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上智大学 文学部 フランス文学科 公募制推薦入試 2021年度 小論文 過去問解説

【問題概要】

上智大学 文学部 フランス文学科 公募制推薦入試 2021年度の小論文過去問です。

【設問文全文】

次の二つの問いに、それぞれ600字程度で答えなさい。ただし2の答えには新しい解答用紙を使用すること。

1. 次の文章は、『狭き門』の「アリサの日記」の結末の一部分です。これについて、作品に具体的に言及しながら、自由に論じなさい。

2. 次の文章は、『狭き門』の結末部分です。これについて、作品に具体的に言及しながら、自由に論じなさい。

問1【解説】

設問条件の判定

600字程度の文学論述であり、作品への具体的言及と自由論述が必要なため、5STEPs法を用います。

5STEPs法での書き方

STEP1で場面の意味、STEP2で内面の葛藤、STEP3で作品全体との関係、STEP4で評価、STEP5で結論を述べます。

問1【解答例:5STEPs段落構成】(587字)

STEP1

 『狭き門』の「アリサの日記」の結末は、アリサが自ら選んだ信仰的な純化の道の厳しさと、その内面の揺れを示している。彼女はジェロームへの愛を単純に否定したのではなく、その愛が神への愛を妨げるのではないかと恐れた。そのため、幸福を求める自然な感情と、より高いものへ向かおうとする意志の間で引き裂かれる。

STEP2

 引用部分でアリサが恐れているのは、自分の心の中に神をけがすような言葉が生まれることである。これは、彼女が俗世の幸福を望んでいないというより、望んでしまう自分を罪として感じていることを示す。日記は、外からは清らかに見える自己犠牲の背後に、苦しみ、迷い、孤独が存在することを明らかにする。

STEP3

 作品全体では、ジェロームもアリサも互いを愛しながら、その愛を率直に生きることができない。アリサはジュリエットの幸福やジェロームの将来を考え、自分が退くことを選ぶ。しかし、その選択は他者のためであると同時に、自分自身が理想化した「狭き門」を通ろうとする欲望でもある。

STEP4

 したがって、この日記の結末は、アリサを単なる聖女としてではなく、愛と信仰の間で傷つく一人の人間として読ませる。彼女の純粋さは美しいが、その純粋さは生の豊かさを拒む危うさも持つ。

STEP5

 『狭き門』は、高い理想を求めることの尊さと、その理想が人間的な愛を抑圧するときの悲劇を同時に描いている。日記の結末は、その二面性を最も鋭く示す場面である。

問2【解説】

設問条件の判定

600字程度の文学論述であり、結末部分の解釈を作品全体と結びつける必要があるため、5STEPs法を用います。

5STEPs法での書き方

STEP1で結末の位置づけ、STEP2でジュリエットの言葉、STEP3で人物対比、STEP4で作品の主題、STEP5で結論を述べます。

問2【解答例:5STEPs段落構成】(643字)

STEP1

 『狭き門』の結末部分では、アリサの死後、残されたジェロームとジュリエットの姿を通じて、理想化された愛の行き着く先が示される。アリサは生前、ジェロームとの結婚による幸福を避け、より高い精神的完成を求めた。しかし結末において読者が見るのは、完成された救いというより、取り返しのつかない喪失である。

STEP2

 ジュリエットの「目をさまさなければ」という言葉は重要である。ジェロームは長い間、アリサを現実の一人の女性としてではなく、到達すべき理想の象徴として見てきた。彼の愛は純粋である一方、現実の生活や相手の苦しみを十分に受け止めるものではなかった。ジュリエットの言葉は、その夢のような愛から現実へ戻ることを促している。

STEP3

 作品において、ジュリエットはアリサと対照的な存在である。彼女は結婚し、家庭を持ち、生活の中で幸福を築く。アリサが狭き門を通るために地上的幸福を拒む人物であるなら、ジュリエットは地上の生活を引き受ける人物である。結末でジュリエットがジェロームに向ける言葉は、アリサの選択だけが唯一の正しさではないことを示す。

STEP4

 したがって、結末はアリサの信仰的理想を美化するだけでは終わらない。むしろ、理想を絶対化することで失われる愛や時間を読者に意識させる。ジェロームが目を覚ますとは、理想の中に閉じこもることをやめるという意味でもある。

STEP5

 『狭き門』は、純粋さへの憧れを描きながら、純粋であろうとするほど人間的な幸福から遠ざかる矛盾を示した作品である。結末の静けさには、その矛盾の深い悲しみが刻まれている。

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