東京藝術大学 美術学部芸術学科 入学試験 2017年度 小論文過去問解説(本の推薦文)
問【解説】
設問文
課題文を参考にして、あなたがこれまで出合った本を1冊挙げて、その本を他の人にすすめる推薦文を書きなさい。(800字以内)
設問条件の判定
- 制限字数: 800字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 課題文を参考に、これまで出合った本を1冊挙げ、その本を他者にすすめる推薦文を書く設問である。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 課題文の全文は著作権上掲載されていないが、設問は「本を1冊挙げ、推薦文を書く」ことを求める。
- STEP2 本の選定: 芸術学科向けに、作品を見る態度や表現への理解が深まる本を選ぶ。
- STEP3 推薦理由: 内容紹介だけでなく、読者が読む意味を示す。
- STEP4 具体化: どのような人にすすめたいか、読後に何が変わるかを書く。
- STEP5 結論: 本との出合いが、芸術や世界の見方を変える経験だとまとめる。
問【解答】
私がすすめたい一冊は、岡本太郎『今日の芸術』である。この本は、芸術を美術館の中に置かれた特別なものとしてではなく、生き方や社会への姿勢として捉え直させてくれる。芸術に関心がある人だけでなく、自分の表現に自信が持てない人、何を美しいと思えばよいのか迷っている人にも読んでほしい。
本書で印象的なのは、芸術を「うまい」「きれい」といった基準だけで判断しない姿勢である。岡本は、整っていて安心できるものよりも、人の感覚を揺さぶり、既成の価値観を壊すものに芸術の力を見いだす。これは、作品を見るときに「正解」を探してしまう私たちにとって重要な指摘である。芸術は知識で鑑定するだけの対象ではなく、自分の感覚を賭けて向き合うものなのだ。
この本を読むと、作品を前にしたときの戸惑いを恐れなくなる。分からない作品に出合ったとき、すぐに説明を求めたり、評価の高低だけで判断したりするのではなく、なぜ自分は反発するのか、どこに引っかかるのかを考えられるようになる。芸術を見る経験は、作品の意味を受け取るだけでなく、自分の中の常識を問い直す経験でもある。だからこの本は、鑑賞者にも制作者にも効く。
とくにすすめたい相手は、技術や知識を身につけるほど、作品を「正しく理解する」ことに縛られてしまう人である。本書は、鑑賞や制作において、評価を待つ姿勢から、自分の感覚で対象にぶつかる姿勢へ読者を戻してくれる。
東京藝術大学で学ぼうとする人にとって、この本は特に意味があると思う。技術を磨くことはもちろん大切だが、表現には、世界をどう見て、何に抵抗し、何を肯定するのかという姿勢が表れる。『今日の芸術』は、上手に作ることの先にある、切実に表現することの意味を教えてくれる一冊である。読み終えると、美術を「見る」だけでなく、自分の生き方として引き受けたくなる。
字数カウント: 746字



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