大阪公立大学 獣医学部 学校推薦型選抜個別学力検査 2026年度 小論文過去問解説(動物飼育条例と災害時ペット避難)
設問文
課題1 下記の「動物の飼育と地域社会―自治体の条例が果たす役割を考える」に関する課題文について解答しなさい。 近年、犬や猫などのペットの多頭飼育や飼育放棄、鳴き声・臭気などによる近隣トラブルが社会問題となっている。大阪府や他の自治体では、動物の適正な飼育と地域の共生を目的とした条例が定められているが、その内容や重点は地域によって異なる。 あなたは、獣医学を学ぶ立場から次の問いについて自分の考えをまとめなさい。ただし、800字以内とする。 ・動物の飼育に関する条例は、どのような目的で存在すると考えますか? ・飼い主、地域住民、行政、獣医師など、それぞれの立場で果たすべき役割について、あなたの考えを述べなさい。 ・あなたがもし条例を作る立場なら、どのような点を重視して制度を設計しますか? 課題2 下記の新聞記事を読み、問題点を整理したうえで、今後、どのような対策が必要か、あなたの考えを述べなさい。ただし、500字以内とする。
課題資料の要点
課題1は、ペットの多頭飼育、飼育放棄、鳴き声や臭気による近隣トラブルを背景に、自治体の条例が果たす役割を問うている。課題2は、東日本大震災後にペットとの同行避難が基本方針とされた一方、能登半島地震ではケージに慣れていない、避難所で過ごせない、車中泊が続く、ペットが徘徊するなどの課題が残ったことを踏まえ、避難所のゾーニングや飼い主の事前準備を含む対策を考えさせる内容である。
課題1【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 800字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 条例の目的、関係者の役割、制度設計の重視点という複数要件について、獣医学を学ぶ立場から自分の考えを800字以内で論じるため。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 課題文の「多頭飼育・飼育放棄・近隣トラブル」を整理し、条例の目的を示す。
- STEP2 問題設定: 動物福祉と地域生活の両立という問題を立てる。
- STEP3 論証: 飼い主、地域住民、行政、獣医師の役割を示す。
- STEP4 解決策: 自分が条例を作る立場なら重視する制度設計を示す。
- STEP5 吟味: 罰則だけに偏らない実効性を確認する。
課題1【解答】
動物の飼育に関する条例の目的は、動物を守ることと、地域で暮らす人々の生活を守ることを両立させる点にある。多頭飼育、飼育放棄、鳴き声や臭気の問題は、飼い主個人の問題に見えても、動物の健康、周辺住民の生活環境、行政の福祉対応に広がる。
この問題の中心は、動物を家族として扱う意識が広がる一方で、飼育能力や責任の限界が見えにくいことである。善意で飼い始めても、繁殖管理、医療費、しつけ、清掃が追いつかなければ、動物虐待や近隣被害につながる。したがって条例は、飼育の自由を否定するためではなく、責任ある飼育の基準を共有するために必要である。
飼い主は、頭数管理、避妊去勢、ワクチン、終生飼養、騒音や臭気への配慮を行うべきである。地域住民は、苦情を感情的な対立にせず、異変を早期に行政や専門家へ伝える役割を持つ。行政は相談窓口、立入調査、指導、保護、福祉部門との連携を整える必要がある。獣医師は、動物の健康診断だけでなく、飼育環境の助言、多頭飼育のリスク評価、飼い主への教育を担える。
私が条例を設計するなら、第一に予防を重視する。一定頭数以上の飼育を届け出制にし、繁殖管理と飼育環境の確認を求める。第二に、早期相談を促す仕組みを置く。経済的困窮や高齢化で飼育が難しくなった人を責めるだけでは、問題が隠れるからである。第三に、獣医師会、保健所、福祉機関、動物保護団体が情報を共有できる体制を作る。
もちろん条例には、悪質な放置や虐待への指導・命令・罰則も必要である。しかし罰則だけでは、飼い主が孤立し、動物の状態がさらに悪化する恐れがある。獣医学を学ぶ立場からは、動物の健康を入口にして人と地域の問題も見つけ、教育、支援、規制を組み合わせる条例が望ましいと考える。
字数カウント: 723字
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課題2【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 500字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 問題点の整理と今後必要な対策を、500字以内で論じる設問であるため。複数の関係者と対策を扱うため、5STEPsを短く圧縮して用いる。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 課題資料にある災害時の同行避難と能登半島地震で残った問題点を整理する。
- STEP2 問題設定: ペット避難が「連れて行く」だけでは完結しない点を問題化する。
- STEP3 論証: ケージ慣れ、避難所運営、動物が苦手な人への配慮を示す。
- STEP4 解決策: 今後必要な対策を示す。
- STEP5 吟味: 平時からの準備が重要だと確認する。
課題2【解答】
新聞記事から整理できる問題点は、災害時のペット避難が方針としては同行避難を基本としていても、実際の避難所では十分に運用できていないことである。能登半島地震では、ケージに慣れていないペット、避難所で同室に過ごせない飼い主、車中泊、迷子や徘徊が課題となった。
この問題は、ペットを避難所へ連れて行けるかどうかだけではない。避難所には動物が苦手な人、アレルギーのある人、乳幼児や高齢者もいる。人の安全と衛生を守りながら、動物のストレスや逃走も防ぐ運営が必要になる。
原因は、平時の準備不足と役割分担のあいまいさにある。飼い主がケージ、しつけ、餌、薬、ワクチン記録を準備していなければ、避難後に混乱する。自治体がペット用スペースや受付手順を決めていなければ、現場判断に依存する。
今後は、避難所内で人とペットの居場所を分けるゾーニング、同行避難訓練、ケージ慣れの啓発、所有者情報の管理、獣医師会や動物保護団体との協定を進めるべきである。
最終的には、災害時だけ特別な対応を考えるのでは遅い。平時から飼い主、行政、避難所、獣医師が準備を共有してこそ、人も動物も安全に避難できる。
字数カウント: 480字



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