鳥取大学 地域学部地域学科地域創造コース 前期日程 2021年度 小論文過去問解説(生活者として歴史に参画する)
問1【解説】
設問文
【問1】生活者とはどのような人びとなのでしょうか。筆者の見解を300字以内で要約しなさい。
課題文・資料の要点
課題文は、生活者を単なる消費者や私生活を送る人ではなく、日常の試行錯誤を通じて社会に関わり、私的価値を公共的価値へつなげる主体として捉える。生活者は、専門家や政治家だけが歴史を動かすという見方を相対化する存在である。
設問条件の判定
- 制限字数: 300字以内
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 筆者の見解を本文に即して要約する問題である。
解答プロセス
設問要件は、生活者の定義、私的価値と公共的価値、歴史への参画を300字以内で説明すること。
問1【解答】
筆者にとって生活者とは、家庭や地域で日々の生活を営むだけの受け身の存在ではない。自分や家族の困りごと、願い、工夫を出発点にしながら、他者と出会い、協力し、社会のあり方を少しずつ変えていく人びとである。生活上の行為は最初は私的な価値に根ざしているが、同じ課題を抱える人との協同行為を通じて公共的価値に結びつく。したがって生活者として歴史に参画するとは、大きな政治運動だけでなく、曲がりくねった日常の試行錯誤を通じて、地域や社会を動かす力を作ることである。
字数カウント: 226字
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問2【解説】
設問文
【問2】課題文を踏まえ、東日本大震災の被災地に限らない地域において、人びとが「生活者として歴史に参画する」行為には、どのようなものがあると考えますか。私的価値と公共的価値という言葉を用いながら、800字以内で具体的に述べなさい。
課題文・資料の要点
問2は、生活者として歴史に参画する行為を、地域の具体例で論じる問題である。私的価値から始まる行為が、他者との協働を通じて公共的価値へ広がる過程を示す必要がある。
設問条件の判定
- 制限字数: 800字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 課題文を踏まえ、指定語を用いて具体的に意見を述べる問題である。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 設問が求める「被災地に限らない地域の具体例」と「私的価値・公共的価値の使用」を800字以内で述べる。
- STEP2 問題設定: 課題文は、生活上の私的な行為が公共的価値へつながる可能性を示す。
- STEP3 論証: 例として、子どもの居場所づくりを取り上げる。最初は自分の子の不安から始まっても、地域全体の課題へ広がる。
- STEP4 解決策: 生活者の参画は、日常の困りごとを共有し、制度や地域活動につなげる行為である。
- STEP5 吟味: 個人の善意だけに頼らず、行政や専門機関と結びつける必要がある。
問2【解答】
生活者として歴史に参画する行為の例として、地域の子どもの居場所づくりがある。最初の動機は、自分の子どもが放課後に安心して過ごせる場所がほしい、孤立してほしくないという私的価値でよい。生活者の行為は、必ずしも大きな理念から始まるわけではなく、日常の不安や願いから始まるからである。
しかし、その不安を他の保護者、学校、地域住民と話し合うと、同じ課題を抱える家庭が多いことに気づく。共働き家庭、ひとり親家庭、経済的に塾へ通いにくい家庭、家で一人で過ごす子どもなど、個人の困りごとに見えた問題が地域共通の課題として見えてくる。
そこで、空き教室や公民館を使った学習支援、食事提供、遊び場、相談の場を作ることは、私的価値を公共的価値へ広げる行為である。自分の子どものための活動が、地域の子ども全体の安全、学び、つながりを支えるからである。さらに、その場に高齢者や学生ボランティアが関われば、世代間交流や孤立予防にもつながる。
このような行為は、政治家だけが行う政治とは異なる。しかし、地域の将来を形づくる点で、歴史に参画する行為である。行政制度を待つだけでなく、生活者が経験を持ち寄り、必要な支援を具体化することで、社会の方向は少しずつ変わる。小さな活動でも、参加者の記録や声が行政計画に反映されれば、制度そのものを変える力を持つ。
ただし、住民の善意だけに頼ると活動は続かない。行政、学校、福祉機関が連携し、場所、資金、安全管理を支える必要がある。生活者として歴史に参画するとは、私的な願いを出発点にしながら、それを他者と共有し、公共的価値へ育てることだと考える。
字数カウント: 684字



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