群馬大学 共同教育学部教育人間科学系教育心理専攻 学校推薦型選抜 2023年度 小論文過去問解説(教育への公的支出)
問1【解説】
設問文
OECD(経済協力開発機構)各国の、学生・生徒1人当たりの教育機関向けの年間支出と、OECD各国の公的な教育支出(対GDP比)である。①これから日本の教育への公的資金の投資は、OECD各国と比較し、どのような特徴があるか。②また教育への投資について、課題として今後考えていかなければならないことや解決策について、あなたの考えを資料を基に述べなさい。 教育心理 小論文(800字以内)
課題文・資料の要点
資料は、OECD各国の学生・生徒1人当たり教育機関向け支出と、公的教育支出の対GDP比を示す。評価のポイントでは、日本の教育機関向け支出はOECD平均をやや上回る一方、韓国やフランスより低く、私費負担の割合が多いこと、公的支出の対GDP比がOECD各国中で低いことが示されている。
設問条件の判定
- 制限字数: 800字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 資料読解と、教育投資の課題・解決策に関する意見論述を組み合わせる必要がある。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 設問が求める「OECD各国と比較した日本の特徴」と「教育投資の課題・解決策」を、資料に基づき800字以内で述べる。
- STEP2 問題設定: 教育費が家庭に依存すると、所得による教育格差が生じやすい。
- STEP3 論証: 教育は個人の利益だけでなく、社会全体の人材育成や民主主義の基盤でもある。
- STEP4 解決策: 公的教育支出を増やし、奨学金、授業料支援、地域格差是正、ICT環境整備を進める。
- STEP5 吟味: 財源制約があるため、効果検証と優先順位づけが必要である。
問1【解答】
資料から、日本の教育への投資には、総額だけでなく負担のあり方に特徴があると読み取れる。学生・生徒1人当たりの教育機関向け支出はOECD平均をやや上回るが、韓国やフランスなどと比べると高いとはいえない。また、公的教育支出を対GDP比で見ると、日本はOECD各国の中でも低い水準にあり、教育費を家庭の私費負担に頼る割合が大きい。
この特徴は、教育機会の格差につながる点で問題である。家庭の所得が高ければ、塾、教材、進学費用、ICT機器などに投資しやすい。一方、所得が低い家庭では、本人に能力や意欲があっても、進学や学習環境の面で制約を受けやすい。地方では通学費や下宿費も重く、家庭負担の差は進路選択の差として表れやすい。教育が個人や家庭の努力だけで決まるものとされれば、社会全体の人材育成にも損失が生じる。
教育は個人が将来収入を得るためだけのものではない。多様な人と協働し、社会の課題を考え、次世代の民主主義や産業を支える公共的な基盤である。したがって、教育への公的資金投入は、将来への投資として位置づけるべきである。
解決策として、第一に返還不要の奨学金や授業料減免を拡充し、所得による進学格差を小さくする必要がある。第二に、地域や学校によるICT環境、教員配置、特別支援教育の差を縮めるため、国が安定的に財源を投入するべきである。第三に、就学前教育から高等教育までを連続した支援として設計し、早い段階で学習の遅れや孤立を防ぐ必要がある。さらに、支出を増やすだけでなく、どの支援が学習機会の改善につながったかを検証することも重要である。
教育への公的投資を増やすことは、家庭の負担を軽くするだけでなく、誰一人取り残さない学びを実現する基盤になる。
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