【問題概要】
上智大学 外国語学部 ロシア語学科 帰国生入試 2021年度の小論文過去問です。
【設問文全文】
以下の文章を読んで、後の設問に答えてください。解答は別紙の横書き原稿用紙を用いること。
問1 今私たちが用いている日本語は今後改良する余地があると思いますか。あるとすればどのような観点から、具体的にどのような部分について改良する必要があると考えられるでしょうか。逆に、改良する余地がもはやないとすれば、それはどのような観点からそう判断できるでしょうか。別紙の横書き原稿用紙を用いて400字以内で書いてください。
問2 この文章の中で、「優れた言語とそうでない言語を区別しようとする考え方」についての問題が指摘されています。「よりよい日本語とそうでない(より悪い)日本語を区別しようとする考え方」についても同様の問題があるとすれば、それは具体的にどのようなことが考えられるか説明してください。もし、日本語の場合にはこれらの問題は当てはまらないというのであれば、それはなぜでしょうか。別紙の横書き原稿用紙を用いて400字以内で書いてください。
課題文は、日本語の改良をめぐり、「確固たる原則なり、方針なりが打ち立てられていない」こと、また「優れた言語とそうでない言語を区別しようとする考え方」の問題を指摘している。
問1【解説】
設問条件の判定
400字以内で意見を述べる設問なので、PREP法で改良の可否、観点、具体例をまとめます。
PREP法での書き方
結論として改良の余地を認め、公共的な伝達可能性を理由にし、行政・災害・医療情報を具体例にします。
問1【解答例】(360字)
日本語には改良の余地がある。ただし、ここでいう改良は、特定の世代や集団の言葉を劣ったものとして排除することではない。必要なのは、より多くの人が正確に情報を受け取り、参加できるようにする観点である。たとえば行政文書や契約書には、漢語や長い修飾が重なり、内容を理解しにくいものが多い。災害情報や医療情報では、専門語をそのまま使うと、外国にルーツを持つ人、高齢者、子どもに届きにくい。学校や職場でも、曖昧な敬語や婉曲表現は責任の所在を見えにくくする。したがって、平易な表現、ふりがな、多言語化、図表の活用を制度的にさらに進めるべきである。一方で、若者言葉や方言を一律に乱れと見る必要はない。日本語の改良は、言葉の多様性を否定することではなく、公共的な場面で誤解や排除を減らし、相手に届く表現を選ぶ工夫として行われるべきである。
問2【解説】
設問条件の判定
400字以内で説明と見解を求める設問なので、PREP法で基準の曖昧さと差別化の危険を整理します。
PREP法での書き方
言語優劣論との共通点を二点に分け、最後に必要な評価基準のあり方を補います。
問2【解答例】(374字)
「よりよい日本語」を区別する考え方にも、課題文が批判する言語優劣論と同様の問題がある。第一に、何をよいとするかの基準が曖昧になりやすい。古い表現を正しいとし、新しい表現を乱れと決めつけても、それは慣れの違いを価値の上下に置き換えているだけの場合がある。第二に、その基準が社会的な差別と結びつく危険がある。方言、外国人の日本語、障害のある人の表現を劣った日本語と見れば、話し手そのものを低く評価することになる。さらに、標準語だけを正解とすれば、地域や生活経験に根ざした表現も失われ、言葉を使う人々の多様な背景が不可視化される。その結果、表現の違いが能力の差のように扱われかねない。ただし、公共文書や教育の場では、相手に伝わりやすい表現を選ぶ基準は必要である。重要なのは、話し手を序列化するためではなく、相互理解を広げるために言葉を評価することである。



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