- 議論の整理
超高齢化社会を迎えたわが国にあっては、高齢者に配慮したデザインを生活の場に取り入れることの必要性が高まっている。加齢に伴う身体機能の低下を補助する方法には2種類の考え方が存在し、一つは老眼鏡や補聴器のような福祉用具によって衰えた機能を補おうという考えである。もう一つは、身体機能はそのままにモノのデザインを変えることによって問題を解決するという考え方であり、アクセシブルデザインという手法によって取り入れられている。
- 問題発見
アクセシブルデザインは「何らかの機能に制限を持つ人々のニーズに合わせたデザインの拡張によって潜在顧客数を最大化する」ことを目的としており、ISO/IECガイド71という指針によって規格化されている。この規格に沿った設計を実現させるのがAIST高齢者・障害者感覚特性データベースという実測データの集積であるが、視覚に関するデータと比べて聴覚に関するデータがまだまだ充実していないという問題点がある。それでは、聴覚に関するどのようなデータをさらに拡張すればよいのだろうか。
- 論証
聴覚に関するデータベースの具体例としては、騒音下で聞き取りやすい音圧レベルや音量といった聴覚閾値に関するものが多い。しかしながら、聞こえてきた音を言語として認識する為には単純な音量だけが問題となるのではなく、韻律のような音のリズムを考慮に入れなければならない。従って、流れてくるアナウンスの発話スタイルと正聴率との相関を検討したいと考えている。
- 結論
本研究は、聴覚機能が低下した人々に対するアクセシブルデザインのさらなる質向上に貢献できると期待している。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、これまで人間工学分野において主に音響をテーマに聴覚機能の補助を目指す数多くの研究を行ってきた倉片教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
伊藤納奈、佐川賢、倉片憲治 (2018) 「AIST高齢者・障害者感覚特性データベース−アクセシブルデザイン国際規格のための人間特性データ−」『人間工学』 54(2), 49-55
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