- 議論の整理
都市部における大気汚染問題は2015年に国連で採択されたSDGsのターゲットの一つにもなっており、人類が力を入れて解決すべき問題である。よく知られている汚染物質であるオゾンのような光化学オキシダントや二次有機エアロゾル(SOA)は、対流圏大気中での紫外線照射による光化学反応に伴い生成することが解明されており、このような反応が大気汚染に大きな影響を与えると考えられている。大気環境科学はガスクロマトグラフなどの分析装置を用いて、大気中で様々な反応を経る微量物質の挙動を追うことで大気汚染問題に貢献してきた。
- 問題発見
しかしながら、揮発性有機化合物や窒素酸化のような前駆物質から、光化学反応によって汚染物質が実際にどの程度生成するかを予測することは困難である。これを踏まえて、松本教授らはこの反応に関与する成分の有機硝酸類(ONs)に注目し、ONsの生成挙動を追うことで光化学オキシダントやSOAの生成効率を評価することを試みた。その結果、ONs生成分岐によるオゾン生成抑制が大気質に影響を与える場合があることを報告している。そこで、ONs生成分岐比に関する実測データを増やすことで、より正確な大気質評価の指標を確立できないだろうか。
- 論証
先行研究においては、高オゾン濃度が観測された都市郊外の大気試料として夏季の所沢市の大気を分析していたが、今回の研究においては夏季以外の大気についても分析を試みたいと考えている。測定にあたっては長期にわたって観測を行う必要がある為、TD/CAPS法を用いて行いたい。
- 結論
前駆物質を削減しても予想以上の効果を得られない場合に、ONs分岐生成比が影響している可能性が考えられる。この研究から得られた知見は、より効果的な大気汚染対策を立案する上での一助となることが期待できる。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、大気環境科学領域に精通し、大気試料の分析手法についても豊富な知識を有する松本教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
松本淳(2018)「夏季の埼玉県所沢市における都市郊外大気の有機硝酸全量観測」『大気環境学会誌』 53, 1-12
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