二に、保育、介護、病児保育などの公的支援を充実させるべきである。第三に、採用・昇進で出産可能性を理由に不利益を与えない監視と罰則を強める必要がある。
STEP5
結論として、この問題は女性個人の努力不足ではなく、無償労働の偏りが労働市場の差別に結びつく社会構造の問題である。女性が働き続けるためには、家庭内の役割分担、企業の評価制度、公的サービスを同時に変えなければならない。無償労働を社会全体で支えることが、女性の人生の選択肢を広げる。



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